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いままでの記事 2006/03/22  
 
第9回 幸せになる余地があるみたい。
糸井 お母さんは、いま、お元気なんですか。
岡田 両親とも死んじゃいました。
糸井 ‥‥ということは、
岡田さんが愛された分は、
愛し返さないままで、完結しないんですね。
岡田 うーーー、ちょっと待ってください。
「親の影響がじつはすごく大きい」
「ぼくは、それに関しては、わりと無自覚である」
ということを今日気づいたんですけれども、
ということは、
ぼくにはまだ
かなり幸せになる余地があるんですね?
糸井 きっと、そうでしょう。
「これってなあに?」と、
見ることができる闇があるんですから。
岡田 お。なんかすごい得だな(笑)。
まだ幸せがくみ出せるのか。すげえなぁ!
今までわずらわしいと思ってたものが、
愛なのか!と思って心地よくなると
幸せがぐーんと増えそうな気がする。
それでいて、なんだかやっぱり
自分らしくないような気が‥‥まだ‥‥。
自分らしいというのは、
理性的に定義できてる自分だから、
それはいまいち、しょうがないんだよな。
糸井 岡田さんは、おもしろいですね。
岡田 なんだか、今ね‥‥。
糸井 え?
岡田 ぼく、主観的にはもう、
ぺっちゃんこですよ。
自分にしては珍しく、
今の自分がいけないような気がしてるんですよ。
今の自分がいけないという感じが、
「自分でも納得できる感じでいけない」んですよ。
それがね、イヤですねぇ。
‥‥こんなこと口走ってるのは、
甘えてるからなんですけどね。
糸井 ‥‥甘えぎらいですね(笑)。
岡田 そうです。
糸井 若いときは、みんな
甘えが嫌いですよ。
岡田 そんな!
糸井さんの発言を青年と言った私が!
そう言われるのはすごく悔しいです(笑)。
糸井 岡田さんは「好き」「嫌い」ということが
大切なことなんだ、ということに、
きっとものすごく早い時期に気づいたんでしょう。
そんなに自信を持って言える人、
いないですよ、きっと。
作品なんですよ「岡田斗司夫」は。
だって、岡田さんは、
自分のアイコンを持ってますもん。
そういう人の生き方って、ありますよ。


岡田 ああ、そういえば、自分アイコンの
ある人とない人が、いますね。
糸井 岡田さんだけじゃなくて、
漫画家って、みんな自分アイコンが
ありますよね。
「ちゃはー」でも、なんでもね。
あれは、漫画家という人たちが
すごい全能観を持った人たちだから
なんでしょうね。
岡田 漫画家は、とくにそうですね。
自分が作品を描くのと同じレベルで、
世の中が動いてくれたら世界は住みやすくなる!
という、確信を持っている人がいます。
「世の中が俺の言うとおりになればすごいのに」
という漫画家の人たちを
わりと身近に見てるから、
「あれほどじゃない!」と
自分は思っちゃうんですよ。

糸井さんはきっと、
100人を幸せにする道にいて、
ルールを作りたいぼくのような人間は
1万人を不幸せにしない道にいる。
このちがいですね。
ぼくは、
ひとつも幸せを生み出さなくてもいいけども、
世の中の不幸せを
誰にも気がつかないところで、
ちょっとずつ修正しているんだ、というところに
ヒロイズムを感じるんです。
そういう、
歌を歌ってるんです。‥‥どうしようかなぁああ。
うーーーーーーーーーん。
糸井 すーごい、長いですね、息が。
岡田 うん。長いです‥‥。
(ひとりごとのように)
責任感を手放すってことなのかな、これは。
糸井 「責任感を手放す」は、
応援しますよ。
岡田 責任感を手放したら、
足の片方の主軸がなくなって、
ぼくは「好き嫌い」だけになる。
やってみると、あんがい
今やってることとそんなに変わらなくて、
自分が体裁を整えてると思ってる部分が
破綻するだけなのかもしれないな。
そっちの方が向いてるかも‥‥。
いやでもな、
そんなこと言ってもな、
この責任感が‥‥これが依存ですよね!

ようやっと、糸井さんが「依存」と
おっしゃってたのが、
自分の言葉になってきました。
糸井 責任感という言葉は依存ですね、確かに。
岡田 でも、それをやればやるほど、
男の一部が崩れていくではないですか。
本質的に女だということを
認めなきゃいけなくなってくる。
そうなると、生物的な不安がありますね。
糸井 ないない。
岡田 あ、ないんですか。
‥‥わかりました。
(まわりを通った「ほぼ日」スタッフに向かって)
あっ! 聞かないで!
こんな話は、女の人に聞かせられないから(笑)!
糸井 私、どうなってもいいわ(笑)。
岡田 あ、そうなんだわ。
あ、いま、たどたどしかったな。
まあ、まあ、まあ、スタートですから。
ふふ。そうなんだよな。
(つづきます!)
 
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