PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙21 VA その2

こんにちは。
退役軍人病院、VAの話の続きです。

隣の州デラウエアまでは、
電車を使うか、車で行くしか手段はありません。
駅から病院までがまた遠いので
結局車で行くことになります。

日本では完全ペーパードライバー、
こちらでも運転免許を持っていないわたしは
同じ病院に配属されていて
しかも車を持っている同僚を見つけて
お願いしなければなりません。

それぞれの配属先は
外来だったり、急患室だったり、
入院患者担当だったりとまちまちです。
つまり、
行きと帰りの時間がそれぞれ全然違ってきます。

しかもその日の仕事の具合で
帰る時間も変わってくるので、
お昼ご飯を食べた頃から
「今日は誰に乗せてもらって帰るか」
が、何よりも重要な案件になります。

仕事の目途がついた時点で、
車を持ってる同僚のポケベルを鳴らしまくって
彼らの仕事の進み具合を確かめます。

わたしのために仕事が済んでるのに待たせるのは悪いので
自分よりも遅くなりそうなひとを見つけて、
「のせてね」と予約。

あとは、仕事の合間に
何を話しながら帰ろうかな、と
ぼーっと考えます。

馬鹿みたいでしょう。

でも、40分、渋滞事情によっては1時間以上も
乗せてもらっていて、
ずっと黙っているわけにはいきません。
特に、2人きりのときには気まずくて、
いくら英語が苦手なわたしでも
沈黙に耐えきれなくなります。

世界共通なのは、人の噂話。
あとは、近頃診た面白い症例などの病気の話や、
映画、テレビ、買い物など。

ある時は、彼女が寿司が大好物なので、
今度作ってあげたいんだけど、どうすればいいのか
という相談を受けて、
中華街で売ってる「すしのこ」を混ぜちゃえば簡単よ、と
お手軽日本料理講座の時間になったりもしました。

こんなくだらない話をして
時間をつぶしながら通うVAですが、
次回はそんななかの話のひとつをご紹介しようと思います。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

1999-10-13-WED

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