PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙24 サンフランシスコから
    「
老人医療保険の試み」その2

こんにちは。

サンフランシスコで組んでもらった
わたしの時間割では、火曜日と木曜日は
Program of All-inclusive Care for the Elderly (PACE)。
うまく訳せないですけど、
たぶん“包括的高齢者ケアプログラム”とでも
言ったらいいんでしょうか、ともかく
高齢者の健康支援プログラムで、すごすことになりました。

そのセンターは日本街に接する一角にあって、
一番うれしかったのは、昼休みに紀伊國屋書店まで
週刊誌の立ち読みに行けたことでした。

他のPACE同様、
On Lok SeniorHealthとよばれるこの地域でのプログラムは、
加入条件として
(1)55歳以上。
(2)なんらかの病気があって、地域社会ではひとりで
   独立した生活ができずに、誰かの助けが必要である。
この2つを満たすことが必要です。

さすが契約の国、
On Lokに加入するためには
51ページもあるパンフレットを全部読んで、
納得、了解の上、契約書に署名をしなければなりません。

今日はこの契約書に示されている
PACEの内容についてお伝えしたいと思います。

On Lok SeniorHealth Systemに加入すると、
すべての医療は、全部このシステムの中で
まかなわれなければなりません。
これまでの主治医に診てもらうことはできなくなりますし、
専門医の診察が必要になる場合も
On Lokの指定する医師にかからなければなりません。
医師はカリフォルニア大学
サンフランシスコ校:UCSFのスタッフです。

基本的に、加入者はホームケアなどの助けを受けながら
自分の住居で暮らしていますが、
介護施設や病院に入院しての治療などに関しても含めて、
On Lokがその必要性を認め、
加入者が月々の契約料を払っている限り、
すべての医療費はその中からまかなわれます。

医師をはじめとする、
さまざまな職種のグループがチームを組んで、
24時間体制で加入者のケアにあたっています。

医療サービスを受けるには、
特定の地域内に居住していることも条件のひとつです。
サンフランシスコ市内には6ヵ所のセンターがあって
「チーム」が常駐しています。
「チーム」は毎日朝からミーティングをしていて、
3カ月に1回、すべての加入者は
「チーム」それぞれの立場から
生活や健康状態についての評価を受けて
必要なケアなどについて話し合っています。

こういった説明を受けながら
結局このPACEは成功しているのかどうか、
具体的な問題点はないのかについて
聞いてみました。

現在平均すると月に6人の新加入者と1人の脱退者がいて、
脱退の理由としては
以前からの主治医に診てもらいたいからというのが
一番なんだそうです。

で、気になる契約料ですが…
月3000ドル。 

多くの加入者は
MediCare, Medi-Calと呼ばれる
高齢者、社会貧困層に対する保険でカバーされていて
実際にじぶんのお財布から
全額払っているわけではありません。

お金の出所がどこであれ、
毎月の運営のためにひとり
3000ドルかかっていることは事実で、
これには食費や住居費、生活を楽しんだりする費用は
含まれていません。

自分の生活を省みても
月3000ドルなんて法外な値段です。
とても払えません。

でも、限られた医療資源と費用のなかで
健康で、できるだけ自立した老後を送るための
必要経費と考えることも必要かもしれないとも思います。

毎日センターに通ってくる人達を見る限り
失礼ですがお金持ちって感じでもないし、
センター自体もこざっぱりとして
リハビリやシャワーなどの施設はよく造られていますが
全体的には質素な印象です。

月3000ドルの価値があるかどうか、
次回はそのサービスの内容について
お伝えしようと思います。

では今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

1999-11-05-FRI

HOME
戻る