PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙26 サンフランシスコから、その4 「太平洋」

こんにちは。

サンフランシスコの退役軍人病院は
太平洋を望むアメリカ大陸の西の端にあって
こんな景色を楽しみながら余生を楽しむっていうのも
いいなあと思いながらおよそ1カ月を過ごしました。

フィラデルフィアから車で2時間ぐらい走ると
隣りの州、ニュージャージーの海岸へ遊びに行けます。
そこはもちろん大西洋で、
太平洋とはどこかでつながってるわけなんですけど、
わたしの中では、なんかちょっと違う感じの海です。

アメリカに渡って15年くらいになる
日本人の少し年上の友達がいますが、
彼女は、自分の子供にどうしても教えられない歌があると
あるとき話してくれました。
「海は広いな大きいな 月がのぼるし陽が沈む
海におふねを浮かばせて 行ってみたいなよその国」。
この歌を歌うと、
自分が本当に遠くに来てしまっているなあと思って
泣いてしまうから、なんだそうです。

近い将来、日本へ必ず帰るわたしとは違って
この国で生きていくことを決めたひとが
こんな童謡に涙を流すというのが
ほんとうに切実な感じがして
話を聞いた時には
わたしまで泣きそうになってしまいました。

サンフランシスコで
週末に海岸を散歩しているときには
以前働いていた房総半島の景色を何となく思い出して
このずーっと向こう側の岸で
わたしは暮らしていたんだなあと
しみじみと懐かしくなりました。

ニュージャージーの海岸では
こんなこと思いつきもしませんでした。
やっぱり太平洋と大西洋の持つ意味の違いは
わたしにとって、とても大きなものみたいです。

サンフランシスコに行くと決めたときに
まず手配しなければいけなかったのが宿。
なんとか安く泊まる方法はないかな、と
いろいろ探したのですが、やはり観光都市の観光シーズン。
なかなか見つからずに困っていたのですが、
偶然、病院から歩いて5分くらいのところにある
民宿を見つけました。

ここは日本人とアメリカ人のご夫婦が営んでいて
自宅を改造して、
旅行者に部屋と食事を提供しています。
お部屋は、こぢんまり、こざっぱりとしていて
2段ベッドが入っています。
部屋によっては
日当たりがあまり良くなかったりすることもありますが
旅行で滞在の場合は、
昼は外出することが多いでしょうから
そんなに気にならないかもしれません。

ここに決めた理由は病院に近い、ということと
値段が安い、という2点でしたが、
3週間お世話になってみて、
サンフランシスコに行くことがあったら
またここに泊めてもらってもいいかな、
という気になった宿でした。

1カ月分の荷物をもって
知らない街の中、どうやって辿り着けばいいんだと
最初うんざりしていたのですが、
この宿では、予定の便を知らせておけば
飛行場まで迎えに来てもらえます。

お客さんは圧倒的に日本人が多くて、
大学生からわたしの両親の年代の方まで
ほんとにたくさんのひとたちがいらしてました。
ホテルというよりは、ひとの家に泊まってるかんじ。

万人向け、というわけではないかもしれませんが
サンフランシスコの西の端、海まで徒歩5分の住宅地。
治安も良いし、繁華街までは
家の前のバス停から乗り換えなしで行けます。

泊まるところを探すのに
結構苦労するサンフランシスコですが、
ここ、悪くないですよ。
特に質素な旅行がお好きな方には。
予約はインターネットでもできるそうで、
アドレスは  https://www.mymove.com/broadband/provider/att/ です。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

1999-11-14-SUN

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