手紙30 ドラッグストアのくすり3
こんにちは。
ドラッグストアでのお薬シリーズ、今回でおしまいです。
まずはおなかのくすりから。
<胃のくすり・制酸剤 anti-acidsなど>
日本で多く売られている<総合胃腸薬>のかわりに、
制酸剤、消化剤といった単機能の薬がたくさんあります。
近年日本の薬局でも売られ始めたH2ブロッカー
(ラニチジンranitidine、シメチジンcimetidine、
商品名ではガスターGaster、ザンタックZantac、
アクシッドAxidなど)は強力な制酸剤で
胃炎胃潰瘍の治療薬ですが、
飲みすぎると肝臓への負担が大きくなるので
必ず注意書きに従って飲んでください。
そのほかの制酸剤としては、
重曹(アルカセルツアーAlka-selzerなど)は
即効性がありますが、塩分を多く含むので
塩分制限の必要のある場合は不向きですし、
炭酸カルシウム(タムズTumsなど)は
便秘の原因となることがあります。
アルミニウム塩・マグネシウム塩。
胃の壁にくっついて、保護膜をつくるこれらの薬
(ガビスコンGaviscon、マーロックスMaalox、
マイランタMylantaなど)は、
副作用として下痢を伴うことがありますし、
また、腎臓で代謝されるので
腎臓が悪い方は注意が必要です。
<下痢止め anti-diarrheals>
下痢の原因はいろいろありますが、
細菌による下痢(食当たりなど)を薬で
無理に止めると、かえっておなかの中に
細菌をとどめることになるので危険です。
でも、その可能性が低い場合には、
ロペラマイドloperamide(イモディウムImmodiumなど)、
アタパルガイトattapulgite(ドナジェルDonnagelなど)、
サリチル酸ビスマスbismuth subsalicylate
(ペプトビスモルPepto-Bismolなど)などで
下痢を止めることができます。
下痢のときには体から水分が
どんどん失われてしまうので
スポーツ飲料や果物のジュースなど
でできるだけ補給してください。
いずれの場合も服用して2日たっても
症状が改善しないときには医療機関に相談してください。
<下剤 laxatives>
腸の中で膨張して便意を促すセルロースなどの繊維物質
(ファイバーオールFiberall、シトルセルCitrucel、
メタミューシルMetamucilなど)は、
十分な水分を一緒にとることが大切です。
ドクセートdocusate sodium(コレースColace)は
界面活性剤として水と油分を混和させて
便を柔らかくして排便を促す薬です。
腸粘膜を刺激して便意を誘発する刺激性の下剤
(デュコラックスDucolax、
エックスラックスEx-Laxなど)はよく効きますが、
水分が排泄されすぎたり、
乱用すると腸の機能が低下しやすいので
使いすぎに気をつけてください。
<睡眠薬 sleeping pills>
市販されている睡眠薬は
抗ヒスタミン薬diphenhydramine /doxylaminです。
(ユニソムUnisom、スリーピナルSleepinal、
コムポズCompozなど)
副作用としてのどが渇くことがあります。
<乗り物酔い・吐き気止め
anti-motion sickness, anti-emetics>
これも主な成分は抗ヒスタミン剤meclizineです。
(ドラマミンDramamine IIなど)
<痔の薬 hemorrhoid meds>
肛門周囲を清潔に保って、刺激しないことが大切です。
局所麻酔を含む軟膏(アメリケーンAmericaine、
アニュソールAnusolなど)や、
血管収縮剤・保護剤を含む軟膏
(プレパレーションPreparation H、
ヘモリッドHemoridなど)があります。
そのほかの症状と、お薬について。
<膣炎 vaginal infection>
市販薬で治療できる膣炎は酵母菌によるものだけなので、
症状の改善がない時は医師に相談してください。
剤型には膣錠、軟膏、パウダーがあります。
(フェムケアFemCare、ガイネロートリミンGyne-Lotrimin、
ミコナゾールMiconazolなど)
<かゆみ itching>
局所麻酔剤リドカインlidcaineなどが含まれています。
(イッチエックスItch-X、バクチンBactine、
カンフォフェニークCampho-Phenique)
<外傷>
簡単な傷はよく水洗して消毒薬
(ベータダインBetadaineなど)で消毒し、
抗生物質(ネオスポリンNeosporin ointmentなど)
を塗って様子を見ても大丈夫ですが、
化膿してくるようであれば医師に相談してください。
汚い傷は場合によっては破傷風の追加免疫
(予防接種のやりなおし)が必要で、
医師に見せる必要があります。
破傷風の予防接種(tetanus shot)をいつ行なったかは
このときに必ず質問されます。
<筋肉痛 muscle ache>
日本でよく使うサロンパスなどのハップ剤は
普通のお店では扱ってないです。
軟膏やクリームとしては
ベンゲイBen-Gay、
ミネラルアイスMineral Iceなどがあります。
<口内炎 oral ulcer>
局所麻酔と消炎剤が含まれています。
(オラルジェル マウスエイドOraljel Mouth-Aid)
<歯痛 tooth ache>
手に入るのは、局所麻酔剤です。
(マキシマムストレングスオラルジェル
Maximum Strength Oraljel)
痛みを抑えるだけの対症療法ですから、
医療機関の受診をお勧めします。
米国の薬について調べるときに参考になる情報源としては
つぎのようなところがあります。
・アメリカの薬なんかこわくない
〜family books社発行1996年
・Drug InfoNetなど
・全米チェーンのドラッグストアについての問い合わせ
Chain Store Guide 1-800-778-9747
あと、このもともとの原稿は
「海外医療」という雑誌の1999年3月号に載ってます。
この号では米国だけではなくて、
アジア、南米、ヨーロッパなどの国での
市販薬の情報もあります。
この雑誌は医務官が駐在している
日本大使館においてあるそうで
発行元は海外邦人医療基金という財団法人です。
以上、大雑把ですが米国のドラッグストアでの
お買い物の際、役立てていただけたら、うれしいです。
ほんとは、行かないに越したことはないんですけど。
では、みなさまどうぞお元気で。
本田美和子
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