PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙38 喘息のはなし1 なぜ起こるのか

こんにちは。

MD Consultという、検索サイトがあります。
これはとても便利で、
医学雑誌の記事や治療のガイドラインなどを検索したり、
その内容を取り出したりすることができます。

そのなかに
Patient Education Materialというのがあって、
患者さん向けに病気のことや、治療の方法、
気をつけておくべきことなどの詳しい説明が、
いろんな病気について2500篇くらい入っていています。

プリントアウトすると、
冒頭にわたしの名前と外来の連絡先が
ばーんと大きく印刷されてきて、
そのまま患者さんに渡せるようになっていて便利。

営利目的で使用しない限り、その使いみちは自由です。

ここで見つけた材料などを参考にしながら、
「運の悪いひと4」で触れた喘息について
これから何回かに分けてご紹介を。

わたしたちが息を吸っている最大の理由は
体の中に酸素を取り入れるためです。
吸いこまれた空気中の酸素は
肺胞とよばれる、小さな小さな
ぶどうの房のようなところで
体の中の二酸化炭素と交換されています。

この肺胞までにいたる空気の通り道は
気管や気管支と呼ばれていて、筋肉で支えられています。
喘息は、この空気の通り道、気道の筋肉が
何らかの理由で縮んだままになり、
気道が狭くなってしまって
空気がうまく通れなくなるために起こります。

一般的な症状としては、
咳がでたり、息がひゅーひゅーいったり、
息苦しくなったりといったことがよくみられます。

体に刺激のある物質が吸いこまれることで
気管が縮んでしまうのがもともとの原因なのですが、
普通の人なら、深呼吸をすることで
この筋肉をリラックスさせることができます。

でも、喘息のある人はこの筋肉を緩めることができずに
気道が縮んだままになるので
空気の通りが悪くなり、どんどん息苦しくなっていきます。

さらにこれに続いて、吸いこまれた刺激物に対して
体は身を守ろうと、いわゆる免疫反応を起こします。
これは炎症反応とも呼ばれていて、
たとえば粘膜が腫れたり、
分泌物がたくさん出てきたりするようになります。

このような炎症反応は、空気の通りをますます悪くして
痰をともなった咳がでたり、
息苦しさがさらにひどくなったりしてしまう訳です。

で、こんな喘息を起こす原因って、何なのでしょうか。

からだに免疫反応を起こさせてしまう物質のことを
アレルゲンと呼んでいます。
いろんなものがアレルゲンとなって
アレルギー反応を引き起こしています。
これは、ひとによってさまざまです。

たとえば、カビや花粉、動物の毛。
あとゴキブリもとても有名なアレルゲンのひとつです。
また、いわゆる花粉症と喘息の関係は
あまりはっきりしていません。

大気汚染や喫煙も
喘息を起こす大きな原因のひとつです。
自分は吸わなくても、身の回りのひとがタバコを吸う場合、
そうじゃない人よりも
よりひどい喘息になりやすいという調査結果もあります。

また、大人になってから始まった喘息の2割くらいは
仕事で接する化学物質が原因となっていることがあります。
このタイプの患者さんは、仕事がお休みのときには
症状が出なかったり、軽くなったりします。

急に冷たい空気を吸ったり、異常気象にみまわれたり
また、激烈な感情の変化が起こったときなどでも
喘息は起こります。

遺伝的な要素も、喘息に関係しています。
だいたい患者さんの3分の1くらいは、
親族に喘息のひとがいるみたいです。
面白かったのは、お母さんが喘息であるより
お父さんに喘息があるほうが
その子どもには喘息が起こりやすいんだそうです。

子どもや若い人に多くみられますが、
運動が引きがねになって起こる喘息もあります。
これは冷たい空気を吸いこんだりすることも
原因のひとつです。
明らかにこのタイプの喘息があるひとは
事前に薬を吸入するのが有効です。

月経の周期に応じて喘息の症状が現れる女性もいますし、
また、妊娠の期間中に喘息の症状が変化することも
よく知られています。
妊娠が一概に喘息に悪いわけでもなくて、
1/3は悪化、1/3は改善、
1/3は不変といわれています。

あと、胸焼けというのは
胃液が食道へ逆流することで起こりますが、
この逆流した胃液が刺激となって
喘息を起こすこともありますし、
肺炎や気管支炎がきっかけとなって起こる喘息もあります。

なんだか、だいぶ長くなってしまいましたが
喘息はどうして起こるのか、ということについて
今日は書いてみました。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子
 

2000-02-13-SUN

 
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