PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙70 マンハッタン島一周自転車ツアー
    
こんにちは。

夏の終わりに友達から電話をもらいました。
「9月の終わりに
 サイクリングに行かない?」

久しぶりに自転車に乗るのも楽しそうだな、と思って
「いいよ」と詳しい話を聞くことにしました。

多発性硬化症(Multiple Sclerosis ; MS)という
難病があるのですが、
この病気に関する研究費を集めるために
チャリティーの自転車ツアーが開かれるのだそうです。

チャリティーなら
MSのほかにもお金を払いたい病気もあるしなあ、
と思いながら話の続きを聞きました。

この慈善事業は毎年行なわれているもので、
今年はその16回目。
当日はマンハッタン島をぐるりと囲んでいる
高速道路を閉鎖して、
たくさんの人たちが
マンハッタン島を一周、コースによってはさらに遠くまで
半日から一日かけてサイクリングを楽しむ、という
趣向なのだそうです。

高速道路を、自転車で。

「行くー」

自転車は借りることにして
ウェッブサイトで登録を済ませて
前日にニューヨークへ出かけて行きました。

街中の自転車屋さんで
ヘルメットと自転車を借りて45ドル。約5千円です。

当日は夜明け前に出発です。
ギアチェンジのやりかたどころか、
どっちのブレーキが後輪用なのかすら確認せずに
地下鉄の駅までの真っ暗な坂道を
(わたしにしては)すごいスピードで駆けおりている
自分の準備不足を少し後悔しました。

地下鉄には同じような格好で
自転車を担いで乗りこんでくる人がたくさんいて、
だんだん気分も盛り上がってきます。

出発地はマンハッタン島の南の端、
世界貿易センターの近くです。
通りはこのツアーのために閉鎖されていて、
自転車に乗った人たちで埋まっています。
中には4人乗りの長い自転車で参加の親子もいました。

主催者からの短い挨拶を聞いて
柔軟体操を終えると、いよいよ出発。

わたしたちが選んだコースは
一番短い、マンハッタン島一周の30マイル。
約48キロです。
南の端から島の東を北上して
北の端にある公園で、おやつ休憩。
それから島の西側を下って出発地まで戻ります。

コースはごく一部を除いて
ほとんどが高速道路です。
地域ごとに趣がだいぶ違うニューヨークの
高架からの眺めを楽しみながら、
一緒に走っている友達に観光案内までしてもらった
とても快適なサイクリングでした。

すべての交差点には
制服のおまわりさんが立ってるし、
ゴールには、かわいいチアリーダーが
ぴょんぴょん飛び跳ねながら応援してくれている、
なかなか本格的なレース仕様のツアーなのですが、
もちろん競技ではないので
みんな各々のペースで、楽しんでいました。

自転車といえば、通勤かお買い物用で
15分以上続けて乗ったことのないわたしが
いきなり50キロ近くも走れるのか、ちょっと不安でしたが
最後はよれよれになりつつも無事、ゴールイン。

この日の参加者は約4500人。
このイベントを通じて集められた寄付金は
100万ドルを超えるそうです。

参加する人が、こんなに楽しい時間を過ごせて
集まるお金が1億円。
さらに、多発性硬化症についての
理解を深める機会にもなるこのチャリティー、
とてもいいアイディアだと思いました。

自転車はいろいろなところで借りられるし、
参加資格も特にないので、
御旅行の方も登録さえすれば参加できると思います。
詳しい説明は
ニューヨークのMS(多発性硬化症)協会のサイト
に載っています。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2000-11-16-THU

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