PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙78 HIV5 感染してすぐの症状

こんにちは。

前回まで、3回にわたって
「HIVがどうやって
ひとからひとへうつるのか」という
HIVの感染経路についてお伝えしてきました。

異性間・同性間の性交渉や、
注射針の使いまわし、
HIVに感染している人の血液から作った
血液製剤の輸血、
妊娠・出産・授乳を通じた、
お母さんから子供への感染。

HIVの感染の経路としては
こんなことが考えられています。

では、HIVに感染したときには
いったいどんな症状がでてくるのでしょうか。

今日はHIVに感染してすぐにみられる症状について
すこし御紹介してみようと思います。

たとえば、昨日HIVに感染してしまったとして、
翌朝目が覚めた時に
「やばい。HIVにかかった。」と
自分で気がつくような異変が起きることはありません。

でも、自分ではぜんぜん気がつかないけれど、
体の中では
ものすごい勢いで
HIVが仲間を増やしつづけています。

HIVはいったん体のなかにはいると
1日に100億個から1000億個くらいの勢いで
つぎつぎと仲間を増やしていきます。

このように、感染してすぐに
ものすごい数のHIVが体の中で増えてしまいますが
普通、ひとには外敵から身を守るための兵隊、
免疫機能が備わっています。

この免疫機能が働き始めることによって
からだのなかのHIVの数は
「ものすごくたくさん」から
「すごくたくさん」くらいまで減ってきます。

もちろん、HIVが「ぜんぜんいなくなる」
ということはありません。

体の中に入ってきたHIVと戦おうと
免疫機能ががんばっているときに
多くの人は、
「ちょっとした」症状を感じるようです。

今回は
Acute Retroviral Syndromeと呼ばれる、
HIV感染のごく初期に見られる症状について
御紹介してみることにします。

HIVに感染した人の6割から9割くらいは
感染後1週間から6週間くらいの間にかけて
「ちょっとした」症状を感じることがあるそうです。

この症状は、ほんとうに「ちょっとした」という感じで
例えば、少し体がだるい、のどが痛いとか、
熱がでたり、体に湿疹ができたり、
頭痛や筋肉痛を感じたり、
吐き気や下痢を催す、といった具合です。

このような人を診察した場合、
口の中に潰瘍ができていたり
リンパ腺が腫れていたりすることもありますし、
血液検査ではリンパ球の数が減ったり
肝臓の機能が一時的に悪くなることもあります。

でも、これらの症状はあまり長続きすることなく
そのうち、よくなってきます。

もちろん、
「よくなった」、というのは見かけだけのことで
体の中にHIVは潜んでいます。

HIVとの戦いに敗れた
体を守る兵隊・免疫機能は
このときを境に、次第に低下していきます。

体の免疫機能を測るものさしとしては
リンパ球の数が使われています。

リンパ球にもいろんな種類があって、
お聞きになったことがあるかもしれませんが、
とりわけHIVにやられやすい
CD4と呼ばれるリンパ球の数を
HIVの患者さんは定期的に調べる必要があります。

普通の人の場合、CD4の数は
血液1μLあたり500から1700個くらいです。

HIVの患者さんの場合は
これがだんだん減ってきてしまい、
血液1μLあたり200個以下になると
いろいろな感染症の合併、
いわゆるAIDSを発症する可能性が高くなります。

今日はなんだか
不安をあおるような内容になってしまって
すみませんでした。

次回は、
HIVに感染する可能性の高い行為をやってしまって、
しかもその後
「これってAcute Retroviral Syndrome?」というような
症状が出てしまった時、
わたしたちは一体どこへ行けばいいのか?
ということについてお伝えしようと思います。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-01-30-TUE

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