手紙79 HIV6 診断・抗体検査
こんにちは。
前回は、
HIVに感染したとき、そのごく初期に見られる症状や
体の中で起こっていることなどを
お伝えしました。
Acute Retroviral Syndromeと呼ばれる
感染初期の症状は、
ほんとに「ちょっとした」もので、
この時期だと
まさに「ちょっと風邪気味かなあ」と思うような症状が
そのまま当てはまります。
その症状があまりにも漠然としているので、
「もしかしたら、
自分はHIVに感染してるんじゃないか?」と
急に心配になってしまった方の不安を
ますます煽るような感じで
前回の手紙を終わらせてしまったんじゃないか、と
わたしも心配になってきました。
そこで、今回はいつもより早めですが
「もしかしたら、HIVに感染してるかも…」と思ったときに
どうすればいいのか、ということについて
ご紹介してみることにします。
HIVに感染しているかどうかを調べるには
血液を検査する必要があります。
最近は、検査の技術が発達してきて
HIVのウイルスの量を
直接測ることができるようになってきていますが、
HIVに感染しているかどうかを調べるためには
ウイルス量ではなく、
体の兵隊・免疫機構によって作り出された
HIVに対する抗体を探します。
HIVが体の中に入ってきてから
抗体が作りだされるまでには、
多少時間がかかります。
だいたい、感染後2週間から8週間たつと
血液の中にはHIVに対する抗体が出てきます。
ですから、この時期以降でないと
きちんとした判定はできません。
HIVの抗体に対する検査は
2段階に分かれます。
まず、第一段階のスクリーニングとして
まあ名前はどうでもいいのですが、
ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)という
方法でHIVの抗体があるかどうかを調べます。
このほかにPA法というやり方を
使うこともあります。
これらの検査はとても感度がいいのですが、
HIV抗体以外の蛋白質についても
反応してしまう(偽陽性といいます)ので、
結果が「陽性」となった場合には
この結果が
本当にHIV抗体によるものかどうかを確かめるために
第2段階の検査として
Western blotという、2つめの検査を行います。
この2つの検査の結果が
いずれも「陽性」であるときに、
「HIVに感染している」と診断します。
では、これらのHIV抗体検査は
どこで受けることができるのでしょうか。
まずは、普通の医療機関。
あと、保健所でも受けられます。
ここで、ぜひお願いしたいのは、
「HIVかどうか心配だから、献血する」のは
絶対にやめてください。
ということです。
エイズ動向委員会という
厚生労働省直属の組織がありますが、
ここでは全国の医療機関から寄せられた
HIV患者に関する統計を定期的に発表しています。
ここのサイトでは、
献血された血液から検出された
HIVについての報告もまとめられています。
昨年は10月までに約500万人の方が
献血しているそうですが、
そのなかで50件、HIV陽性の血液があったそうです。
もちろんその血液は廃棄されて、
患者さんに使われることはありません。
献血された血液についてのHIV抗体検査は
その血液から作られた血液製剤を使う、
重篤な状態の患者さんを
HIV感染から守るためのものです。
もし、HIVに感染しているかどうかを
お知りになりたい場合には、
どうぞ献血ではなく、
病院や保健所をご利用になってください。
保健所については、
いつもお世話になっている東京の病院の先生方に
詳しい情報をいただきましたので、
以下にそれをご紹介します。
保健所が病院よりもいいのは、
匿名で検査を受けることができるところです。
費用もかかりません。
また、保健婦さんが
検査の前と結果を聞いた後、
それぞれ相談にのってくれるようです。
ただ、予約が必要であったり、
日時が限られていたり、というように
少々不便なところもあります。
東京近郊の方に限られてしまうかもしれませんが、
新宿駅の南口に
東京都南新宿・検査相談室というところがあります。
ここでのHIV抗体検査数は、
都内すべての保健所での
検査数を合わせたものより多いんだそうです。
東京都南新宿・検査相談室では
普通の保健所よりも遅くまで検査を受け付けていますが、
やはり予約が必要だそうですし、
結果を聞くために
1週間後にもう一度行く必要があります。
場所:東京都渋谷区代々木2-7-8 東京南新宿ビル3F
(1Fはレンタカー屋さん)
予約受付時間:月〜金(祝祭日をのぞく) 午後3時半から7時
検査業務時間:月〜金(祝祭日をのぞく) 午後3時から8時
匿名、無料
予約受付番号:03-3377-0811
あと、東京都の衛生局のサイトでも
各保健所と検査の日時についての
一覧表がありました。
この回の始めのほうでも触れましたが、
HIVに感染してからHIVの抗体ができるまでには
普通2週から8週間、
ごくまれに、反応が遅くなって
12週間くらいかかることもあるようです。
ですから、HIV感染を疑う特定の出来事が起きてから、
2ヶ月から3ヶ月後に検査を受ければ、
HIVに感染しているかどうかを
はっきりさせることができます。
今回は
検査の方法と検査を受ける場所について
ざっとお知らせするつもりだったのですが、
結局なんだか長々と書いてしまって、すみませんでした。
次回は、
「HIV抗体は陽性でしたよ。」と告げられたとき
それからどうすればいいのか、
ということについて、お伝えしようと思います。
では、
みなさまどうぞお元気で。
本田美和子
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