PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙99 ニアミス・カンファレンス再び。
     6・最後に


こんにちは。

ニアミス・カンファレンス当日の話の続きです。

肺炎で入院した患者さんの治療と
それにまつわるいくつかの問題点を
主な題材として開かれたニアミス・カンファレンスは、
前回お伝えしたように
入院してからの時間の流れに沿って
検証して行く形で進んで行きました。

外科の先生とのやり取りの後は、
内科の中での週末のシフトについて
改めるべきところはないか、とか、
放射線科の医師と検査の日程を調整するのに
内科のレジデントがどれほど苦労しているか、
などについて話し合っているうちに
あっという間に時間が過ぎて行きました。

最後に、外科の先生が
胸水についての短い講義をして下さって、
無事、1時間のカンファレンスは終わりました。

発表用の資料を片付けていると
倫理委員会の先生がやってきて、
「とても実りある内容のカンファレンスになって
よかったね」と言ってくださいました。

ここで大事なことは
1) アメリカ人は、何でも誉める。
2) しかも発表の内容は
  「自分の失敗、またはそれに限りなく近い状態」
  についてである。
ということです。

というわけで、誉めていただいても
ちょっと複雑な気持ちです。
でも、面と向かってけちょんけちょんに言われるよりは
もちろん良いですから、
ありがたくお礼を申し上げました。

月に一回のこのカンファレンスが
翌日からの日常の業務に直接生かされる、ということは
それほど多くないと思います。

でも、疾患とその治療に焦点を当てて話し合う
日頃のカンファレンスだけではなく、
いつもと違う角度から
自分たちの仕事について考える機会を設けることは
面白い、と思いました。

先日、アメリカでのトレーニングを終えて
数年前に日本へ戻られた先生に
久しぶりにお目にかかって食事をしながら
このカンファレンスの話をしました。

その先生はニアミス・カンファレンスについて
とても興味をお持ちになり、
どうすれば日本でも同じようなことができるか、
ということを一緒に考えてみました。

失敗をみんなの共有の財産と考えること、
また、ミスが起きた前後関係を明らかにすることが
当事者には求められるだろうと思います。

さらに、カンファレンスの中心となる担当者を一人決めて
病院内のいろいろな部署から
その人に情報が届くシステムを作ることも
大切なことだろうと思います。

また、カンファレンスが
吊るし上げの場所にならないように配慮することも
定着させるためには不可欠だと思います。

例えば、今回はケースの当事者・わたしが
発表、質疑応答を担当しましたが、
事前に十分に打ち合わせをすることで
直接ケースとは関係ない
第三者が発表することも可能だと思います。

この先生の病院では
近々ニアミス・カンファレンスを始めるそうなので、
その結果について教えてもらうのを
とても楽しみにしています。

さて、外科医に「ちくられた」という感じで
「ついてなかったねー、運が悪い。」と愚痴りながら
発表したニアミス・カンファレンスでしたが、
実はこのカンファレンスと同じ頃、
実害こそありませんでしたが、
これを上回る不運に見舞われました。

これも病院がらみの話なのですが、
次回はこのもう一つの災難について
お伝えしようか、と思います。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-06-10-SUN

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