手紙100 病院評価・1 JCAHOがやってくる。
こんにちは。
今年の1月の始めに
病院の中の様子が
少しずつ変わってきているのに気がつきました。
いつもはカルテや検査結果の報告書などが
散乱しているERのテーブルに、
患者さん毎に書類をまとめて整理する
ファイル・ホルダーが並べられるようになったり、
病棟の薬や医療器具の管理が
いつもよりも厳しくなったり、
ナース・ステーションに
何やらマニュアルが配られ始めたり。
いったいどういうことだ、と
みんなで訝っていたところに
レジデントに召集がかかりました。
「1月の半ばに、JCAHOの調査があります。
調査期間は、
病院内のすべての職員とその仕事ぶりが
厳しく評価されます。」
「わたしたちは、きみたちレジデントが
いつも通りのすばらしい仕事ぶりを発揮してくれれば
何ら問題はない、と自信があります。」
「しかし、」
「たとえばカルテの記載を怠らない、とか
患者さんの診察の前後に手を洗う、など
プロフェッショナルにふさわしい行動を
いつもと同じようにとってくれることを
強く期待しています。」
“いつも通りのすばらしい仕事ぶり”とか、
“いつもと同じようなプロとしての姿勢”などと言う割には
「カルテをきちんと書け」とか
「手を洗え」など
レジデントのことをあまり信用してないね、という感じの
注意事項をみんなで聞きました。
さて、このJCAHOとは
米国の医療施設認定合同委員会の略称です。
この委員会は
病院がある程度の質を
保っているのかどうかを評価する、第三者機関です。
JCAHOに認定されないと
医療保険が適応されなくなるため、
この認定は
病院の存続にかかわるとても大切なものとなります。
3年に一度行なわれるこのJCAHOの調査が
目前に迫り、病院の管理部門の人たちは
その対応におおわらわになっていました。
評価項目は550もあるそうで、1週間かけて
それをひとつひとつチェックするのだそうです。
「ふさわしくない」と指摘された項目については
6ヶ月以内に是正しなければならず、
もし、できなければJCAHOの認定は取り消されます。
医師・看護婦などのスタッフのみならず、
患者さんにも詳しいインタビューが行なわれるので
何か聞かれたら
正直に、自分の知っていること、考えていることを
述べるように、というお知らせも届きました。
へえ、面白いねえと
資料を読んでいたのですが、
その時にはまさか自分に
そんな災難が振りかかってくるとは思いもよらず、
高見の見物を決めこむつもりでした。
では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。
本田美和子
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