手紙105 レジデントの暮らし・2 衣
こんにちは。
レジデントの2年目が終わりに近づいたある日、
一緒に当直をしていた
1年目のレジデントの女の子が
こんなことを言いました。
「来年になったら、
たくさん洋服を買って、かわいい格好で働く。
絶対。」
レジデントの1年目は
1年のうち5ヶ月が入院病棟の係、
2ヶ月が集中治療室、1ヶ月がER、
休暇が1ヶ月、そのほかが3ヶ月、となっています。
入院病棟の係の時は4日に一回の当直です。
当直の日と、その翌日は
スクラブと呼ばれる当直着を着て一日を過ごしますし、
ERと集中治療室では
毎日スクラブを着て働きます。
ですから、1年目のレジデントは
その1年の大半をスクラブを着て過ごすことになります。
スクラブというのは、Vネックの半袖シャツと
ゴムの代わりに紐でウエストを絞るズボンとの
組み合わせです。
日本で手術の時に着る服とデザインは同じですが、
日本のスクラブが厚手、綾織りで張りのある
しっかりした生地で作られているのに比べると、
アメリカのスクラブは綿の割合が低い混紡・平織りで、
もう少し柔らかい着心地です。
どのくらい柔らかいか、というと
寝巻きにちょうどいいくらい。
でも、どんなに着心地が良くても、
デザインはひとつ、色も青か緑、という選択しかない
スクラブでの生活は退屈です。
レジデントの学年が進むにつれて
当直の回数は減っていくので、
スクラブ以外の服で働く機会も増えてきます。
ですから、彼女の
「来年は絶対にかわいい服を着る」という決意も
とてもよくわかりました。
実際に今年、彼女は
とても素敵な洋服を着ていることが多くて、
よくからかわれていました。
今年の5月に最後の当直を終えた後、
家に山ほど溜まっていたスクラブを
病院に返しに行きました。
スクラブを着て当直をするのはレジデントだけです。
もう、これで当直をしなくてもよくなるんだ、と思うと
なんだかちょっと、しみじみしました。
ちょっと短めですが、今日はこの辺で。
次回はレジデントの暮らしの「食」について
お伝えしようかと思っています。
みなさま、どうぞお元気で。
本田美和子
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