手紙120 ニューヨーク家探し・5 2つの事務所
こんにちは。
病院宿舎が決まるまでの宿探しの話、
だいぶ長くなってきたので
そろそろおしまいにしたいと思います。
サブレットを転々とする生活は
思いのほか、快適でした。
生活に必要な家財道具はもう揃っているし、
電話やガス・水道・電気などの
細かい手続きもしなくていいので、
本当に必要な身の回りのものだけを鞄に詰めて、
「こんにちはー」と扉を叩くだけで
すぐに普通の暮らしが始められる、というのは
本当に気楽でした。
でも、よく知らない相手から鍵をもらって
部屋に住まわせてもらう、というのも、
よく知らない相手に鍵を渡して
部屋を自由に使ってもらう、というのも、
考えてみれば、すごい冒険です。
最悪の事態を想像すると、
たとえば、貸主にしてみれば、
自分がいない間に家財道具が全て売り払われてしまって
帰ってきたら、何もない、という可能性もありますし、
部屋を借りている方にしても、
自分が借りている部屋の合鍵を持った人が
いつ、扉を開けて入ってくるかもしれない、というような
身の安全の保障のない状態にもなりかねません。
そのくらいのリスクは覚悟の上で、
あとは、部屋の借主と貸主が
互いをどのくらい信用できるか、という
本能的なやりとりを経て決める、このサブレットは
わたしにはとても面白い経験でした。
2軒目のサブレットは
とても眺めのいい、広い部屋でしたので、
今回の引越しに関してお世話になった友達を呼んで
窓からの眺めを楽しんだり、食事をしたりして、
とても楽しい時間を過ごすことができました。
8月の半ばに、
一緒に宿舎の順番待ちをしていた同僚に
宿舎係から電話がありました。
8月の3週目に10階の部屋が空くので、
そこに入れる、という知らせでした。
同僚は、とても親切な女の子で、
クィーンズという病院から地下鉄で30分くらい離れている
ご両親の家から通っていました。
「わたしは、親の家から通えているから、
サブレットをしてる美和子が先に入ってもいいよ」と
わたしが先に入居できるように、
宿舎係と掛け合ってくれていました。
残念ながら
「入居は絶対に申し込みの順番と決まっている」と
宿舎係の人に断られたのですが、
それでも、彼女の親切は本当にありがたいものでした。
彼女が入居費を事務所へ払いに行く、というので
わたしも、あとどのくらい待てば良いのか聞いてみよう、と
一緒に出かけて行きました。
ところが、彼女が向かった先は
わたしがいつも電話をかけたり、
話をしに行っていた建物とは違う場所でした。
「わたし、ここに来るの初めて。
宿舎係の事務所ってここなの?」
じゃあ、これまでわたしが足繁く通っていた事務所は
いったい何だったんだ?と
わたしは訳がわからなくなりました。
「こっちは病院の宿舎係で、あっちは大学の宿舎係。
申し込む時、両方の申込書を書いたでしょ?」と
友達は言うのですが、
そんな半年どころか10ヶ月くらいも前のこと
覚えていません。
ともかく、こっちの宿舎係の人に
「わたしの申込書、届いていますか?」と聞いてみました。
彼女はファイルをしばらく調べた後で、
「ないわね。書類は、たぶん
大学の宿舎係の方にだけ届いてるんだと思う。」
と言いました。
それは、もしかすると
こっちの宿舎の申し込みは、
また一からやりなおし、ってこと?
わたしは本当にがっかりしてしまいました。
今回で家探しの話はおしまいにするつもりでしたが、
長くなったので、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。
本田美和子
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