手紙125 ほぼ日ブックス・4 高校でのお話。
こんにちは。
休暇の間に、
以前の職場や熊本の大学で
若い医師や医学生の方々向けにお話をする機会を
友達が作ってくれました。
興味の対象はそれぞれ違うでしょうが、
基本的には同じフィールドにいる方々です。
できるだけ多くの方に
話を楽しんでいただけるように構成を考えたり、
スライドを作ったりする準備は面白かったです。
仕事を終えた後や、放課後に
わざわざ来てくださった方々には
ここで、改めてお礼を申しあげたいと思います。
ありがとうございました。
実は、このような機会とは別に、
あとひとつ
急に決まった集まりで話をすることになりました。
前の二つは同業のかたに向けての話だったのですが、
最後のひとつは
全くちがうグループです。
今日はその時のことを
お伝えしようかな、と思います。
浦谷くんの番組が放送されたり、
取材を受けたインタビューが新聞に載ったりした後、
それを見た友達や知り合いが
熊本の家に連絡をくれました。
そんな中に
高校のときに、とてもお世話になった
図書館の司書の先生がいらっしゃいました。
「もしよかったら、図書委員の子たちに
話をしてもらえないかしら。
話題は何でもいいから」
話が決まったのは当日の朝で、
その日の昼休みと掃除の時間を使って
図書館で40分ほど話をすることになりました。
引き受けてしまった後で
いったいどんな話をしたらいいのか、と
ちょっと迷いました。
学生さんにとっては
掃除をしなくていい、という意味では
喜ばれるかもしれませんが、
それが退屈な時間になってしまっては申し訳ないし、
何より、最後に高校生と話をしたのは
思い出せないほど前のことで、
ちょっと自信がありませんでした。
ともかく、お昼前に学校へ行って
懐かしい図書館で、先生と話をしながら考えてみました。
総じて言えば、わたしの高校生活は楽しかったのですが、
でも、毎日の暮らしの中で
鬱々と考えることも、また、すごく多かったです。
たぶんその原因のひとつは、
自分に対する不安だったのだと思います。
自分が、どんな大人になっていくのか、
どんな仕事に就くのか。
それより前に、ちゃんと大学へ入れるんだろうか。
もしかしたら、自分には
何もできないんじゃないか、という不安が
いつもわたしの中にはありました。
何かひとつ失敗すれば、
それは、もう
取り返しのつかないことになるかもしれない、
というような気分もありました。
でも、すぐに、失敗しないことの方がうんと珍しくなり、
今では、たまにうまくいくと
「おお、うまくいった!」と
驚くような生活になっていますが、
それでも、なんとか毎日を過ごせています。
また、
自分には何もできないんじゃないか、という不安は
今でもずっと一緒ですが、
そんな中にも、自分にできることは少しはあるし、
「こっちに行ってみようかな」という方向を決めてみれば
とりあえずそっちに進んで行くことはできる、
ということもわかってきました。
わたしが高校生だったのは
もう随分前のことですが、
今、高校で同じようなことを考えている方も
いらっしゃるかもしれませんし、
もし、そうなら、わたしがその学生さんに
お話をすることはできる、と思いました。
そんなことを考えているうちに昼休みになり、
図書館には50人くらいの図書委員が集まってくれました。
彼らと過ごした40分は、本当に楽しかったです。
みんな、すごくしっかりしていて、
とても頼もしい高校生でした。
話をしに行ったわたしが、逆に元気をもらったなあ、と
うれしくなりました。
その後、先生とお昼ご飯を食べている時に、
友達から電話がありました。
「ねえ、福岡のNHKの人が探してるよ。連絡くださいって」
何だか、だんだん話が大げさになってきました。
では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。
本田美和子
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