お医者さんと患者さん。 「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。 |
手紙170 医療制度のしくみ・7
これらの人々に対して 使われている医療費はどのくらいか、というのが この日のトピックで、その内訳は
病気である期間が長くなればなるほど、 病気が重篤になればなるほど、 医療を必要とする場面は多くなるでしょうし、 それに応じて費用がかさむのは当然のことだと 思ってはいたのですが、 1%の人々に対して、 全体の3割近い医療費が費やされていることを知ると 保険会社の人が 「医療費はこんな偏った使われ方をすべきではないのです」と 強調したくなる気持ちも わからなくもない気がしてきました。 でも、わたしは、逆に 特に病気のない、健康な人に 15%もの医療保険が使われていることに びっくりしていました。 日本の健康保険は、 何かしらの病気がないと使うことができません。 ですから、健康診断や合併症のない妊娠・分娩では 「これは病気ではない」ので 保険を使うことができずに、 全額を自己負担することになっています。 そういえば、米国で働くようになってから 「健康診断」で外来に来る人を たくさん診るようになっていることを 話を聞きながら思い浮かべていました。 保険会社の人の話はさらに続きます。 「社会の中で、健康な人の割合を高くしていけば、 慢性期・重症の患者さんの割合は下げることができます。 つまり、 医療にかかるコストを下げることができ、 社会全体の利益が上がっていくのです」 社会全体の利益、つまり健康状態の改善は 公衆衛生学が目指すもの、そのものですから 医療の分野で働く人であれば誰でも、 そうであって欲しいと願うと思います。 でも、それだけでなく、 大都市の中心部にこんな立派なビルをもつ この保険会社の個別の利益も 相当なものに違いありません。 保険の大きな仕組みと その求める利益について学んだ後、 わたしは、その翌日に この会社が個別のケースに関して どうやって利益を確保しているのか、という 典型例を目の当たりにすることになりました。 次回はその時のことについて ご紹介しようと思います。 では、今日はこの辺で。 みなさま、どうぞお元気で。 本田美和子 |
2003-05-28-WED
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