PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙174 医療制度のしくみ・11 日本の特徴(1)


こんにちは。

各国の医療制度について
学んでいたときの話の続きです。

医療のシステムの3つの大きな柱、
1)医療の質(quality)
2)医療にかかる費用(cost)
3)医療へたどりつくまでの手間や時間(accessibility)

のうち、
「医療へたどりつくまでの手間や時間」が
他の国と比べると、ものすごく少ない、
つまり、病院へ行きやすい国、日本の
医療制度の実際はどんなものか、
わたしは意見を求められて、発言する羽目になりました。

「日本では、国民皆保険、という制度になっていて、
すべての国民はいずれかの公的な保険に加入しています。」

「専門家に診察をして欲しいときに、
まず、一般内科医へ受診をして
紹介状を書いてもらわなければ診てもらえない
カナダのようなシステムではなく、
また、日本の公的な保険は
国内のすべての病院で受け入れられるので、
米国のように、
加入している保険の種類によって、
受診できる医療機関が限られる、
ということもありません。」

「最近は、紹介状がないと
少し余分にお金を払わなければいけなくなりましたが、
ともかく、日本では
自分が行きたい最先端の専門病院に
自由に行くことができます。」

「日本の医師法には、
診療を求められた場合には
正当な事由がなければ、それを断ることはできない、という
応召義務規定があるのですが、
正当な事由、というのに
『今日の予約は一杯になりましたから、
これ以上は診療できません』ということは含まれないので、
患者さんが受付の時間に病院にいらっしゃれば、
もちろん、診察します。」

「ですから、患者さんは、その日のうちに
希望する専門医の診療を受けることができる、というのが
日本の特徴のひとつだと思います。」

「じゃあ、たとえば風邪のシーズンに
内科医は何人くらいの患者さんを診てるんですか?」

医師の一人が質問しました。

「いろいろなケースが考えられますが、
午前中40人、午後40人くらい診る医師も
あまり珍しくないと思います」

えー、まじかよー、という
声が聞こえました。

初診の患者さんには
30分から1時間かけてゆっくり話をきいて診察をする、
2度目以降の方についても、15分くらいは時間をかける、
というのが一般的な彼らにとって、
これは、もう想像できる範囲を超えてしまったようでした。

「日本では、
医師は短時間にできるだけの情報を
患者さんから聞き取り、診察をして、
必要に応じて検査を出したり薬の処方をすることが
望まれています。」

「5分くらいの間に
患者さんの話をちょっと聞いて、さっと診察して、
やるべきことをぱっと決める、という一連の流れは、
もしかすると、
易者みたいに見えることがあるかもしれません」

「でも、病院に行きたい人は全部
その日のうちに診てもらうことができる、という
『医療機関の受診のしやすさ』を実現するには
こうするしか、ないんです。」

医療制度の3つの柱のひとつ、
『医療へたどりつくまでの手間や時間』の
日本の実情について、わたしは、こう説明しました。

全く違うシステムの中で働いている人たちに
話をするのは難しいなあと思いながら
わたしは話を続けたのですが、
それはまた、次回にさせてください。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2003-08-04-MON

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