お医者さんと患者さん。 「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。 |
手紙204 日本のHIV 治療のゴール・野口さんからのメール。 こんにちは。 先月、北海道教育大学で教えている友人が 「HIVのことを学生たちに話してもらえるかな」と 声をかけてくれました。 20才前後の方にHIVのことを直接お話しできる またとない機会を頂いて、喜んで伺いました。 当日は学生だけでなく、 「ほぼ日」でこの会のことを知った方も 来てくださいました。 その中のお一人、 北海道の高校の先生の野口由妃さんからは 以前から「ほぼ日」の連載について 折に触れて感想をいただいていたのですが、 今回、北海道教育大学釧路校で 初めてお目にかかることができました。 その後、 野口さんから、これまでも経験も踏まえた 当日の感想をいただいたので、 今日はそのご紹介をしようと思います。
野口さんがメールの中でおっしゃっている 「治療のゴール」というのは、 HIVの感染が判明して治療を必要とする場合、 「どうなれば、一応安心できるか」の 目安のようなものです。 HIVの治療薬を飲む理由は 血液中のHIVの量を「できるだけ抑える」ためです。 一般に、HIVに感染した人の血液1mlの中には 数万から数十万、もしくはそれ以上の HIVのウィルスが泳いでいます。 治療を始めることで このウィルスの数をできるだけ抑えたい、と わたしたちは願っています。 現在の技術では血液1mlの中にいる HIVのウィルスを50個まで (ウィルスの単位はコピーなので、50コピーまで) 数えることができます。 ウィルスの数が50コピーよりも少なくなったとき、 今の技術では数えることができないので 「検出限界以下」と呼びます。 ウィルスの数が「検出限界以下」に達することが HIVの治療を開始したときの当面の目標になります。 「検出限界以下」というのは、 数えられないくらい少ない量だ、ということなのですが、 いったん治療を止めれば、あっという間にまた 数万から数十万コピーのウィルスが 血液の中に現れてきます。 ですから、現在の治療では、 血液の中のウィルスを 数えられないくらい少なくすることはできるけれど 残念ながら、根絶させることはできないのです。 いったん「検出限界以下」というゴールに達した後は この状態をできるだけ長く続けることができるよう、 引き続きお薬を飲みつづけることが必要になります。 これが、また大変な努力を必要とします。 野口さんがおっしゃる、 「病気と共に生きていくことにはゴールがありません。」 という言葉は、このことも踏まえたものです。 「ひとりキャンペーンを始めました。」と ここで書いたときに 「手伝いますよ」、とメールをいただいたり 「『みんなの誤解』を印刷して、周囲に配りましたよ」 といったお知らせをいただき、 しみじみとうれしく思ったのですが、 野口さんも、 「そんなみずくさいこと言わないで。一緒にやりましょう」 とメールをくださいました。 野口さんとメールのやりとりをしている間、 教え子たちの健康を案じる 彼女のまっすぐで、とても暖かい言葉は いつもとても印象的で、 わたしは、彼女はどんな方だろうかと思っていました。 実際にお目にかかった野口さんは、 わたしが想像していたよりも若くて 想像していたように穏やかな女性でした。 「ほぼ日」を通じて知り合えたことを、 とても感謝しています。 今回は野口さんの感想を通して 北海道教育大学でのことをご紹介いたしました。 次回は、今回の連載を読んで HIVの抗体検査を受けよう、と決心した方からの メールをぜひご紹介したいと思います。 では、今日はこの辺で。 みなさまどうぞお元気で。 本田美和子 |
2006-07-14-FRI
戻る |