お医者さんと患者さん。 「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。 |
手紙217 日本のHIV・病院への通院が途絶えてしまう人 こんにちは。 わたしが働いている病院に 現在通っている患者さんの治療の内容を 大雑把に調べることが必要になったので、 ここ最近の受診リストから 1000人ほどさかのぼってみてみました。 調査の結果はだいたい予想していた通りで 報告のまとめはすぐできたのですが、 それよりも、リストを整理していて 通院が途絶えてしまっている人が あまりに多いことに驚きました。 1000人のうち、100人くらいの方が行方不明です。 リストには 「そういえば、このごろお目にかかっていないなあ」 と、名前を見てから思い出す、 わたしの外来に通っていた方もいらっしゃいました。 この100人には、 医師が紹介状を書いて他の医療機関へご紹介した 90人あまりの患者さんの数は含まれていません。 外来には、数年前の紹介状を持って 「何となく来そびれてしまって」と受診する方もいるので、 わたしたちが他へご紹介した患者さんの中には もしかしたら、まだ紹介状をお持ちのまま、 病院へ行ってない方もいるかもしれません。 最近は、自分の外来の予約枠が すぐにいっぱいになってしまうので、 目の前の患者さんのことばかりになって つい気がつかなくなってしまっていましたが、 数回通院しただけで病院へ行くのを止めてしまう方が 1割もいる、という事実を改めて知り がっかりしました。 HIVに感染してから数年は 症状がないことが多いので、 「別に調子も悪くないし、 病院へ行く必要もなさそうだ」と思って 足が遠のいているのかもしれません。 HIVは一度感染すると、絶対に治りません。 しかも、毎日確実に 体を守る免疫の力は低下していきます。 「調子が悪いから、病院へ行こう」と 本人が思ったときには、 たいていの場合、 「どうして、もっと早く病院に来なかったのですか?」 と医師が思うような状態になってしまっています。 「HIVに感染しないように、気をつけてくださいね」と 予防の話をするのは どなたに対してもできるので どちらかといえば簡単なのですが、 「既にHIVに感染していることがわかっていて、 病院へ行くのをやめてしまっている」という方を 見つけるのは大変です。 わたしの病院では 担当の看護師ができるだけ連絡を試みていますが、 住所や電話が変わってしまえば、 もう連絡をつけることは不可能です。 ご本人の健康が一番心配なのはもちろんですが、 もしかするとその方から HIVをもらってしまうかもしれない人が 世の中のどこかにいる、というのも気になります。 今回のシリーズでは 「検査を受けてみてくださいね」 という話題が多くなってしまっていますが、 もし、「自分がHIVに感染していることを知ってるけど 最近3ヶ月以上病院へ行ってない」 という方がこれを読んでいらしたら、 ぜひ、どこでもいいですから 医療機関を受診してみてください。 では、今日はこの辺で。 来年も、みなさまどうぞお元気で。 本田美和子 |
2006-12-22-FRI
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