手紙228 日本のHIV 企業の立場から
こんにちは。
前回は、HIVに感染している方を
今後同僚として受け入れようと考えている会社から
相談を受けたときのことについてお話ししましたが、
今日は、同じような立場から
HIV感染症について考えてみた、とお送りいただいた
メールを紹介いたします。
|
|
わたしは企業で品質保証担当の仕事をしています。
2月のライフプランニングセンターでの
講演を拝聴しました。
一番印象に残っているのは、
HIV感染者が特別な存在ではなく、
ある程度人数が集まっている組織には
ほぼ必ず存在しているということで、
これに衝撃を覚えました。
そうであるならば、
企業として、感染者に対して
きちんと向き合う必要性があることを
認識いたしました。
一部には、病気に対して
差別や偏見を持っている方もいるので、
そういう人たちへ、教育というと大げさですが、
とにかく知らせる必要性があることは
間違いありません。
その内容に、工場では事故がつき物ですから、
医療従事者の方には常識である、
スタンダードプリコーションを
項目として入れる必要があるのかは、
検討の余地があると思います。
産業医との連携が一番の近道でしょうか。
品質保証という観点からは不具合や問題に対して
源流管理という考え方があります。
それを医療に当てはめると、
まさしく予防ということになります。
このあたりで企業でも
何か出来ることが無いかと思っております。
感染していても普通に業務を行っている方への対応は
通院などの配慮があれば十分で、
周囲への感染に対する配慮は特別必要ないことは
頭では解っていたつもりですが、
やはりHIV感染者と向き合っていらっしゃる
先生のお話を聞かせていただいたおかげで、
すっと腑に落ちて行きました。
病気をマネジメントさえ出来れば業務に支障がなく、
能力を十分に発揮することが出来るのに、
病気であるというだけで
差別されている現実があります。
うつや糖尿ですら、
採用時に業務遂行能力でなく、
身体の状態ではねてしまうことは、
人材活用の点で非常に大きな損失を
生み出しています。
無知や無関心が差別や偏見を
生み出しているといえます。
私自身がHIVを理解して対応していくだけでなく、
どのように周囲へその理解と対応を広げていくのか、
非常に難しい問題・課題であります。
HIV感染が経済的な面などで、
大きな社会問題であることを認識いたしました。
医療従事者ではないので、
自分に出来ることは非常に小さいとは思いますが、
何かしないといけないと思っています。
吉冨 |
日本でHIV感染症が語られるのにあたっては、
患者さんご自身からの発言が
とても大切であることはもちろんですが、
それだけでなく、
「現時点ではHIV感染症についての問題とは、
一見、無縁」
と思われるような立場の方が
「もしかすると、
全く無縁ってわけでもないかもしれないね」
と考え、発言してくださる機会が増えてくればいいなと
常々思っています。
そんな折りに、このようなメールをいただいて
とてもうれしかったので
今日はご紹介いたしました。
次回は吉冨さんが触れていらっしゃる、
HIV感染が抱える、医療経済についての問題を
ご紹介してみようと思います。
では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。
本田美和子 |