お医者さんと患者さん。 「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。 |
手紙230 日本のHIV レベッカ・ブラウンと柴田元幸先生(2) こんにちは。 前回は作家のレベッカ・ブラウンの作品 「体の贈り物」を読んで感銘を受けた、 という話をいたしましたが、 今日はその続きです。 礼状をお送りした柴田元幸先生は 思いがけずお返事をくださり、 「もしよかったら、これもどうぞ」と 「家庭の医学」という彼女の作品を 送ってくださいました。 柴田先生のご親切に 深く感謝しながら読み始めた「家庭の医学」は、 わたしのこれまでの経験と、作品と、 自分が望む未来との重なりとを しみじみと考えずにはおれない、 とても不思議な気持ちになるお話でした。 この話は、小説ではなく、 彼女のお母さまが体調不良を自覚して その原因ががんであることがわかり、 病気と共にお過ごしになっていく様子を とても温かく、しかし冷静に 介護する娘の立場から綴ったノンフィクションです。 お母さまの治療は 激しい副作用を伴う抗がん剤によるものから、 次第に痛みを除くことを主眼とする 緩和治療へと移行していきます。 お母さまのご様子や病気の進行だけでなく 看取る家族の心情や その後に遺された家族の暮らしなどが 淡々と描かれていて、 ブラウン家の家族それぞれに 自分を重ねて読んでしまう、すばらしい本でした。 「体の贈り物」も「家庭の医学」も、 ごくごく細かい描写や言い回しに、 実際に経験した人が、「本当にそうだよね」と うなずかずにはおれない質感が常に伴っていて、 わたしはレベッカ・ブラウンのことが 本当に好きになりました。 その後も、折りあるごとに どちらかを取り出して、一章だけ読む、 という読み方を わたしは楽しんでいました。 レベッカ・ブラウンの作品を知って 2年近くたった今年、 医療に関する集まりが 5月にシアトルで開催されることになり、 わたしは自分の小さな調査の結果を 発表しに行くことになっていました。 「今度シアトルに行くの」と 夕食を食べながら たまたま知人に話したとき、 彼は「シアトルって、 レベッカ・ブラウンの住む街だね」と 教えてくれました。 どうしてそんなことを その人が知っていたのか、 そもそも、どうして レベッカ・ブラウンの話が唐突に出たのか 本当に不思議なのですが、 ともかく、今度わたしが行く街に 彼女がお住まいである、ということがわかりました。 それから数日考えた後、 思い切って柴田先生に相談してみました。 「柴田先生、もしよろしければ レベッカ・ブラウンさんを ご紹介いただけないでしょうか。」 わたしは彼女の作品を通じて 多くのことを学んでいましたし、 「健康について、お伝えしたいことがある」 というわたしのかねてからの願いを 文学の場で確実に実現している彼女には、 個人的にお伺いしたいことが山ほどありました。 わたしの願いを 柴田先生は「お安いご用ですよ」と、 かなえてくださいました。 差出人:Rebecca Brownと記された メールが届いたときの心弾むうれしさを 言葉にするのはなかなかむずかしいです。 わたしはシアトルに到着した日に レベッカ・ブラウンさんと 彼女のパートナー、クリスさんと一緒に 夕食をとることになりました。 では、今日はこの辺で。 みなさま、どうぞお元気で。 本田美和子 |
2007-06-29-FRI
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