PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙237 日本のHIV
世界初のHIV治療薬を生み出した日本人・
満屋裕明先生(1)



こんにちは。

このところ、どなたと話していても
ついHIV感染症の話になってしまうので
気をつけなきゃ、と思っていたのですが、
先週遊びに行ったオランダで
宿のおじさんと話をしているうちに
オランダの医療制度の話になってしまい、
最後には、うっかり
「で、オランダのHIVって
どんな感じなのですか?」と
伺ってしまいました。

オランダは他のヨーロッパの国々と比べて
HIVに感染している人の割合は
とびぬけて低い国なのですが、
宿のおじさんは、
「15年くらい前は
毎週のように誰かが死んで
お葬式に行っていたんだけれど、
AZTって薬が使われるようになって、変わったねえ。
みんな薬を飲んで元気になったよ。」
としみじみ話してくれました。

AZTというのはHIVの治療薬として
世界で初めて認可されたくすりです。
商品名はレトロビルといいます。

ごくごく普通のおじさんの口から
AZTというくすりの名前を聞いて、
わたしもしみじみしました。

トム・ハンクスが
HIVに感染した弁護士を演じた
映画「フィラデルフィア」でも、
米国のブロードウェーで上演されて
映画にもなった「RENT」でも、
HIVの治療薬・AZTは
希望の象徴として描かれていました。

ですから、このくすりの名前に
聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。

このくすりの開発ぬきにして
現在のHIV治療を語ることはできません。
何より、1987年に米国で認可されて
2007年の今日にいたるまで、
このくすりはさまざまな治療ガイドラインで
「おすすめの治療薬」
のひとつであり続けています。

このAZTを開発したのは
長崎生まれの医師、満屋裕明先生です。

満屋先生のお仕事によって、
これまでに信じられないほどたくさんの
HIVに感染している人の命が救われてきました。

さらにすごいのは、
満屋先生はその後も一貫して
HIVに関する新薬の開発を
続けていらっしゃることです。

昨年米国では満屋先生の4つ目の
HIV治療薬が認可され、
日本での発売ももうすぐです。

また、その次の薬の開発も
先生の研究室で現在進行中です。

「人類に貢献」というのは
きっと先生のお仕事のようなことを
言うんだろうなあと思います。

ほぼ日をお読みの方々にも
ぜひ、
世界初のHIV治療薬を生み、
今も最先端の研究を続けていらっしゃる
満屋先生のことをご紹介したくなりました。

満屋先生も「いいですよ」と
おっしゃってくださったので、
次回から、先生のお仕事について
ご紹介いたします。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2007-09-14-FRI

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