お医者さんと患者さん。 「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。 |
手紙258 小冊子「私にとっての地下鉄サリン事件」 こんにちは。 前回は サンスター社のサイトで インタビューを受けることになって、 米国での経験についての質問を受けたときに ニューヨークの911のテロのことをお話しした、 ということをご紹介しましたが、 今日はその続きです。 テロの当日はもちろん、 ニューヨークは大混乱で、 しかも、自分の中にむくむくと 何と形容してよいかわからない漠然とした不安感が 湧いてくるのを止めることもできないまま、 ともかく、自分のいつもの仕事を進め、 午後は往診へでかけました。 その時どこにいたのか、に関わらず、 多くの人にいろいろな思いを 抱かせることになってしまったあの事件は、 わたしにとっては 都市型のテロに遭遇したときに 医療機関が何をすべきか、ということについて 体を動かしながら考える機会となりました。 わたしは 東京で地下鉄サリン事件が起きたとき、 被害者を受け入れた病院で働いていたので、 たまたま二つの大きなテロを 病院で働く者の立場から経験することになりました。 そして、二つ目のテロがニューヨークで起こったとき、 一つ目の東京でのテロの教訓が 見事に生かされていることを体験し、 そのとき考えたこと、感じたことは、 わたしの体に今でも染みこんでいます。 そのことについて話したことのある友人が、 一昨年の暮れに連絡をくれました。 「地下鉄サリン事件の被害者の会が 犠牲者の13回忌を迎えるのにあたって、 手記集を作ることになったの」 「その手記集では、 直接事件に巻き込まれることのなかった人にも “あのとき、何をしていたか”ということを 書いてもらえたら、と 被害者の会代表の高橋さんはおっしゃってます」 「以前話してた二つのテロの経験、 もしかしたら、その趣旨に合うんじゃないか と思ってメールしました」 「もしよかったら、高橋さんに連絡してみて」 その友人は通っていた米国の大学院の 課外授業を通して、 被害者の会代表の高橋シズヱさんと知り合い、 その後も折に触れて連絡をとっていました。 高橋さんとわたしは 何度かメールのやりとりを重ねました。 そして、地下鉄サリン事件が起きてから 12年後の2007年3月20日に 『私にとっての地下鉄サリン事件』という 小冊子が出版されました。 この小冊子には 54人の文章が集められています。 中でも、 「本当に知りたかったこと」というタイトルで 小説家の村上春樹さんが お寄せになっている文章は、 深い水に石が沈んでいくのを 上からのぞいているような静けさの中に、 村上さんがこの事件に取り組んで 「アンダーグラウンド」をお書きになったときの どっしりとした決意が響くすばらしいものです。 ぜひ、多くの方に読んでいただければ、と思います。 この小冊子は、 地下鉄サリン事件被害者の会が 無料で配布しています。 ご希望の方は 高橋シズヱさんにメールでご連絡ください。 小冊子についての宛先は sharpsmile5@hotmail.co.jp です。 メールでのやりとりはあったものの、 高橋さんに実際にお目にかかる機会は これまでありませんでした。 今月、ようやく ゆっくりお話しすることができたのですが、 明るくて、思いやり深く、飾らないそのお人柄に わたしは魅了されました。 そのときにお伺いしたお話を ほぼ日でぜひご紹介したいと思っているのですが、 その前に、次回はその小冊子に載せていただいた わたしの経験をご紹介したく思います。 では、今日はこの辺で。 みなさま、どうぞお元気で。 本田美和子 |
2008-04-25-FRI
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