PHILADELPHIA
お医者さんと患者さん。
「遥か彼方で働くひとよ」が変わりました。

手紙261 犯罪被害者への支援


こんにちは。

このところ、
地下鉄サリン事件の被害者の会が作成した
小冊子『私にとっての地下鉄サリン事件』について
ご紹介しています。

わたしはこの小冊子を通じて、
被害者の会代表の
高橋シズヱさんと知り合う機会を得ました。

前回もご紹介しましたように、
高橋さんは、
地下鉄サリン事件でご主人が殉職なさったことで
突然、犯罪被害者のひとりとなり、
信じられないほどたくさんのできごとを
経験することになりました。

もちろん、
地下鉄サリン事件に関する訴訟が
その中心であったことは間違いないのですが、
それだけにとどまらず、
今日までさまざまな分野での
ご活動を重ねていらっしゃいます。

その代表的なものが、
「犯罪被害者への支援」に関する活動です。

ごく普通の生活をしていた人が、
いきなり、理不尽なできごとに遭遇し、
身体的、精神的、経済的なダメージを受けたとき、
その状況に対して
国が救いの手をさしのべる制度、というものが、
日本は十分に整っているとは、まだ言えません。

高橋さんは、ご自分で少しずつ
その分野の道を開いてきていらっしゃいます。

そのネットワークは、日本国内にとどまらず
海外にも広がっています。

先日お目にかかったときには、
ニューヨークの同時多発テロの被害者の方との
出会いのお話をしてくださいました。

そのようなご経験を
日本の制度制定のために生かせるように働きかけたり、
また、『報道被害』とも言えるような
扱いを受けたメディアに対して、
犯罪報道に関する被害者からの発言を続けるなど、
現在の高橋さんのご活動は、
単に「地下鉄サリン事件の被害者」ではなく、
そこから一歩一歩踏み出し、
「それから、どうしたか」ということを
わたしたちに、はっきりと示してくださっています。

前回ご紹介した、高橋さんのご著書
「ここにいること:地下鉄サリン事件の遺族として」には
その歩みがご本人の迷う気持ちも含めて示されています。
ぜひ、多くの方に手に取っていただきたいな、と思います。

この本にはとてもたくさんのエピソードが
ちりばめられています。

中でも、一番わたしの心に染みたのは、
犯罪被害者に関する研修を受けに米国に行った際に
殺人事件の遺族である父親が、
一枚の紙をくしゃくしゃに丸めて、
その後、それを少しずつ広げて
「これが、わたしの心の状態です」と
おっしゃった、というお話でした。

一度くしゃくしゃになった紙は、
どんなにのばしても、そのシワは残ります。
それと同じように
被害者の心にはいつまでも傷が残るのだ、という
その父親の言葉の重みを深く感じました。

地下鉄サリン事件被害者の会は、
事件から13年経った今も活動を続けています。
小冊子を手に入れてくださった方々、
本当にありがとうございました。

「ここにいること」の帯に寄せられた
村上春樹さんの言葉の通り、
わたしたちがこの事件を忘れずにいる、ということが、
何よりも大切なのだと思います。

もし、被害者の会への支援を
お考えの方がいらっしゃいましたら、
ありがたくお受けになるそうです。

宛先は、
東京三菱UFJ銀行 虎ノ門支店
普通預金 2321027
「地下鉄サリン被害者の会」
です。

では、今日はこの辺で。
みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2008-05-16-FRI

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