第3回 「続いている」チームと、「続かなかった」チーム。

田中さんと杉田さんのふたりが参加した
奈良ブランド開発支援事業のテーマは、
「ヒット商品を目指すのではなく、
 つくり手と使い手双方が愛着を感じる
 ロングセラーを目指すモノづくり」
というもの。
ふたりは、この事業を通じて
一緒に学んだ異業種の方々と、
2010年、自分たちの想いを伝える場として
新宿のリビングデザインセンターozoneで行われた
「TEIBAN展(奈良のモノづくり展)」に参加しました。

「はじめてお客さまと出会って、
 直接お話できたときの喜びときたら!
 ずっと B to B をやってきましたから、
 味わったことのない感激でした。
 自分たちが『いい』と思うものと、
 お客さまが『いい』と思うものが
 ピッタリとあった瞬間はわかりますし、
 私たちのスピード感とか、
 みなさんのニーズにこたえられているかどうかとか、
 モノを通じて伝えたい想いや共感にずれがないかなど、
 店頭に立つと、一番、手にとるようにわかりました」

TEIBAN展はその後も続き、
地域の特色のあるブランドを育てる
独自な活動ということで、
2012年と2013年、
2年連続でグッドデザイン賞を受賞しました。

それもあって会議に参加する方も増えてきましたが、
ふたりのように「続いている」チームと、
「続かなかった」チームとがありました。
「流行るもののつくり方を教えてもらえるんだろうか」
「利益の伸ばし方を教えてもらえるんだろうか」
と思っていた方は、続かなかったそうです。

「自分が忙しいときでもみんなの手助けをすっとできたり、
 ほかのお店の店頭に立って商品紹介できるような、
 役割や立場を越えられる方たちが残っています。
 TEIBAN展はチームをつくろうと
 はじめたわけではないですが、
 いいチームワークができていると思います」

「『Ponte de pie!(ポンテ・デ・ピエ!)』とは、
 スペイン語で「立って!」という意味の言葉で、
 当初は、下請けからの自立をめざす!
 子育てが一段落した私たち主婦も
 がんばって自立しよう! 
 という気持ちが強かったです。
 ブランドを意識しすぎて、
 杉田とふたりで、
 『ポンテらしいってなんやろう?』
 『この色の靴下は、ポンテなのかなあ?』とか
 『私たちさ、ポンテやってて、この洋服を着てていい?』とか。
 今、思うと本当にしょうもないけど、
 悩んでいた時期もありました」

それがお客さまと直接お話しをするようになってから、
次第に「この方向は違うね」「これはいいね」と、
やりたいことや、あってないことを
自然に選択できるようになっていきます。
ふたりとこのブランドはイコールではない。
このポンテというブランドを
お客さまと一緒に育てていくんだ、
と思うようになったことが大きかったたそう。

「少し、こう、距離がとれたというか。
 ポンテというブランドは
 もっとお客さまとコアにつながっていって、
 その先にあるものをつくっていくんだ、と気がついてからは、
 自分たちも少し楽に、のびのびできるようになりました」

そうですよ! きつい靴下は、いやですもんね。
人と人との関係も、ふたりのつくる靴下のように、
ゆったり、けれどもじょうぶなものであってほしいです。

▲のどかな田園のなかにあるポンテのお店は、行きにくいところにありますが、
日本各地からお客さまが訪れます。お客さまがお名前と一言メッセージを書いた
寄せ書きボードがありました。

「TEIBAN展ではじめてお客さまの前に立ってから4年。
 お客さまとの交流があるから
 やってこれていると思います。
 ポンテは、柄がとてもおしゃれ、とか、
 そんなブランドではありませんが、
 しっかりと自分の足で立って、
 輝きたいと思っている方の、
 いつもそばにそっとあるような、
 そんな存在になりたいです」