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HAL研究所で、名物のようにやっていた
社員ひとりひとりとの面談は、基本的には、
岩田さんひとりと、相手ひとりなんですか?。 |
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最初の面談はそうでした。
半年に一度というのを確立したときには
現社長の谷村くんが一緒で、
その部署の管理者が同席することもありました。
面談のなかで
わたしはすごくたくさんしゃべります。
いろんな角度から質問をします。
逆にいうと、質問攻めにしないと、
ほんとうに考えていることが
ききだせなかったりしますから。 |
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情報を得るだけじゃなくて、
与えるということもたくさんするわけですね。 |
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だけど、話しあうテーマは全員ちがうんです。
話しあうプログラムのなかでは、
そのときにやっていた方法では、
唯一決まっているのが
「あなたはいまハッピーですか?」
という最初の質問でした。
わたしはもともと企業理念などと
おこがましいことを
いうつもりはありませんでした。ただ
「会社とはある共通の目的を持って
みんながそれを分担して、
力を合わせるための場所だから、
共通の目的は決めたほうがいい」
と最初に面談したあとに考えたんですね。
それで
「商品作りを通して、
作り手であるわれわれと
遊び手であるお客さんを、
共にハッピーにするのが
HAL研の目的だと決めよう」
といったんです。
そう宣言したんだから
「あなたはハッピーですか?」
ときくのは文脈にあっているんです。
で、そうしてきくとですね……
まぁ、いろいろなんです。
「毎日会社に来るのが
たのしくて仕方ありません」
という人もいれば
「誰々さんとうまくいかなくて」
「自分に限界を感じて」とか、
いろんな例が出てくるわけですね。
ハッピーな人はすぐに面談が終わるんですよ。 |
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そうか、問題を解決する必要が、
今はないということですもんね。 |
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それで、すごい人になると、
メモをこう十項目ぐらい書いてきて……
半年に一回はなにをいっても
ぜんぶきいてもらって、
なにかいってくれるわけですから。 |
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(笑)何層にもアンハッピーが
重なってるっていうケースはありますよね? |
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あるんです。
そういうときは、ほぐして見せるんです。
「その問題は、
そう考えても解決せぇへんで」
みたいな話になりまして。 |
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そこは、コンピュータの
プログラマーだった部分が役に立ちますね。
階層にわけるわけでしょう? |
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問題を単純化してほぐすことには、
プログラムの経験っていうのが
ものすごい役に立っているんです。 |
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誰もがマネできないという部分が、
どうもそこにありそうですね。
こういう話をきいたからって、
一生懸命に面談さえやっていれば
いいかというと、そうではなくて……。 |
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世の中のことって
だいたいは複雑じゃないですか。
複雑なことに対して
仮説を立てて考えていこうとしたら、
絶対に人は単純化するわけです。
分析とはものごとを要素にわけて分解して、
そのなかで
「こうすればこれは説明がつくよね」
という仮説を立てることですから、
わたしだけでなく
みんながやっていることなんです。
だからプログラマーの特権ではないと思います。
ただ、プログラマーは
それを毎日やっていますので、
いくつも仮説を立てては
頭のなかで比べる訓練はすごくしています。
毎日筋トレをしている、
という程度の自負はあるんです。
トライアンドエラーの回数は多いですから。
プログラムをする人が
みんなそうしているのかどうかは
知りませんけど、わたしはそうしているんです。 |
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面談する相手は、
プログラムをしている人もいれば、
受付している人もいていろいろでしょうし、
その面談というものを
どうとらえているのかもいろいろですよね。
その時には、
その「いろいろ」のほうに、
岩田さんは合わせるようにするんでしょうか。 |
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そうです。
相手との間に理解と共感がないなら、
面談をやる意味はないですもん。 |
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「わたしの不満を
岩田社長にきいてもらえる最高の機会だ」
と、毎日手ぐすね引いて待っている人だって
いるかもしれないでしょう。 |
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ええ。
その不満はそれはそれできくんです。
でもわたしは、わたしのいいたいことも
ちゃんといっているんです、そのあいだに。 |
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ただきくだけじゃ、
だって、つらいじゃないですか。 |
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ただ、すくなくとも
不満を持っている相手なら、
不満がたまっていればたまっているほど、
きかないとこちらのいうことは
入らないですよね。
なにかをいおうとしたのに
クチをさえぎられて
「それはこうだよ」といったら、
「あぁ、この人は
なんにもわかってくれない」
と思ってあたりまえですよね。
ちいさいころのわたしは病弱で喘息持ちで、
転校したあとに
いじめられっ子だったことがありまして、
そういうときに
弱者の立場をけっこう経験しているんです。
たまたま入った会社もちいさかったですから、
おおきな会社とかに対しては弱い立場ですよね。
そういう弱者の立場というのを
自分が経験できたことは
すごくよかったと思うんです。
いまはいちおう
「そうじゃない立場」
ということになりますよね。
だけどわたしは
そういうところでの経験が
絶対に捨てられないし、
わたしは昔にたいへんだったことに対して
うらみを晴らすという気持ちが
ほんとにないんですね。 |
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はい。
岩田さんと長くつきあっている人が、
みんなそう思っていることですよ。 |
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人が相手のいうことを
受けいれてみようと思うかどうかの判断は
「相手がトクになるからそういっているか」
「相手が心から
それをいいと思っていっているか」の、
どちらと思ってきかれているかが
すべてだと思うんですね。
「私心というものを、
どれだけちゃんとなくせるのかが、
マネジメントではすごく大事だ」と、
わたしは思っているんです。 |
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戦略的なビジネスのやりかたというのが、
じつはもうとっくに限界にきていて、
「敵をどう壊滅させるか」だとか、
「どういうふうになにを奪いさる」だとか、
そういうふうに
戦いになぞらえるようなことで
うまくいくという時代は、
もうほんとは
とっくに終わっているんじゃないかと
ぼくもよく思うんです。
面談にしても
それを交渉としてとらえる見方が
一般的なんだろうと思うんです。
相手には相手の利害があり、
自分には自分の利害がある……
その利害がぶつかるんだから、
かならず衝突はするけれども、
おたがいに譲りあったところに
最適値を見つけるんだという
発想をするかぎり、
面談というのはほんとに
たいへんなことになっちゃいますよね。
それなら岩田さんだって
そんなに笑いながらはやっていられないし、
相手との信頼関係とかいっている場合では
なくなるんですね。
だけど岩田さんはいま、
利害関係の話をいっさいせずに
面談の話をしてきたところがすごいと思う。 |
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わたしには社内の仲間に対しては
利害の発想はないですもん。
もちろんわたしが
ネゴシエーションをしたことが
ないわけでもないですし、ビジネス上、
交渉を不要だという気はありませんが、
こと会社で
おなじ目的を果たす仲間とのあいだで、
それをする必要はないでしょう? |
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それは、岩田さんが、
理論的にも感情的にも
信じきっていることなんでしょうね。 |
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つまりどちらかが
納得いっていないという場合は
あると思うんです。
社と社員とは労使関係にある、
という考えかたもあるでしょうし、
「理屈としては仲間といっしょに
やっていくべきなんだけど、
おまえのいうことはハラが立つ!」
という場合もあるわけです。 |
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おそらく面談のなかでは
ハラが立ったことが
ないはずはないと思うんですが、
「わたしもいいますからね」
とさっきいったところで、
バランスをとっているんでしょうね。 |
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いいたいことはいわせますし……
いいたいことをいった後だったら、
ある程度、入るんですよ、人間って。 |
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最後には、
「そうすかねぇ」
とかいって帰っていったりするんです。 |
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「俺はやめてやる!」
といったわけでもなく面談に来て、
目の前に座っているということだけで、
もうすでに仲間ではあるんですね。 |
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そうなんです。
敵として面談はしていないですから。 |
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