第四回 机の上で考えるだけじゃダメだ。
■頭がダメなら足を使え。
来たで、来たで、来ましたでぇ。
「ほぼ日公式ラーメン」のアイデアに
しっかり煮詰まったサガコ。
大阪の池田市にある
『インスタントラーメン発明記念館』へ出張です。
「インスタントラーメン手作り体験」をやるのです。
小学校の工場見学となにも変わらないような気もするが、
大人だから、きっとここから何かを掴みとるんでしょう。
「頭がダメなら足で稼げ」という
刑事物語みたいな法則が、活きてくるのでしょうか。
ほんとかなぁ、と、やや半信半疑でした。
稼げるのか、私の足・・・・?
さて、しとしとと降る雨の中、
駅から五分ほど歩きます。
落ち着いた住宅街の景色に溶け込むように、
こじんまりと佇む『インスタントラーメン発明記念館』。
玄関先では日清食品大阪本社の広報・桑田さんが
お出迎えして下さいました。
「遠いところを、わざわざすいません」
「どうぞよろしくお願いします!」
![](IMAGES/ramen-001.JPG)
darlingの言ってた運命の人ねっ…て、
ちゃいまんがな〜
早速館内に入り、
手作り体験のできる2Fのイベントホールへ。
一度に36人が手作りできるよう、
機材やテーブルがずらりと並んでいました。
うおー、家庭科室みたいで懐かしいっ。
わくわくしてきましたよっ。
「じゃ、サガコさん、これに着替えて下さいね」
と、用意されたひよこちゃんバンダナと、
真っ赤なエプロンを着用。
手もしっかり洗って、準備オッケー。
気分は、中学校の家庭科です。
「こうやってお客様に直接作っていただくと、
皆さんの意識が変わっちゃうのがおもしろいですね。
普段スーパーなどで
なにげなく見ているチキンラーメンを、
これからは大事に食べます、なんて
言って下さるんですよ。
サガコさんにもそう思っていただけるといいなぁ」
桑田さんはにこにこしながらおっしゃいました。
そんなに意識って変わるものかしら?と
足で稼げ、というより、せ、洗脳??
作っているうちに?
■自分で作ると、なぜ大事なものになるんだろう?
担当のお兄さんの指示に従いながら、
まずは小麦粉と練り水を混ぜて、練ります。
総重量は約二百グラムで、チキンラーメン二コ分です。
![](IMAGES/ramen-002.JPG)
粉から作るんだ!おっ、手打ちな感じ
しかし、ここからが結構力仕事。
「手伝いますねっ」と桑田さんが助太刀。
![](IMAGES/ramen-003.JPG)
頼もしいぜ
生地がまとまったところで、
めん棒で平たく押します。
うーん、こんなものが本当にチキンラーメンに
なるのかなぁ、とちょっと不安な感じ。
ある程度押したら、人力の限界なので、
製麺マシンが登場。
圧をかけて更に生地を伸ばしていきます。
![](IMAGES/ramen-004.JPG)
生地の薄さを計る。厚さ0.7ミリまで伸ばす!
やぶけそう〜
![](IMAGES/ramen-005.JPG)
続いて、にゅるにゅるにゅる〜と麺を切り出す。
ちょっと快感っ
出て来た長い麺を、はさみで二十センチにカット。
更に一コ分の百グラムずつに分けて、
ひとまず蒸し器へ。
ちなみに蒸す前には、
麺を手で「くしゅっ」と、軽く揉む。
これだけで麺にちぢれが出来るんですって!
![](IMAGES/ramen-006.JPG)
蒸してる間にパッケージ作り。
うーん。へたうまなおさる??
麺が蒸し上がったら、熱いうちにボウルにあけて、味付け。
用意された調味液をふりかけて、混ぜる混ぜる。
「サガコさん、味見してみますか?」と
桑田さんに勧められて、一本ちゅるっと、すする。
![](IMAGES/ramen-007.JPG)
蒸してあるので食べても平気
「むー……」
食べられるし、おいしいけれど、なんだか物足りない味。
調味料が足りないのかなぁ。
私が変な顔をしていると、桑田さんが笑いました。
「まだ、お店で買うチキンラーメンの香ばしい味では
ないでしょう?
あの香ばしさって、油で揚げてはじめて出てくるもの
なんですよ。油で揚げて、醤油が焦げて…
それで、あのおいしい香りになるんです」
なるほど。
醤油の焦げた、あのたまらな〜い感じは
油で揚げるから醸し出されるのかー。
さぁ、いよいよ最後の工程、
丸い型に麺を入れて、油で揚げます。
![](IMAGES/ramen-008.JPG)
「蒸し」と「揚げ」は自分でやると危ないので、
お兄さん達がまとめて全員分やって下さるのを
ガラス越しに見学します
じゅわーと音を立てるラーメンを待つこと数分。
パーム油の中から引き上げられた麺は、
見事な「香ばし色」!!
これは誰がどう見ても、チキンラーメンだーーっ!
めっちゃ嬉しいーっ。
冷めるのを待ってから、袋詰めにして
パチンと封をしたならば、
できたてほやほや、触るとまだほんのりあったかい
「チキンラーメン」の完成でーす!!
インスタントって、誰かがすでに
料理しておいたのを「もどす」ってことなのね。
でき上がった、ほやほや生まれたてチキンラーメン。
食べるのがもったいなくなって、
すぐにお湯をかけて食べよう、という気にはなれず、
大事に持って帰ることにしました。
桑田さんは
「サガコさん、どうです?
インスタントラーメンに対する気持ち、変わりました?」
とにこにこ。
うーん、洗脳じゃなかった…。
愛情?ってのもヘンだなぁ。
インスタントなんだからきっとお手軽に作れるさ、なんて
思っていたら大間違いだったんです。
そのあたりの気持ちの変化がありました。
「足で稼げ」って、
こういう気持ちの変化のこともあるんだなぁ。
■人間どうしのつきあいと、似ているのかあ。
さて、手作りが一段落したところで
「じゃあ、展示の方を見学しましょうか。
チキンラーメンがどうやって誕生したのか、とか、
カップヌードルの秘密とか、いろいろ分かると思います」
桑田さんに案内されて、
ゆっくりと一階の展示室を見て回ることにしました。
日清食品の歴史年表や、
カップヌードル発売までの歩みなど、
展示室をぐるりと見学しながら、
サガコはぼーっと考えておりました。
自分で一から作ったチキンラーメンは
こんなに大事に思うのに、
お店に並んでるチキンラーメンは、
ただの一個の商品としてクールに見ていたなぁ。
このへんの違いって、なんかあるな。
知れば知るほど、好きになるのか・・・・・。
「知る」「理解しあう」ことで、
その人のいいところや悪いところが、たくさん発見される。
そうやって、つき合いが深まっていく。
人間と人間の関係と、人間と商品の関係もおなじだ。
よくわからないままのことばかりだけれど、
ここに来てよかったような気がし始めた。
パソコンの画面を見つめながら、
「アイディア、でないなぁ」なんて、
長い時間を費やしていても、
なかなか思いつきにくいような「温度」のあることを、
私は考えるようになっていたみたい。
これが、「足で稼ぐ」ことだったのかなぁ。
「ほぼ日公式ラーメン」は、
<魅力的な人間のように魅力的!>でなければならない。
わーーお。
約半日お世話になった桑田さんに、
なんだか必要以上にぺこぺこと頭を下げて、
自分が作ったチキンラーメンが割れないように
気をつけながら、私はその場に別れを告げたのであった。
気持ちはちょっと決意を固めた二枚目な感じであった。
ちっとも中学の家庭科の時間みたいじゃなかった。
腹も減っていたが。
(次回につづくのであった)
→「インスタントラーメン発明記念館」については
こちらのサイトをどうぞ。
http://www.nissin-noodles.com/
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