ROBO
風前の灯火。

10人目 ウエハラ・ジュンさんの家(1999.2.1〜)

ホストのコメント
心配させてしまって申し訳ありません。
ロボット君は、元気です。
つたない文章ですが、6月27日の結婚(八芳園)を控え、
ちょっとプライベートっぽっく書かせていただきました。

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2月1日(月)晴れ
「ロボット君モンモン記」

今日、ボクは、新しい友人である
ジュンの家にお世話になることにした。
ヤマモト・ウチュウ(宇宙)さん曰く、
「ゲームソフト、CD、雑誌満載、フィギュアも
盛りだくさんのオシャレなマンションの住人」
というのでワクワクしたが、行ってがっかり。
ゴミタメのように汚い家だ!
しかも、見慣れない女人が一名待っていた。
名前は佐藤千絵。
なにやら、帝国ホテル4階の高級ブティック
「ニコル・ミラー」の看板娘というではないか?
『このウエハラ、なかなか侮れんな』と感心しながらも、
自分の行く末がゴミタメかとちょっと心配。

「ブサイク〜ッ。でもかわいいね!」
と文句を言われながらも、千絵とチェキ。
フラッシュがべったりついてしまうインスタントカメラ
なので、不機嫌な顔がもっと光ってしまった。
バタッ。バタ、バタ、バタン。
ちぇっ。千絵のヤツいきなりボクを床に落しやがった。
「ゴメンゴメン。はい、お客様こちらへどーぞ」と、
彼女は僕をブルーの高級そうなソファーに座らせてくれた。
『ふうっ。やれやれ。
しばらく、二人を観察することにしよう』。

ジュンはパジャマに着替え、xiを開始。
エンドレスモードで格闘。
千絵は、キッチンでサンドウィッチを作っている。
手つきが慣れていないところを見ると素人だろう。
「あー疲れた。紅茶でも飲もっ」と
ひと仕事終えた千絵が近づいてきた。
「客人にもなんか出してくれよな。女でもいいぞ。
……ちょっと待てよ、おい、おいっ、おいーーーぃ」
ボクを大きなお尻でつぶしやがった。
『じょうだんじゃねえ〜』と怒りつつも、
ちょっと気持ち良かったりする自分が悲しい。
「ごめんごめん。痛かった?」と言いながら、
千絵はボクで遊びだした。さんざん弄ばれた挙句、
「明日も遊んであげるね」と千絵と一緒にベッドイン。
モンモンとして、今夜は眠れそうにない。
ジュンは、延々とxiをやり続けている。

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2月2日(火)晴れ
「ロボット君の“心の記憶”」

最悪だ! 一睡もできなかった。明け方近く
ジュンがベッドに入ってくるやいなやの大イビキ。
皮下脂肪に覆われたカラダのせいか、
毛布、布団をばたばたとはぎ、大暴れ。
ビクビクしながら枕の下に避難。千絵を覗くと
大口を開けながらよだれを流している。
『どっちもどっち。けっこう、お似合いかも。
でも、子供はいい迷惑だろうなあ』と、
うとうと考えていたら目覚し時計の大音響。
『うるさーいっ。と思わず叫びたくなったが
ボクには口がない』。
10分後、千絵が起きてシャワーへ。
一緒に入りたいけどサビちゃいそうなのでがまんした。
「千絵。ロボット君預けるよ」
めんどうくさがり屋ジュンの声。
『どーせお荷物さっ』と思いながら千絵とブティックへ。

「かわいい〜!」といきなり黄色い声の大歓迎。
千絵の仕事仲間は、みんな美人でやさしい人ばかりだ。
ボクはフィッティングルームのすみに座らせてもらった。
なんだか不安。
カーテン越しにお客さんが見える。
『あっ、古内東子さんだ。隣にいるのは、城さん。
何やら、取り置きの商品を試着するようだ』
フィッティングルームで、
至福の時があっという間に過ぎていった。
時間なんか止まってしまえばいいのに……。
いやいや。ボクはロボット時計。
時を刻みながら人から人へと旅する「渡りロボット」。
千絵とも、近々、お別れの運命。
物理的に過ぎていく時間の中で、
大切な「心の記憶」も刻んでおくことにしよう。

1999-02-04-THU

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