ROBO
風前の灯火。

16人目 サカイさんの家(1999.2.25〜)

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2月25日(木)
日本で会ったみなさん、お元気ですか?
僕は今、南の島でバカンスを漫喫しています。
そちらはまだ寒いのでしょうね。
ここは最高です。
今まで見たこともないような碧い空、
どこまでも透きとおった海、
キラキラ輝く水面にイルカの群れ、
隣りにはピニャ・コラーダを僕に持ってきてくれた
ビキニのお姉さん。
生まれて初めて浴びる灼熱の太陽が
僕の金属の身体に反射する。
あー!!! 眩しい! 眩しーーーい!!!
あーーーーーっ!!!
ん?
ここはどこだ? 男の人が僕を覗き込んでる。
なんだ、夢か。
長い間暗い中に閉じこめられてたから眩しかったんだ。
というわけで僕は今日から、サカイさんのところで
お世話になることになりました。
皆さんにはご心配をおかけしましたが、僕は元気です。
でもサカイさんは今マックの調子が悪くて
ネットに繋げないらしく、とりあえず
ポケットボードで僕の無事を報告してくれました。

1999-02-27-SAT

16人目 サカイさんの家(つづき)

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2月26日(金)
サカイさんはよく寝る人だ。
昨夜12時前に布団に入ったくせに
正午近くまで寝ていたぞ。
寝ぼけまなこで残り物の牛丼を
モソモソ食べていたかと思うと、慌てて身支度を始めて
あやうく僕を家に置き去りにするところだった。

サカイさんの自宅のある田無という駅から電車に揺られて、
東中野にある劇団の事務所に連れていってもらった。
事務所の壁に貼ってある劇団員の人の写真を見る限り、
こないだお世話になった、
13人目のヤマモトハルカさんちの劇団とは
随分ずいぶん雰囲気が違うようだ。
でもサカイさんは去年のヤマモトさんとこの旗揚げ公演に
客演してて、ヤマモトさんとはマブダチなんだって。
本当か?
「やよいちゃん(14人目)も以前ここにいたことが
あるんだよ」とサカイさんが教えてくれた。
「なんでここをやめちゃったの?」と僕がきくと、
「おとなの世界には色んな事情があるのさ」
とワケのわからないことをいっていた。

劇団の用事やオーディションの対応などで
電話をしたり原稿を書いたりしたあと、夕方からは
アルバイトをしているとかで、渋谷に連れていかれた。
でもそのあとは鞄の中に放っておかれて、次にサカイさんの
顔を見たのは翌朝の帰りの電車の中だった。
いったい何のアルバイトをしているのやら・・・。
着替えで鞄が開いた時に一瞬盗み見たお店の中には
ブラックライトが・・・、まあいいや。

サカイさんは次の僕の行き先をもう決めているらしい。
どんな人かな、ワクワク。
結局眠りについたのは朝の9時だった。

1999-03-02-TUE

16人目 サカイさんの家(つづき)

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2月27日(土) 

今日サカイさんは昨日のおわびだと言って
お芝居を観に大塚まで連れていってくれた。
なんでもサカイさんのいる劇団の後輩の
とみちゃんが客演しているのだそうだ。

アメリカの劇作家が書いたそのお芝居は、
はっきり言ってお話は面白かった。
原爆が落ちた広島で、自らも被爆したアメリカ人兵士の
その後の人生についての話だ。
ややこしいことはよく分からないけど、
サカイさんは芝居が新劇ちっくでリアルじゃないといって、
年配の俳優さんの演技にケチをつけていた。

お芝居が終わったあと、とみちゃんと
劇団の後輩の人達と一緒に大塚の養老の滝
という居酒屋に連れていってもらった。
この人達は誰もパソコンを持っていなかった。
居酒屋のテーブルの上でみんなの熱い思いを聞いた。
いろんな人生があるんだなあ。

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2月28日(日)

そろそろサカイさんともお別れかなと思っていたけど
時間が合わなくて次の人になかなか会えないそうだ。
暇そうに見えて結構それなりに忙しいらしい。
よく人に会うけどパソコンを持っていない人ばっかりだ。

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3月1日(月)

ロボ(以下R)
「サカイさんは役者さんなのに
どうしてアルバイトをしているの?」
サカイ(以下S)
「喰えないからさ」
R「なんで喰えないの?」
S「売れてないからさ」
R「なんで売れてないんだと思う?」
S「やるべき事全部やってないからさ」
R「なんでやらないの?」
S(ムッ)「・・・だって忙しいんだもん」
R「それは言い訳でしょ」
S(グサッ)
「でも・・・、でもタレント名鑑にはのってるんだぞ!」
R「そーゆー問題じゃないじゃん」
S(グサグサッ)「・・・・・」
R「本業なんだったらもっと努力すれば?」
S(プチッ)
「うるせー!おまえなんか嫌いだー!!出てけ!!!」

ロボット君とケンカしてしまったサカイです。
結局近所に住む20年来の友人の
生島くんに押し付けてしまいました。
ごめんねロボット君、僕がんばるよ。

1999-03-03-WED

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