ROBO 風前の灯火。

1月27日(水)

タイトル:「ロボットくんと新宿の夜景を見る」

「ほぼ日みてる?」
「は? ゼルダの連載終わっちゃったから
最近はみてないっすけど」
「きみは、すばらしい! これをあげよう」
よく分からない会話のあと、
センパイは僕に一方的に
ロボットを渡して去っていきました。

手渡しという条件があるため、
僕のゼルダ関係のメール友達には渡すことができず、
翌日のめどもつかないまま自宅へ。

家のベランダから見える新宿副都心と
東京タワーの夜景を見ながら、
ロボットくんとの一晩を過ごしました。
(この時既に「長い付き合いになりそうだな」
と直感はしていました)

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1月28日(木)

タイトル:「トキキザミ、初めての出張」

会社から「ほぼ日」にアクセス。
ロボットくんの名前「トキキザミ」を知る。
一夜を共にした後で名前を知るというのも、
なんだか新鮮な体験です。

実はこの日から出張で、
何とか飛行機の時間までには次の人を・・
と考えていましたが、あえなく失敗。
トキキザミくんを眺めるうち、
ロボット日記
(トキキザミくんが入っている袋には、
手書きの日記「ロボット日記」も入っているのです)
表紙の「私に旅をさせてください」
という台詞を思い出しました。

こうなったら、連れていってしまおう!
トキキザミくん初めての空の旅。
行き先は九州は博多です。

羽田では金属探知器にしっかり存在をアピールし、
機内ではANAの客室乗務員のおねーさんと
僕との会話をサポートしと、トキキザミくんは大活躍です。
ただ、残念なことにここでも「ほぼ日」読者は発見できず、
結局ホテルまで一緒に来てもらいました。

というわけで、今夜は博多の
ニューオータニ1120号室から、
博多の夜景を見ながらのトキキザミくんとの
2日目の夜を過ごします。

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1月29日(金)

タイトル:「トキキザミ、中州潜入レポート!」

軽い朝食のあと、僕とトキキザミくんは北九州の得意先へ。
プレゼンの席上、彼は僕たちに正確な時刻を伝え続け、
さらに得意先にも「かわいいロボットですね」
と発言させ場を和ませるなど、大活躍!
彼のおかげで商談もうまく進みました。
もう「トキキザミくん」とは呼べません。
「トキキザミさん」と呼ばせていただきます。

その夜は、トキキザミさんの労をねぎらうべく
博多の街へ繰り出しました。
まずはお食事。トキキザミさんは、
ゴマサバがお気に入りのご様子で、
ずっと眺めていらっしゃいました。
※ゴマサバ:九州のサバは生きが良いので、
酢でしめずに刺し身で食べられる。
それをゴマ、醤油、海苔、
ワサビと一緒にかき混ぜて食べる。美味

お食事の後は、いよいよ中州に潜入。
紙媒体、現地人へのヒアリングなど、
1時間半にわたる調査の末、
僕とトキキザミさんは「ゴールドキャッツ」なるお店を
選択しました。
※博多では現在ミュージカル「キャッツ」が
ロングラン公開中で、その公開に時を合わせて
「キャッツ」が開店。
その後あまりにも客が増えすぎたため、
姉妹店「ゴールドキャッツ」をオープンしたとのこと。
初めての夜のお店への来店で、
トキキザミさんはいささか緊張気味に見受けられましたが、
心拍数だけはいつもと変らず、
秒針を動かし続けていました。
さすがに単独での入室は難しいので、
僕が付き添いで入室。
11時55分。
入室したトキキザミさんは、
まず全身をシャワーで洗ってもらいます。
全身を石鹸で洗ってもらった後、
さあこれからというところで・・・事件は起こりました!

トキキザミさんの心臓が止まってしまったのです!

しかも文字盤には、水まで進入しています。
どうやら防水機能はついてなかったようで、
うんともすんとも言いません。

とり返しのつかないことをしてしまった。

僕は、今までこの企画を支えてきてくれたみなさまに
なんといってお詫びをすれば良いのか、
そして何よりトキキザミさんに申し訳なくて、
言葉を失ってしまいました。
しかし、その窮地を救ってくれたのは、
他ならぬゴールドキャッツのおねーさんでした。
「3分以内なら、ドライヤーで乾かせば、なおるっちゃ。
あたしの貸したげるから、やってみや」
かぎりなく民間療法に近い方法ですが、
わらにもすがる思いで、僕はその蘇生術に
かけました。
ドライヤーを手に、表から裏からまんべんなく。
時にはトキキザミさんを握り締め
た左手を大きく振り回しながら、
何とか水分の蒸発を図ります。
5分後。あきらめかけていたその時、
トキキザミさんは・・息を吹き返しました。
僕と、おねーさんは手を取り合って
喜びを分かち合いました。

この命の恩人に、是非トキキザミさんの
身元引受人になっていただきたく、
お話をもちかけたのですが、
残念なことに彼女はパソコンには
今まで触れたことも無いとのこと。
御本人は、「カワイイから持って帰りたい」
という御意向だったのですが、僕は企画の意図、
これからも続けていくことの意味を説明し、最後に、
「トキキザミさんは旅人です。
これからも旅を続け、
いろんな人と会っていろんなことを
経験しなくてはならない、旅人なんです。
その旅が終わるまではひとりの人のものになることは
出来ないんです」
と伝え、何とか了承してもらいました。

別れ際に、「いつでも待ってるから、また会いにきてね。
火曜日と水曜日はお休みだけど」と言ってくれました。

トキキザミさんの旅がいつか終わったら、また来るね。
ナナちゃん。

結局この日もトキキザミさんの新たなる
身元引受人は現れず、
ニューオータニ1120号室で二度目の
夜を迎えることになりました。

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1月30日(土)

タイトル:「トキキザミさん、帰京」

いろんな思い出を胸に、僕たちは九州を後にしました。
昨日の事件の後なので、
トキキザミさんの体調も心配でしたが、
空港でも金属探知器にアピールすることも忘れず、
体調は良好そうです。
帰りはJAL。
ここでも客室乗務員のおねーさま方に接触しましたが、
やはり釣果はゼロ。
今更ながらに、
「ほぼ日」を見ている人の条件のシビアさを痛感します。

羽田到着後、センパイから電話。
「メールが更新されてないけど、どーなってるの!」
ゴメンナサイ。持参したザウルス不調のため、
送れなかったのです。
(このページご覧のみなさまにも、ご迷惑かけております。
もう少し待ってください)

今日は、もう誰とも会わないです。
お土産に買ってきた明太子をつまみにビールを飲みながら、
新宿の夜景をトキキザミさんと眺めました。

「トキキザミさんは旅人。
いつまでも僕と一緒にいてはいけないんだ」
博多のおねーさんに語った言葉が、
自分の胸に突き刺さります。

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1月31日(日)

タイトル:「トキキザミさんとの別れ」

休日出勤。
数人のセンパイの方々に順次企画を説明。
すると、「見たことある、でも良いんだよね。
面白そうだからやらせてよ」
とひとりのセンパイが言ってくれました。

トキキザミさんとの日々が終わる。

何度も望み、一日も早く
次の人を見つけなければと焦っていた僕にとって、
このセンパイの言葉はうれしい反面、
ちょっと切なく感じられてしまいました。

ここで僕と、トキキザミさんのお話はおしまいです。
これからのトキキザミさんの活躍をお祈りいたします。
くれぐれも、水にだけは注意してね。トキキザミさん。

1999-02-01-MON

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