- 糸井
- すっかり「にわかファン」です。よろしくお願いします。
- 中竹
- はい。よろしくお願いします。
- 糸井
- ここにあるのは、ワールドカップを見た僕が
にわかファンとして買ったマイボールなんです。
なにかにハマる時って、どうも形から入ってしまって。
- 中竹
- いえ、だいじなことですよ。
- 糸井
- 形式をだいじにする身としては、
「GILBERT」と書かれたボールがほしかった。
ここで違うメーカーのボールを買ってしまうと、
「お前、なんでラグビー好きになったの?」
という説明もできません。
たとえば、ここに他のメーカーが書いてあると、
「あの2015年のワールドカップでさ」って
言えなくなっちゃいそうで。
- 中竹
- ああ、たしかに先日のワールドカップでは
ギルバートが公式サプライヤーでした。
- 糸井
- いつもギルバートなんですか。
- 中竹
- 毎回そうですね。
最初にラグビーボールを作った会社なので。
- 糸井
- ああ、そうですか。
これはどこにある会社なんですか。
- 中竹
- イギリスですよ。
ラグビーの発祥といわれる、
ラグビー校の目の前にある会社ですね。
- 糸井
- お持ちいただいたのは公式のボールですか。
- 中竹
- ここにあるのは本物ですね。
実際に大会で使われたボールです。
- 糸井
- ああっ、書いてありますね。
「JAPAN」って。
- 中竹
- そうですね。
- 糸井
- ちなみに、ラグビーボールは、
洗って、また使って、ということを
繰り返すものなんですか。
- 中竹
- はい。そういうものですね。
ただ、代表レベルになると、
すぐにボールを取り替えますね。
このボールもちょっと膨らんでいるんですよ。
わかりますか?
- 糸井
- えっ? いやーっ、わからないですね。
‥‥‥‥あっ、でもよく比べてみると
ちょっと丸みがありますね。
- 中竹
- そう、丸みがありますよね。
少しぐらい丸くなっても、
大学生や高校生なら使うんですが、
代表レベルになると持った感覚が違うので、
このぐらい膨らむと新しいボールに替えてしまいます。
練習の時でも、大きさが関係しない練習なら
膨らんだボールでもよくて、
チームのみんなが絡むような練習で
新しいボールを出すというローテーションです。
- 糸井
- パスだとか、蹴るのには影響しますよね。
でも、スクラムで押し合うとかだったら
ボールはどうでもよくなるんでしょうか。
- 中竹
- その時は、もう全然問題ないです。
糸井さんのミニチュアボールでもいいかもしれません。
- 糸井
- これでもいけるんだ(笑)。
要は目印になればいいわけですね。
それにしても、ボールのとんがり具合って、
昔から知っていたつもりでも、
思った以上に、ものすごく鋭角的ですよね。
どこに跳ねるかわからないように思うんだけど、
テレビ中継で試合を見ていると、
まん丸いボールのように自在に扱っているんです。
変なところに跳ねちゃう想像さえしなくて、
選手たちはごく普通に処理できているんですよね。
- 中竹
- それは、そう見えているだけかもしれませんね。
- 糸井
- もちろん、そうなんでしょうね。
どこへ行ってしまうかわからない偶然性を
大いに取り入れるための形をしているにも関わらず、
その偶然性を対処できている人たちが、
あのグラウンドにいるということですね。
- 中竹
- 慣れの問題もありますが、
じつは、蹴り方を変えたりもしているんですよ。
昔は、「スクリューキック」といって、
ボールを蹴ったときに、
きれいな形のまま回転させていたんです。
そうすると、風に乗って飛んでいくんですけど、
風に乗りすぎてしまったり、
回転によって落ちちゃったりもしていたんです。
そこで最近は、ボールの先端を蹴って
バックスピンのような縦回転が主流になりました。
- 糸井
- 回転を変えたんだ。
- 中竹
- まっすぐには飛ばせるんですが、
キック力がないと遠くには飛ばせません。
だから日本人は、あまり縦回転で蹴らなかったんですが、
最近は、五郎丸選手のようにキック力の強い選手が、
縦回転のキックをうまく使うようになりました。
- 糸井
- 縦回転のボールは、
激しく空気にぶつかりながら飛ぶわけですね。
- 中竹
- そういうことです。
そして縦回転でいいのは、
落ちる場所もだいたい前か後ろかなので
わりと予想がつきやすいんです。
- 糸井
- なるほど、横回転がかかっていると
風に流されやすいわけですね。
- 中竹
- そうですね。
蹴り方や投げ方というのは毎年進化していて、
こんなにスキルが進化するスポーツも珍しいのかなと。
- 糸井
- ほんとですよね。だって、横から縦だもん。
- 中竹
- 「基本はこうだよ」と言っていた基本が、
どんどん変わっていくスポーツなんです。
- 糸井
- 誰かが、うまくいくかなと思って試してみたものが、
「どうやら、これがいいらしいぞ」ということで、
チーム全体に浸透していくものなんですか。
- 中竹
- そのチームで影響力のあるコーチとか、
リーダーがこれをやるぞと決めると浸透しますね。
- 糸井
- でも、それがうまく浸透しない場合には
A選手は横に蹴って、B選手は縦に蹴って‥‥。
- 中竹
- はい。好きなようにやっていますね。
- 糸井
- はぁー、そういうものなんですか。
<つづきます>
2016-02-09-TUE