- 糸井
- さて、ラグビーの「にわか論」といえば、
あのワールドカップの影響で
トップリーグのお客さんがいっぱいになると思ったら、
協会の不手際があって客席をいっぱいにできなかった。
- 中竹
- 本当に申し訳ないことです。
- 糸井
- 要するにまだ、運営が下手だっただけだと思うんです。
あそこでうまくやれたら、満席になりましたよね。
- 中竹
- 満席になったでしょうね。
でも、よかったなと思うのは、
お客さんを入れられなかった問題に対して、
選手たちが不満を持っていてくれたことです。
- 糸井
- 選手はえらかった。
- 中竹
- 選手たちが「日本のラグビーが負けた日」と
言ってくれたのが、もう本当に響いたんです。
私も関係者ではありますが、
ここからどう学ぶかが大切ですね。
協会の人たちも、チケッティングの担当も、
要するに、判断を誤ったということですね。
まだまだ対策を練る余地があるので、
自分たちがダメだったとカミングアウトして、
失敗を学びに変えてほしいです。
- 糸井
- うん、うん。
- 中竹
- 日本協会はまだ、瞬時の判断ができていません。
そして今回の失敗で、考える機会も与えてもらえました。
僕たちが学びを得るためには、
プレッシャーを掛けていただける存在が必要です。
いただいたコメントをもとに、
どんどん学びのサイクルを作っていきたいです。
- 糸井
- いいですね。今度は逆に、中竹さんから、
僕に聞いてみたいことってありますか。
- 中竹
- 僕はラグビーに目が慣れすぎちゃって、
試合で何が情報として頭に入ってくるのか、
よくわからなくなっているんですよね。
ワールドカップでラグビーに夢中になった
「ほぼ日」のみなさんが、
はじめて国内でラグビーを見たときの
純粋な感想をもっと聞きたいです。
- 糸井
- はい。わかりました。
まずは、フィールドのとても近くで見ている興奮と、
おなじ風が吹いているんだという、喜び。
あれは、わくわくしました。
そして、「ぶつかっている音が聞こえるよ」と言うけど、
テレビで見るよりも音が小さいのは確かです。
ドーン! と体がぶつかり合うのは感じられるけど、
テレビを見て「ラグビーって格闘技だな」と
思っているときほどの恐ろしさはなくなるんです。
自分と同じフィールドで人間が動いているから、
熱いという感覚もあるし、すこし冷めても見ていられる。
ホットとクールの両方が、極端化した気がしました。
- 中竹
- うん、うん。
- 糸井
- 後はルールについて。
僕たちは大勢で行ったんですが、
ルールをよく知らない人たちがほとんどでした。
それでも十分に楽しめたので、
敏感になりすぎないほうがいいかもしれませんね。
ラグビーでも野球でもサッカーでもバレーボールでも、
よく知らないのに見ている時間って結構ありますから。
- 中竹
- ありますね。
- 糸井
- 「オフザルール」ですね(笑)。
ルールについては、心配しすぎないないほうが
いいような気がします。
- 中竹
- もうまさに、そうだと思いますね。
- 糸井
- あとは、観客は観客で分かれていて、
プロと、セミプロと、アマチュアが
いるような気がするんですね。
- 中竹
- 観客にですか。
- 糸井
- きっと、そこに差はありますね。
たとえばなにかのお店でも、初めて来た人は
そのお店にとってのアマチュアなんです。
僕たち「にわか」が何もわからなくて、
おどおどしているところに、
協会の方々が上手に案内をしてくださったら、
きっと助かるような気がしますね。
僕らが行った時には試合中にハンドマイクを使って
簡単なルール説明をしてくれましたが、
早く来た人には試合前にグラウンドから
説明をしてあげたら嬉しいだろうな。
- 中竹
- 試合前に、予習するわけですね。
- 糸井
- はい。どのくらいの強さでぶつかると効果があるとか、
いろんなお試しができるといいですね。
勉強のように、パンフレットでルールを読むよりも、
きっとたのしいと思うんです。
- 中竹
- エンターテイメントとしての予習で、
ウォーミングアップできるといいですね。
- 糸井
- あと、選手たちが遊びでやっているようなことも、
簡単にはマネできませんよね。
だから、簡単なパスだとか、蹴ってみるだとかを、
アトラクションのように体験できるはずなんです。
モールをつくって押し合いする中に、
ちょっと入ってみると迫力あるだろうな。
お相撲さんたちが地方巡業で
よく子供を持ち上げたりするみたいに、
選手たちの力強さを体感できるといいですね。
- 中竹
- ああ、そうですね!
子供たち向けのラグビー教室はやっていますけど、
試合会場で行う発想はありませんでした。
- 糸井
- 神聖な場所でもあるんでしょうけど、
時間を区切って、教室も何時からやりますと言って、
そこから見た方が楽しいよねっていう噂が広まれば、
きっと楽しくなると思うんですね。
- 中竹
- お客さんも、早めに来てくれますしね。
- 糸井
- あと、グッズみたいなものも、
まだ売る気十分じゃない感じはしましたね。
もう少し、商売っ気があったほうが
ファンとしては安心できるんです。
- 中竹
- 売った場面を見たこともないし、
売れたことがないので、
けっこう満足しているかもしれないですね。
エディー・ジョーンズみたいに、
誰かが「これじゃダメなんだ!」と言ってくれないと、
現状で、そこそこ売れているように感じてしまうんです。
- 糸井
- 全然売れていないと思います(笑)。
- 中竹
- ああ、ありがとうございます。
そう言っていただいた方がうれしいです(笑)。
- 糸井
- 商売っ気を丸出しにして
ちょうどいいぐらいだと思うんですね。
たとえば、国立博物館の
ミュージアムショップが賑わっていますが、
会場以上にみんなの目が生き生きしているんです。
- 中竹
- ほぉー、そうですか。
- 糸井
- お土産を買うときの気持ちって、
場合によっては、展示されている像を見るとき以上に
ワクワクしているものなんです。
「買う」というのは、入場券を買って
観劇したり、観覧すること以上に
参加している感じがするんですよ。
「えっ! 買って帰れるものがないの」というのは、
じつはみんな、がっかりするんです。
ですから、うるさいぐらいでよくて、
「新しいアイテムが今日から新発売でーす!」って
売ってくれたら、いらないはずのボールも
買って帰ると思いますね(笑)。
- 中竹
- ああ、その発想はないですね。新鮮です。
- 糸井
- あとは、会場での食べものですが、
冬の食べものというのは、難しいですね。
冬の奥の手といえば温かいものだけど、
つい奥の手にばかり頼っちゃいそうです。
色とりどりの弁当を作っても寒いだろうし、
このハンデをどう利用していくかですね。
- 中竹
- うーん、そうですね。
- 糸井
- たとえば大芋煮大会とかやってみたり。
山形でやっている芋煮って、
大きな鍋でやっていますよね。
「ラグビー鍋」を考えたら行列になるでしょうね。
腹にも入るし、温かいし。
僕ね、勝手にラグビー鍋を考えているんです。
たとえば、カレー味とか、トムヤムクン風もいいよね。
料理は簡単だし、お客さんは喜ぶし。
- 中竹
- おお、できそうですね。いいと思いますね。
- 糸井
- たとえば、これをきっかけにできた鍋が定着したら、
すでにパブリシティができていることになりますから。
- 中竹
- そうですね。
- 糸井
- 秩父宮ラグビー場で料理のメニュー紹介みたいな
イベントを一個ずつ前向きにやっていく
モデルケースをつくっていくことができるかなと。
- 中竹
- うん、今こそやらないと。
ラグビーっていうスポーツは堅くて、
そういうのをやっちゃいけない雰囲気だったんです。
これまでも、過剰なサービスを
積極的にはしないようになっていたんです。
でも、そういうことを言っていられないし、
今しか波に乗れないので。
- 糸井
- そうですね。サービスだと思わなくていいんです。
なんていうんだろう、これも試合ですよ。
- 中竹
- ああ、いい言葉ですね。
- 糸井
- だって、観客がいなければ成り立たないんですもん。
ここでなにもしなければ、
発祥の頃の、観客で囲んでいた時代に
戻りたいのかっていう話ですよ(笑)。
- 中竹
- いえ、勇気をいただきました。
本当にそうなんだと思います。
- 糸井
- 「ほぼ日」の社内でも一回行った人たちは、
みんなまた行きたいと言っているので、
ラグビーを生で見ることはよかったんです。
また、みんなで固まって見たいなと思います。
ありがとうございました。
- 中竹
- ありがとうございます、楽しかったです。
これで、中竹さんと糸井重里による対談は終わります。
よろしければ、ご感想をメールでお送りください。
ご愛読をありがとうございました。
2016-02-19-FRI