HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN 中竹竜二×糸井重里 にわかラグビーファン、U20日本代表ヘッドコーチに会う。
8 にわかファンとしてのアイディア。
糸井
さて、ラグビーの「にわか論」といえば、
あのワールドカップの影響で
トップリーグのお客さんがいっぱいになると思ったら、
協会の不手際があって客席をいっぱいにできなかった。
中竹
本当に申し訳ないことです。
糸井
要するにまだ、運営が下手だっただけだと思うんです。
あそこでうまくやれたら、満席になりましたよね。
中竹
満席になったでしょうね。
でも、よかったなと思うのは、
お客さんを入れられなかった問題に対して、
選手たちが不満を持っていてくれたことです。
糸井
選手はえらかった。
中竹
選手たちが「日本のラグビーが負けた日」と
言ってくれたのが、もう本当に響いたんです。
私も関係者ではありますが、
ここからどう学ぶかが大切ですね。
協会の人たちも、チケッティングの担当も、
要するに、判断を誤ったということですね。
まだまだ対策を練る余地があるので、
自分たちがダメだったとカミングアウトして、
失敗を学びに変えてほしいです。
糸井
うん、うん。
中竹
日本協会はまだ、瞬時の判断ができていません。
そして今回の失敗で、考える機会も与えてもらえました。
僕たちが学びを得るためには、
プレッシャーを掛けていただける存在が必要です。
いただいたコメントをもとに、
どんどん学びのサイクルを作っていきたいです。
糸井
いいですね。今度は逆に、中竹さんから、
僕に聞いてみたいことってありますか。
中竹
僕はラグビーに目が慣れすぎちゃって、
試合で何が情報として頭に入ってくるのか、
よくわからなくなっているんですよね。
ワールドカップでラグビーに夢中になった
「ほぼ日」のみなさんが、
はじめて国内でラグビーを見たとき
純粋な感想をもっと聞きたいです。
糸井
はい。わかりました。
まずは、フィールドのとても近くで見ている興奮と、
おなじ風が吹いているんだという、喜び。
あれは、わくわくしました。

そして、「ぶつかっている音が聞こえるよ」と言うけど、
テレビで見るよりも音が小さいのは確かです。
ドーン! と体がぶつかり合うのは感じられるけど、
テレビを見て「ラグビーって格闘技だな」と
思っているときほどの恐ろしさはなくなるんです。
自分と同じフィールドで人間が動いているから、
熱いという感覚もあるし、すこし冷めても見ていられる。
ホットとクールの両方が、極端化した気がしました。
中竹
うん、うん。
糸井
後はルールについて。
僕たちは大勢で行ったんですが、
ルールをよく知らない人たちがほとんどでした。
それでも十分に楽しめたので、
敏感になりすぎないほうがいいかもしれませんね。
ラグビーでも野球でもサッカーでもバレーボールでも、
よく知らないのに見ている時間って結構ありますから。
中竹
ありますね。
糸井
「オフザルール」ですね(笑)。
ルールについては、心配しすぎないないほうが
いいような気がします。
中竹
もうまさに、そうだと思いますね。
糸井
あとは、観客は観客で分かれていて、
プロと、セミプロと、アマチュアが
いるような気がするんですね。
中竹
観客にですか。
糸井
きっと、そこに差はありますね。
たとえばなにかのお店でも、初めて来た人は
そのお店にとってのアマチュアなんです。
僕たち「にわか」が何もわからなくて、
おどおどしているところに、
協会の方々が上手に案内をしてくださったら、
きっと助かるような気がしますね。
僕らが行った時には試合中にハンドマイクを使って
簡単なルール説明をしてくれましたが、
早く来た人には試合前にグラウンドから
説明をしてあげたら嬉しいだろうな。
中竹
試合前に、予習するわけですね。
糸井
はい。どのくらいの強さでぶつかると効果があるとか、
いろんなお試しができるといいですね。
勉強のように、パンフレットでルールを読むよりも、
きっとたのしいと思うんです。
中竹
エンターテイメントとしての予習で、
ウォーミングアップできるといいですね。
糸井
あと、選手たちが遊びでやっているようなことも、
簡単にはマネできませんよね。
だから、簡単なパスだとか、蹴ってみるだとかを、
アトラクションのように体験できるはずなんです。
モールをつくって押し合いする中に、
ちょっと入ってみると迫力あるだろうな。
お相撲さんたちが地方巡業で
よく子供を持ち上げたりするみたいに、
選手たちの力強さを体感できるといいですね。
中竹
ああ、そうですね!
子供たち向けのラグビー教室はやっていますけど、
試合会場で行う発想はありませんでした。
糸井
神聖な場所でもあるんでしょうけど、
時間を区切って、教室も何時からやりますと言って、
そこから見た方が楽しいよねっていう噂が広まれば、
きっと楽しくなると思うんですね。
中竹
お客さんも、早めに来てくれますしね。
糸井
あと、グッズみたいなものも、
まだ売る気十分じゃない感じはしましたね。
もう少し、商売っ気があったほうが
ファンとしては安心できるんです。
中竹
売った場面を見たこともないし、
売れたことがないので、
けっこう満足しているかもしれないですね。
エディー・ジョーンズみたいに、
誰かが「これじゃダメなんだ!」と言ってくれないと、
現状で、そこそこ売れているように感じてしまうんです。
糸井
全然売れていないと思います(笑)。
中竹
ああ、ありがとうございます。
そう言っていただいた方がうれしいです(笑)。
糸井
商売っ気を丸出しにして
ちょうどいいぐらいだと思うんですね。
たとえば、国立博物館の
ミュージアムショップが賑わっていますが、
会場以上にみんなの目が生き生きしているんです。
中竹
ほぉー、そうですか。
糸井
お土産を買うときの気持ちって、
場合によっては、展示されている像を見るとき以上に
ワクワクしているものなんです。
「買う」というのは、入場券を買って
観劇したり、観覧すること以上に
参加している感じがするんですよ。
「えっ! 買って帰れるものがないの」というのは、
じつはみんな、がっかりするんです。
ですから、うるさいぐらいでよくて、
「新しいアイテムが今日から新発売でーす!」って
売ってくれたら、いらないはずのボールも
買って帰ると思いますね(笑)。
中竹
ああ、その発想はないですね。新鮮です。
糸井
あとは、会場での食べものですが、
冬の食べものというのは、難しいですね。
冬の奥の手といえば温かいものだけど、
つい奥の手にばかり頼っちゃいそうです。
色とりどりの弁当を作っても寒いだろうし、
このハンデをどう利用していくかですね。
中竹
うーん、そうですね。
糸井
たとえば大芋煮大会とかやってみたり。
山形でやっている芋煮って、
大きな鍋でやっていますよね。
「ラグビー鍋」を考えたら行列になるでしょうね。
腹にも入るし、温かいし。
僕ね、勝手にラグビー鍋を考えているんです。
たとえば、カレー味とか、トムヤムクン風もいいよね。
料理は簡単だし、お客さんは喜ぶし。
中竹
おお、できそうですね。いいと思いますね。
糸井
たとえば、これをきっかけにできた鍋が定着したら、
すでにパブリシティができていることになりますから。
中竹
そうですね。
糸井
秩父宮ラグビー場で料理のメニュー紹介みたいな
イベントを一個ずつ前向きにやっていく
モデルケースをつくっていくことができるかなと。
中竹
うん、今こそやらないと。
ラグビーっていうスポーツは堅くて、
そういうのをやっちゃいけない雰囲気だったんです。
これまでも、過剰なサービスを
積極的にはしないようになっていたんです。
でも、そういうことを言っていられないし、
今しか波に乗れないので。
糸井
そうですね。サービスだと思わなくていいんです。
なんていうんだろう、これも試合ですよ。
中竹
ああ、いい言葉ですね。
糸井
だって、観客がいなければ成り立たないんですもん。
ここでなにもしなければ、
発祥の頃の、観客で囲んでいた時代に
戻りたいのかっていう話ですよ(笑)。
中竹
いえ、勇気をいただきました。
本当にそうなんだと思います。
糸井
「ほぼ日」の社内でも一回行った人たちは、
みんなまた行きたいと言っているので、
ラグビーを生で見ることはよかったんです。
また、みんなで固まって見たいなと思います。
ありがとうございました。
中竹
ありがとうございます、楽しかったです。

これで、中竹さんと糸井重里による対談は終わります。
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ご愛読をありがとうございました。
2016-02-19-FRI