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なんと、5年目です。 |
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ことしも同じ顔ぶれで。 |
一同 |
よろしくお願いしまーす。 |
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あきれるくらいおなじみになってしまいました。 |
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「ザッハトルテ家族」、その配役は‥‥ |
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さんがお父さんで、
ちゃんがお母さん。 |
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ちゃんが長女で、
ちゃんが次女。
あきれるくらい同じキャスティングです。 |
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そしてみなさん、わかってますね?
このコーナーは完全な「オマケ」です。 |
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オマケ! |
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たいせつな情報は、ほぼございません。
なのに、なぜに、これをやるのか? |
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ケーキを待つワクワク感や、
届いたときのうれしさなど、
そうした「きもち」の部分を
毎回フレッシュにお伝えしたいからです。 |
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それってある意味、
めっちゃ重要なポイントじゃないですか。 |
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ええ(深くうなずく)。
ですから、こころを込めてやりましょう。
いいですか?
ぼくらには、こころしかないんです。
演技力はゼロです。
ならばせめて、精一杯のまごころを!
誠心誠意、茶番劇をやりきりましょう。 |
一同 |
はい! |
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ついでに申し上げれば、
このキャスティングは今回が最後です。 |
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なぜならば。 |
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なぜならば、
外山ちゃんが「ほぼ日」を卒業するから。 |
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たしか、2月で退社? |
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はい。
「ザッハトルテ家族」出演もことしが最後です。 |
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‥‥なんかきょう、お化粧が濃いね。 |
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ほんとだ、お化粧が濃い。 |
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気合いを入れてきました。 |
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すばらしいと思います。
最後の「まりこ」役、がんばってください。 |
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はいっ。 |
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いっぽう、田口さんにも気合いが入ってます。
最近、疲れが目にくるようになった田口さんは、
なんと自前のメガネを装着して
お父さんらしく見えるよう、役作りです。 |
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一同 |
おおーー。 |
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まだ若いけどそれなりに老けた(笑)。 |
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さあ、はじめましょう。
いつものシーンです。
「お父さんが茶の間で新聞を読んでいる。
子どもたちはマンガを読んでいる。
そこへお母さんがやってくる」
出たとこ勝負で、いきまーす。 |
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ことしもぶっつけ本番‥‥。 |
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モギさんはじゃんじゃん写真を撮ってください。 |
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了解(カメラを構える)。 |
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よおーい‥‥スタァーーーート!! |
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‥‥‥‥(新聞を広げる)。
新聞っていうのはいいもんだなぁ。
なにがいいって、新しいことが書いてある。 |
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お前たち、マンガ本はおもしろいかい? |
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うん。 |
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おもしろい。 |
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むかしは『ぐりとぐら』ばっかりだったくせに! |
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みかんを持ってきましたよ。 |
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おお、母さん、りっぱなみかんじゃないか。 |
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はい、いいみかんですよ。 |
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ああ‥‥やっぱり、あれだな。
わが家がいちばんだな。
お父さんはずっと出張に行ってたから、
なおさらそれを感じるよ。 |
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出張、お疲れ様でした。お帰りなさい。 |
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うむ。
留守のあいだ、変わったことはなかったかい? |
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ピンポーン。
田口さーーん、宅配便でーす。 |
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あ、はーーーい。 |
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‥‥そのヘルメットは自前ですか。 |
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そう。なんか感じがでるかと思って。 |
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宅配便というより、それはピザ屋さんですね。 |
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‥‥そんなことより、ここにハンコを。 |
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はい(ハンコを押す)、ご苦労さまでした。 |
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‥‥(ひそひそ声で)
「なんやろう? この荷物はなんやろう?」
と言ってください。 |
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なんやろう? この荷物はなんやろう? |
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(ひそひそ声で)はたと思い出す。 |
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はたっ! 思い出した! |
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(ひそひそ声で)
おれがネットで注文したやつやん。
みんなをサプライズさせようと思ってたのに、
自分がサプライズしてもうた。 |
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おれがインターネットで注文したやつやん!
みんなをサプライズさせたろ思てたのに、
なんや、自分がサプライズしてもうたがな! |
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お父さん、それは何ですか? |
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母さん、聞いて驚くなよ。
これはな、あれや‥‥ |
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ザッハトルテやーーー!! |
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ことしも次女が言っちゃった!
しかも最後だから気迫がすごい。 |
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いいぞぉーー。
ここまでほとんど去年と同じだぞぉ。
しかし、この先は予定調和では済みません。
恒例の‥‥ |
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「本気じゃんけん」だ‥‥。 |
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みんな、わかってるな。
この、箱を開けるのがいちばんたのしいんや。
その最高の役を誰がやるのか‥‥。
ことしも田口家では、
恒例のじゃんけん大会で決めようと思う。 |
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ドキドキ‥‥。 |
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ドキドキ‥‥。 |
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このじゃんけんは、ノンフィクションです。
ここだけは、やらせではございません。 |
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いくぞっ、さいしょはグーー! |
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ん?
‥‥ちょ、ちょっと待て。 |
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どうしたの? |
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‥‥‥‥腕が、いっぽん多いだろ。 |
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この腕のヌシは‥‥‥‥‥。 |
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‥‥‥‥‥‥。 |
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さあ。 |
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さあ。 |
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お茶の間に、こつ然とあらわれた男は‥‥ |
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今回のゲスト、
イラストレーターの福田利之さんです! |
一同 |
(拍手) |
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呼ばれたので、よくわからずに来ました。
ぼくはなにをすればいいのでしょう。 |
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なんとなく流れで、
空気を読んでお願いします。
あまりしゃべらなくて大丈夫なので。 |
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わ、わかりました‥‥。 |
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さ、続けましょう。
お父さんにしてみれば、
「どちらさま?」となりますよね。
‥‥どうぞ。 |
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‥‥どちらさま? |
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‥‥‥‥。 |
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福田利之さんですよ。 |
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ふくだ、としゆきさん‥‥。 |
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お父さんに言ってなかったっけ?
福田さんは、まりこちゃんの彼氏なのよ。 |
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まりこの?! 彼氏ってお前‥‥ |
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さあ、福田さん、
まりこちゃんのとなりに座って。どうぞどうぞ。 |
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あ、はい、すんません。 |
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おれが出張に行ってるあいだに‥‥
どういうことなんだ、これは。
おい、母さん‥‥母さん? |
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みかんを見てないで、
どういうことなのか説明をしなさい説明を。 |
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さいしょは、グーー。 |
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母さん! |
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じゃんけん、ぽいっ! |
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‥‥あいこだ。 |
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‥‥ものすごい緊張感。 |
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あいこで、しょっ! |
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一同 |
ああーーーー。 |
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‥‥どうせ負けると思った! |
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お父さん近年、勝てないわぁ(笑)。 |
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まりこちゃんとお母さんが勝ち残ったね。 |
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これ‥‥まさか‥‥。 |
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‥‥‥‥。 |
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‥‥‥‥。 |
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‥‥じゃんけん、ぽんっ! |
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一同 |
おわーーーーーーー! |
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ぎゃーーーー!! |
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はじめて勝った! 最後に勝ったーー! |
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こいつ、もってるなぁ‥‥。 |
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まりこちゃん、今よ!
今のその勢いで、
お父さんに福田さんのことを話すのよ! |
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‥‥お姉ちゃん、ありがとう。
お父さん、
お父さんに言いたいことがあるの。
この家はいごこちがいいし、
毎年のザッハトルテもたのしいけど、
わたしはそろそろこの家を出て、
彼氏と一緒に住みたいと思っているんです。 |
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‥‥‥‥まりこ、いくつになるんだっけ。 |
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‥‥31。 |
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え?! そんなにいってるの?
‥‥じゃぁ、まぁいいのか。 |
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まりこ、ほんとの年を言っちゃったよ。 |
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寸劇なんだからサバをよめばいいのに。 |
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年齢のことはどうでもいい!
そんなに家を出て行きたいなら
勝手に出て行けっ!! |
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‥‥‥‥。 |
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お父さん、わたしは見損ないました。
こんなにムードを悪くして。
たとえ何があろうと、
「じゃんけんで勝った人がたのしく箱を開ける」
それが田口家の家訓じゃなかったんですか? |
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‥‥母さん。
‥‥そうだな、わたしが悪かった。
まりこ、せっかくじゃんけんに勝ったのに
雰囲気を悪くしてすまなかった。 |
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ううん、いいの。
じゃあお父さん、開けるね。たのしく開けるね。 |
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その包装紙はわたしがもらいます。 |
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この紙はたたんでおかないと。 |
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なにかに使うかもしれないから。 |
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‥‥母さん、
何度も言うが、どうせ使わないだろぅ。 |
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利之(としゆき)さん、いっしょに開けましょ。 |
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くしゅくしゅっとした
赤い紙がかわいいでしょ? |
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うん。
あ、チョコレートのいい香りが。 |
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ほんとだぁ(笑)。 |
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ワクワクする(笑)。 |
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うん(笑)。 |
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(ひそひそ声で)仲の良いふたりを見ながら、
お父さんはしみじみした独白を。 |
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‥‥娘よ。
次女のまりこよ。
いつのまにかすっかりお年ごろになっていた、
わたしの娘よ‥‥。 |
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立ち会い出産をしたあの日が、
まるで昨日のことのようだよ。
そうか‥‥もう31年も経っていたのか‥‥。 |
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パパと一緒じゃないと眠れないと
泣いていたあの夜。
はじめて自転車に乗れた、あの日の夕方。
おててつないで帰り道‥‥。 |
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ちょっと、お父さん。 |
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幼稚園のころにもらった肩たたき券、
あれはまだひきだしの中にある。 |
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お父さん、見てください。 |
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お前はとんとん拍子で成長して‥‥。 |
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ほら、見てくださいよ。 |
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なにを? |
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みかんアートです。 |
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みかんアート?! |
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流行ってるんですよ、本も出てるの。
きょうワイドショーで見たんです。 |
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‥‥‥‥。 |
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ヘディング。 |
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‥‥‥‥。 |
|
ヘディング。 |
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母さん‥‥それ、あとにしようか。
今はそれどころじゃないから。 |
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わかりました。 |
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なんでたたんでるの。 |
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なにかに使うかもしれないから。 |
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使わないから! ぜったい使わないから! |
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‥‥福田さんと、いいましたね。 |
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はい。 |
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失礼ですが、お仕事は。 |
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イラストを描いています。 |
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福田さんはね、
すごいイラストレーターなのよ。
見てもらったらわかるの。
‥‥そうだ!
この、ツルツルのザッハトルテに
何か絵を描いてもらいましょう! |
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そんなことができるのかね。 |
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ホワイトチョコレートの
ペンのようなものがあれば、
描けると思うんですが。 |
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あいにくそれはうちには‥‥ |
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ありますよ。 |
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あるの? |
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利之さん、描いて。 |
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うん。 |
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わあ‥‥。 |
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すてき‥‥。 |
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‥‥‥‥。 |
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しばらく時間が経ちまして‥‥。 |
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一同 |
おおーーーー! |
|
一同 |
すごーーい!!(拍手) |
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2014年もこのご家族が、
空を駆けるペガサスのように発展しますように。
そんな思いを込めて描きました。
うまどしですし。 |
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かわいいーー! |
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‥‥ところで、福田さんはおいくつなんですか。 |
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46です。 |
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‥‥46。 |
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はい。 |
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ううーーむ‥‥‥‥。 |
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そうだわ!
このケーキ、福田さんとまりこちゃんが、
ふたりで一緒に切りましょう!
ケーキ入刀よ! |
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いや、お姉さん、それはまだ早いです。
ここはひとつ、
お父さんとお母さんに
ケーキ入刀していただきましょう。 |
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まあ! |
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(母さんがよろこんでいる)福田さん、
お気遣いをありがとう。 |
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あれですよね、チョコケーキを切るときは、
包丁をお湯であっためると
きれいに切れるんですよね。 |
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きみは! それを知ってる人か! |
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ええ。 |
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母さん、この人はそれを知ってる人だよ。 |
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よかったですねぇ。
さ、あたためた包丁で切りますよ。 |
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ああ。
‥‥それにしてもこの感じ、懐かしいな。 |
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よいしょ。 |
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わあー、きれいに切れてるー。 |
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‥‥わ、わけがわからない。
なんで父と母がケーキ入刀してるんだろう。
今回もすさまじい茶番劇だ‥‥。 |
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さあ、お紅茶もはいってますよ。 |
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それでは、これも田口家の恒例。
ひとくち食べて、ひとりずつ、
「おいしくてうれしい顔」を見せてもらうぞ。 |
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出ました、これも愛すべきマンネリ。 |
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まずは、次女、まりこから。 |
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‥‥はむ(と食べて)、
んーーー! おいひーーーー!
けらけらけらけら〜!(←笑い声) |
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いいぞ! 父さんはまりこの、その、
けらけらけらけら〜という
「から笑い」が大好きだ!
次は、わかたろう。
わかたろうだなんて、
男の子みたいなあだ名ですまん。
お前は、男まさりだったからな。 |
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(食べている)‥‥うん、おいしい。 |
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お、ことしは、クールに決めた!
次女に先を越されちゃったからな、
お姉さんは大人の魅力をアピールしないとな。
じゃあ、次はお母さん。 |
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(食べる)‥‥ことしも、おしいいです。 |
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すばらしい安定感。
母さんはわが家の大黒柱だ(笑)。
‥‥さて、福田さん。
ひとつ、見せてください。
表現のお仕事をしている方の「美味しい顔」を。 |
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いただきます(食べる)‥‥‥くわっ!! |
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‥‥‥‥おお。 |
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お父さんが、お父さんが認めている! |
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なるほど、まりこが見そめただけの方。
オリジナリティあふれる表現。
‥‥では、僭越ながら最後にわたしが。 |
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いよいよお父さんの番だ。 |
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なんと5年目になる、
田口さんのおいしい顔、よろしくお願いします。 |
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‥‥いきましょう(食べる)。 |
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一同 |
‥‥‥‥(かたずを飲む)。 |
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おいしっ! |
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|
おいしっ!! |
|
|
おいしーーーーー!! |
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‥‥あ、あたらしい!(笑) |
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まったくタメがなかった!(笑) |
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びっくりしたぁ(笑)。 |
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原点に戻って、すなおに表現しました。 |
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そうきたかぁ‥‥新鮮でした。
さすがお父さん! |
一同 |
すごーーーーい!(拍手喝采) |
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‥‥まりこ。
‥‥‥‥いいよ。
ふたりで暮らしなさい。 |
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お父さん‥‥。 |
|
福田さん、まりこをよろしくお願いします。 |
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はい。がんばります。
ぼくにできることは絵しかないのですが、
一生懸命頑張って、まりこさんを幸せにします。 |
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はーーーーい、ありがとうございました!
ことしも、もう、十分です。
わけのわからない感動に包まれた気がします。
誠心誠意の茶番劇は終了ー。 |
一同 |
はーーーい。 |
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いちおう注意書きをしておきますが、
このお話は
じゃんけん以外はすべてフィクションです。 |
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現実の福田さんと外山ちゃんは、
恋人同士ではまったくありません。 |
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福田さん、ゲスト出演ありがとうございました! |
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福田利之さんに、あらためて拍手を! |
一同 |
ありがとうございましたー!(拍手) |
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なんか、すみません。 |
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とんでもない!
こちらこそすみません、
ケーキに絵を描かせたりして。 |
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さすがです、急にあれが描けるなんて。 |
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すごいことですよ。 |
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福田さん、これからもよろしくお願いします。 |
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さて、
いろいろありましたが、
ことしもお伝えしたいことは同じです。
「ひとつのケーキで、うれしくたのしく」 |
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それが伝わることを祈りつつ、
おひらきにしましょう。 |
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「ザッハトルテ家族」のみなさん、
最後にみんなでごあいさつをー。
せえのぉ‥‥。 |
一同 |
ごちそうさまでしたーー。 |
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次女・まりこ卒業。
来年はどうなるんだろう??
福田利之さん、
ほんとにありがとうございました。
念のため最後にも申し上げますが、
福田さんはすばらしいイラストを描く方です。
ほぼ日でも、たくさんの絵をお願いしています。
福田さんのHPはこちら。
ツイッターはこちらからフォローをプリーズ。
ザッハトルテの「試食劇場」は、これにて終了。
みなさんも、ケーキの到着で、
「うれしく」「おいしく」なりますように!
※前回登場の留学生・ポンポンチャイについて
一切触れていませんが、
彼はずいぶん前に帰国しています(ほぼ日は辞めてません)。 |