虚実1:99 総武線猿紀行 |
総武線猿紀行第221回 「え、その場面ホント? 『ラストサムライ』を2倍楽しもう!」 〜佐伯先生と新春・武士の勉強〜その8〜 ウルトラマンみたいなとっくみ合いの戦なんて しないンダヨ! さて、2月に入ってしまいました。 2月18日(金)には新しくできたロフトの店、 ネイキドロフトにて、 スパイダースの井上尭之さんを招いて、 トークショウを行います。 70回以上を重ねる「サエキけんぞうのコアトーク」の 姉妹編新シリーズ「SLOWコアトーク」の第一弾です。 通常、新宿ロフトプラスワンで 行われているコアトークですが、 CKBの横山剣さんや ゴールデンカップスのエディ藩さんなど、 豪華なメンツを招くのはいいのですが、 会場が大きく、緊張感あふれて TVのようになってしまいます。 時代はSLOWフード、SLOWラブ、 SLOWトークかな? という想いをこめて企画しました。 「太陽にほえろ!」のテーマでも有名な サムライギタリスト井上尭之さんの レアでコアな話をゆっくりお聞き下さい! 全然事情を知らない人にも楽しめるように話しますので みなさん、ふるってご参加下さい! そんなギター侍、井上さんは、 ある意味では本物のサムライともいえます。 そんな彼にはこのシリーズ、 ぜひ読んでいただきたいですね! レンタルDVDに吟醸酒、イカやカツオの塩辛でも片手に、 佐伯先生による、確かにお得なウンチク、 新しい春、新しいジャパネスクなひとときを貴方に‥‥。 先生、こんにちわ。 「こんにちわ」 クライマックスのラストの戦いについて引き続き話します。 大村益次郎と思えない大村さん率いる新政府軍と、 勝元(渡辺謙)&オルグレン(トム・クルーズ)率いる 武士反乱軍が正面衝突してますが、 おっしゃりたいことが山ほどあるようで。 「陣地かまえている側(新政府側)が、 反乱軍に向かって突撃してますが、 そんな走っていく必要なんてありませんよ。 近代装備の新政府軍はひたすら撃ってればいいんです」 そうか、でもワ〜〜って攻めてって、 殺陣やりあうのが時代劇の定番なんですが。 それがないと、時代劇見た気がしないって人も多いかも。 そんなシーン、もちろん実際にはなかったわけですね。 「というか、きっと監督達にとっては、この戦いは、 カスター将軍がインディアン (現在はネイティブ・アメリカンと 呼ばなければいけません) を殲滅(せんめつ)したときのイメージなんでしょうね。 インディアンが果敢に攻めてくるのを カスター将軍側もドワーっと迎え撃つという。 西部劇の定番でもある」 西部劇と時代劇との違いは? 「カスター将軍は部下の犠牲を省みないわけですね。 とにかく突撃! で。 この戦いの場合も、 部下がどんどん死んでいったわけでしょ? 陣地を守って鉄砲撃ってりゃ、犠牲者も出ないのに。 無防備、傲慢、油断‥‥ そうしたものの塊の戦術といえるでしょう。」 この合戦の風景そのものがSFなんですね。 犠牲者を惜しみなくだす出す戦いは、 カスター将軍がルーツなのか。 「中にはとっくみあいしてる兵士もいる。 まるでウルトラマンの戦いみたいです。 まあ、こうやって文句つけてるのも、 『ウルトラマンはどうして最初から スペシウム光線を出さないで、 わざわざプロレスみたいな戦いをするんだ』 っていってるようなもんですけどね。 現実味のなさではいい勝負でしょう」 そうか、新政府軍は、最後に連弾式のすごい銃が出てくる。 スペシウム光線も、最後の最後ですからね。簡単なのに。 あと、馬に乗ってきたのに、 馬から降りて戦っているのもヘンでしょうか? 「戦国時代には馬は輸送用で、 戦う時には降りて戦うということも あったようですけどね。 でも、あの戦いぶりは、まるで 『武田騎馬軍団が信長の鉄砲に負けた』 みたいな感じですよね。 明治維新より300年前に、 『長篠の合戦』で武田騎馬軍団が突撃して、 信長の鉄砲の三段撃ちにやられたという。 今では、武田側だって鉄砲を持っていたし、 『三段撃ち』なんてなかったというのが 定説化しつつありますが、 この合戦シーンはそれ以前の問題ですね。 300年前にもやらなかったことを、 明治頃にやってるわけです。 最後に出てくる新型銃は実際あったみたいですが、 なんで最初っからあれで撃たないの?」 全くもって。 そして勝元の壮烈な死を見て、新政府軍は土下座します。 「新政府軍は、農民が傭兵になってるわけです。 なぜ農民が武士に土下座するんでしょう? 『武士道』がだれにも教わらずに 自然に備わっていたとでもいうのでしょうか」 そうか、武士道を知らなければ、 武士への尊敬もへったくれもないわけですよね。 自分を脅かす戦いの敵が死んだだけですから 土下座という考えが浮かぶわけがない。 でも、そもそも設定が<農民兼武士>になってるからな。 そこからSFなわけですね。 というわけで、勝元の軍はほぼ全滅しますが、 なぜオルグレンだけ死ななかったのでしょうか? 「全くです。なぜかオルグレンだけ死なない。 しかも、オルグレンは反乱軍に加わったのに 何故かオトガメなし! 『時代が合わない』とかいう問題は、 『いや、映画はフィクションだから』 ってことでいいんですが、 これは映画としてのキズのような気がするな」 全くもってヘンですね。 しかしその後、また勝元の村にカメラがもどりますが、 大虐殺のあとに村が平穏に戻ってます。 「全滅しているはずですよね。 この村は『ポーの一族』 (萩尾望都の吸血鬼一族のマンガ)か? ゾンビの村ですか? 900年同じメンバーで生きてるんじゃないの? あれだけの戦いをしたら、もう村はお終いですよ」 第八回のまとめ 政府軍は陣地守って、ひたすら鉄砲撃てばよろしい。 ウルトラマンみたいな取っ組み合いの戦は実際にはしない。 このような新政府軍のカスター将軍的戦法は、 無防備、傲慢、油断で軍を滅ぼす。 残念、ギリ! それでは佐伯先生の著書 「戦場の精神史」を読んでみましょう。 44ページ そもそも、日本列島では、 いつごろから戦争があったのか? 縄文時代の人骨には、 武器で傷つけられた傷痕がしばしば見られ、 縄文晩期には戦争があった 可能性を考えることもできるが、 佐原真が 「現状では、縄文時代に戦争があったと見るには 充分ではない」 と述べているのが、現在の通説的な見解であろう。 大規模な環濠(かんごう)集落や武器、 さらには明らかに意図的に殺害された 人骨の組み合わせなどにより、 戦争の痕跡がはっきり現れはじめるのは、 弥生時代のことであるようだ。 <サエキの解説> 「僕は縄文人」「君は弥生人の顔だね」などと、 気楽に先祖の話をしますけれど、 戦争がある、ない、くらいの 大きな隔たりのある社会生物だったのですね。 動物を狩る道具はあっても、 意図的に殺害する人間同士の戦争兵器はない。 狩猟による縄文人の食生活は たいそう不安定だったかもしれませんが、 戦争による生活の不安はなかったわけです。 もちろん縄文人にとって、 現在の、各種兵器による環境汚染などは 想像もつかないでしょう。 なぜなら戦争という言葉を知らないからです。 佐伯先生に質問を受け付けます! シリーズも7回を迎え、そろそろ 「ここはどうなってるの?」 という方もいらっしゃるでしょう。 気楽にメールをいただけるとうれしいです (お答えできるかどうかは、ケースバイケースですが) ほぼ日編集部まで「佐伯先生に質問」というタイトルで よろしくお願いします。
佐伯先生の「戦場の精神史」をサイン入りで販売します! (これは珍しいぞ) ギター侍ならぬ、ギター界のサムライ =窪田晴男の在籍する我がパール兄弟の 丸秘音源CDRも特別に付けちゃいます! 定価税込1176円のところ、 エエイ! 送料ともで1200円!(出血) お申し込みは Pearlnet pearlnet@nifty.com まで。 アマゾンなどでも売ってます。
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2005-02-06-SUN
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