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虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第224回
「え、その場面ホント?
 『ラストサムライ』を2倍楽しもう!」
 〜佐伯先生と新春・武士の勉強〜その11〜
 神社と寺は一緒だったンダヨ!
 武士は芸術が嫌いなンダヨ!!


え〜、質問などをHN joeさんからいただきました。

=
渡辺謙ファンの私は、「ラスト・サムライ」を
とても楽しみにしていたのですが、
いざ公開してみるとアレな場面が多くて、
なのにそれを指摘する人は少なく、
あまつさえ「日本人に生まれてよかった!」
とか言う始末。
アメリカの評論家のほうが、
「ラストシーンで、
 トム・クルーズは死ぬべきだったんじゃないか?」
 とアカデミー賞レッドカーペット上で
 ケン・ワタナベに質問しているのには、
 なんだかなぁ、と思いました。

なるほど。
そのアメリカ人評論家のほうが
思考がまともなんでしょうか?
でも、この映画は
タランティーノ監督の「キル・ビル」と同じように
楽しむといいと思うのです。
間違い探しゲーム映画というか。
この連載でお分かりのように、
「知っている」と思いこんでいても、
日本の本当の姿については、
だれでも、知らなかったことを積み残していると思います。
平家落人部落とか、ニンジャの実在とか。
その意味では、
絶好の日本学習チャンスを与えてくれていると思います。
「ラストサムライ」を見て<笑って>日本を学ぼう!
おそらく僕もこの映画と出会わなかったら、
こんなに日本を勉強することはありませんでした。
テンポ感や映像もいいし、絶対、楽しめると思います(笑)
オススメ☆☆☆☆☆。

レンタルDVDにハーパー、スモークチキンでも片手に、
佐伯先生による、確かにお得なウンチク、
新しい春、新しいジャパネスクなひとときを貴方に‥‥。


先生、こんにちわ。

「こんにちわ」

まず、前回の
「神社とお寺は別のものだとか、
 武士が天皇を崇めていたとか、
 新しい〈伝統〉が作られて‥‥」
という内容の先生のお答えですが、
神社と寺って昔は一緒だったんですか?

「平安時代から、日本の神々は
 もともと仏様だったという信仰が盛んになりました。
 つまり、『八幡大菩薩』とか、
 『金比羅大権現』みたいに、
 多くの神様は仏様でもあったわけです。
 『菩薩』は仏様だし、『権現』は仏様の化身ですね。
 そういう時代が千年ぐらい続いて、
 日本人にとってはごく自然な信仰として
 伝統化していたわけですが、
 その伝統を破壊したのが、明治初めの廃仏毀釈です。
 それからまだ150年もたっていません」


この映画のDVDは監督エドワード・ズウィック自身による
音声解説おしゃべりがついてます。
その中で気になった部分について、解説していただきます。
まず
「(トム・クルーズは)ここで日本の文化や神話、
 伝統の中核にある精神を彼は示した。
 それは侍の精神である。
 侍の精神は日本映画を特徴づけてきたし日本企業、
 日本のスポーツも同様だ。
 我々の西部の英雄、大平原の一匹狼と同じく神話なのだ。
 真実とは言い切れないが、神話ではあると思う」
という部分がありますね。

「もちろん真実ではなくて、
 現代の映画や日本企業のイメージから増幅された
 現代の神話としての『伝統』でしょう。
 言うまでもないですが」


う〜ん、あらためて虚業のハリウッドは強烈ですね。
サムライに歴史のすべてをかぶせて、
天皇も貴族も、企業とかスポーツも芸術も、サムライだ〜!
荒野とガンマンと同じだ〜!
とかメチャクチャいいながらも、
「侍の精神」が日本を代表する?
そんなの神話に過ぎない!
と、自分達がワルノリしてるのもウスウス気づいた上で、
あの映画を作っているんでしょうね。

「監督自身、よくわかっておられるようですから、
 何も言うことはないんですよ。
 こっけいなのは、
 監督自身が『神話』だといっていることを、
 『歴史』として真に受けちゃう日本人がいるらしい、
 ということです。
 それほど日本に詳しいわけでもないアメリカ人より、
 日本人の方が日本の歴史に無知で、
 しかも、そういう無知な人に限って
 『日本人の誇り』とか言いたがるっていうのは、
 ちょっと深刻な問題かもしれませんね」



ハリウッド映画で日本を勉強するのは、
やはり避けたいところです(笑)。
小川智子さんからもお便りいただきました。

=
2〜3年くらい前にNHKで放送した
「その時歴史が動いた」の
「昭和天皇、マッカーサーに会う」の回。
昭和天皇が毅然とした態度でマッカーサーと会見し、
「自分の身はどうなってもいいから国民を守ってほしい」
と言ったのだそうです。
会見後、マッカーサーは
「彼こそ真のサムライだ」と感心したとか?
天皇はサムライじゃないでしょ!
とテレビにつっこんでしまいました。
その言葉を感動的に紹介する松平定知アナウンサーも
不思議に思わなかったのでしょうか。

ということですが、そうですね。
サムライが大和朝廷や邪馬台国よりも
はるか後に登場した順番だけはおさえたいですね。
そうしないと、今は持ち上げられていても、
いつか『ラストサムライ』の
ケルト(アイルランド)人みたいに、
文明が発祥して1000年以上たってる時期に
「腰みのつけてた」といわれるようなことに
なるに決まってます。

それから「勝元が狂言を踊る」
というコメントもありますが。
「狂言を踊る」という日本語をはじめてみました。
翻訳の問題でしょうが、ひどいですね。
狂言は「演ずる」が正解でしょうか?
とにかく村のお祭りシーンで勝元が踊ったのは
狂言だったようです。

「ドジョウすくいではなかったんですね。
 とりあえず、教育テレビの『日本語であそぼ』で、
 野村萬斎でも見てください」

「勝元は歌人でもあり、
 それは侍の文化が、戦うことのみならず、
 美学、芸術、歌作を含むからだ」
というコメントもあります。

「『芸術』は、伝統的な『武士道』が
 最も忌み嫌うところだと思います。
 そんな暇があったら、武術の練習だ!」

芸術は、サムライから見たら、
きっとたるんだお遊びということですね?
「ハイク」が有名だから、
武士も俳句をやると思っているんでしょうね。
江戸時代のヒマな武士なら作るかもしれませんが、
その他、絵とかも絶対描きませんよね?

「学問はいいんですが、芸術はダメですね。
 詩歌とか音楽とか、貴族の必修科目は、
 武士らしい武士には嫌われます。
 絵画はそれ以前の問題で、
 貴族のたしなみでさえありません。
 この辺、監督さんはやっぱり本気で、
 日本文化はすべてサムライのものだと
 思ってるのかなあ‥‥」


次回は、いよいよ、
やきそばサーカスさんなどからの質問を紹介します!


第十一回のまとめ

寺と神社はそもそも一緒だったンダヨ!
狂言は「演ずる」もの。
ドウジョウスクイとは違うンダヨ!!
芸術なんか武士は大嫌いなンダヨ!
踊りも踊らナイ!

残念、ギリ!


それでは佐伯先生の著書
「戦場の精神史」を読んでみましょう。
114ページ

「合戦のルール」は軍記物語などにおいて、
しばしば破られる。
しかし、軍記物語では、
たとえば合戦の日時や場を定めるルールを破る
奇襲や夜討ちは非難されないし、
虚言を弄するだまし討ちさえも必ずしも非難されない。
序章で見た則綱にも、
諸本を通じて批判の言葉はないのである。
武士たちがルール破りやだまし討ちへの批判を
気にしていた様子はあまり見えない。
彼らが恐れているのは、それよりも、
裏切り者や臆病者と見なされて、
仲間の間で軽蔑されることであるようなのだ。



<サエキの解説>

サムライ達にとって、だまし討ちや奇襲のようなものは
ハジではなかったんですね。
この油断もスキもない感覚に注目です。
それより仲間内の評判を恐れる。
臆病者とか、裏切り者と呼ばれるのが何よりもイヤ!
それは、ウチワ意識が強い国民性であったことも
関係しているのでしょうか?

「国民性とかではないでしょうね。
 アメリカ人だって、
 イラク人を虐待していた刑務所のことは、
 隠してかばい合っていたわけです。
 それは仲間を裏切らない精神ですが、
 臆病者と呼ばれたくない、というのは、
 仲間というよりも、
 戦いの相手に恐れられようとする精神です。
 ヤクザはライバルにナメられたら生きていられない、
 オオカミは、喧嘩相手に一度おなかを見せて降伏したら、
 それからは相手に服従するしかないわけです。
 そういう『自分を強く見せたい』という素朴な感情が、
 『名誉』の起源だと思います。
 どの国民の特色というより、
 命をかけた戦闘が育てる精神
 ということではないでしょうか」


佐伯先生に質問を受け付けます!
歴史は想像を超える!
「ここはどうなってるの?」
という方もいらっしゃるでしょう。
気楽にメールをいただけるとうれしいです
(お答えできるかどうかは、ケースバイケースですが)。
ほぼ日までよろしくお願いします。


佐伯真一先生
1953年生まれ
専門は中世文学
同志社大学文学部卒
東京大学大学院文学研究科博士課程終了
著書に「平家物語遡源」(若草書房)他




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ネイキッド・ロフトの店頭のみ当日?\1,700(飲食別)

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所在地:東京都新宿区百人町1-5-1百人町ビル1階
(西武新宿駅北口1分/JR新宿東口10分)
TEL 03-3205-1556 / FAX 03-5287-9177
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E-mail naked@loft-prj.co.jp
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      スパイダース、ありがとう!」
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■判型/四六判 240頁
■定価/1,470円(税込み)

■内容
超人気グループサウンズ、
スパイダースのメンバーとして人気者だった彼の、
涙と笑いのその波瀾に富んだ人生を描きます。
今や、ギタリストとして
日本でも3本の指に数えられるテクニックは、
あのエリック・クラプトンも認めるほどで
今の若者たちにも絶大な人気を誇っています。
これまで語られる事のなかったその少年時代、
そして、スパイダース加入時と
メンバ−との運命的な出逢い。
人気絶頂時代の愉快なエピソード。
今だから話せるスパイダース解散秘話等が
この本の中で初めて公開されています。
解散後に会社設立、失敗、借金の山、
そして突然の「胃がん宣告」で追い詰められた日々…。
そんな失意の中で彼に救いの手を差しのべたのが、
昔の仲間達…堺正章、井上順、ムッシュかまやつ、
沢田研二、萩原健一、宇崎竜童達でした。
この人達の証言を交えながら、見事にがんを克服し、
音楽界の第一線に復帰した彼の
涙と笑いのヒューマン・ヒストリーです。
尚、巻頭16ページに、
スパイダース時代の写真を入れ込みまして、
往年のスパイダース・ファンにも
懐かしく楽しん頂けることはうけあいです。

アマゾンなどでも売ってます。
サエキのHPがブログになったよ。
トラックバックとか、コメントとか入れてくれんかいのう。
http://www.saekingdom.com/

サエキさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「サエキさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-02-17-THU
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