泉 |
まあ、そうなんですよ。
少しづつはそういうものから
取ってきたりはしていると
思うんですけどね。
10年前と比べると
哲学的な文章はかなり減りましたよ。
減りましたけど、やっぱり
受験の英語は受験の英語だな〜
って感じはしますね。 |
サエキ |
たとえば、泉さんの参考書のように、
歌の中のフレーズで
英会話を覚えようとか、
その手の英語本はたくさん出ています。
ビートルズとか。
だけど、歌の中で出てくる
リアルタイムの表現と
受験英語の交わりあいはあまりない。 |
泉 |
『受験を突破するのも大事なんだけど、
それを通して人間的成長とか、
教養を身につけるとかも大事』
といった、変な理想論が入ってくると
進化しようがないんです。
『ドラゴン桜』はそれを考えずに
『通ることにすべてをかけて、
通ってしまえばなんでもいいんだ』
というところに
話を持っていっているから、
技術の革命が可能なんです。 |
サエキ |
なるほど〜! |
泉 |
『ドラゴン桜』と僕の共通点があって、
僕は高校2年まで不良やってたので、
勉強始めた段階が高校2年の12月。
あと1年しかないわけですよ。
それに僕は家が貧乏で
国公立しか金銭的に
無理だと分かっていて、
そうすると当時、
1年で5教科6科目というのは、
どんなアホが考えたって、
相当厳しい状況におかれてるな
というのはすぐに分かったので、
そうすると、少ない時間で
どうやって効率よくやっていくかしか
考えなかったんですよ。
『ドラゴン桜』でやってるのも、
いかに効率良く勉強するかなんです。 |
サエキ |
泉さんとそっくり!
『ドラゴン桜』の高校生
男女2名も、すごい不良だったから、
全く勉強しなかった上に、
時間もない、という設定ですもんね。 |
泉 |
そうなんですよ。
『ドラゴン桜』は1年間で
東大合格者を出さないと
学校が潰れるわけですよ。
だから時間がない状況に
置かれたときに、
なんでもいいから
点を上げるというね‥‥。
でも、『ドラゴン桜』は
「いかに短期間で偏差値を伸ばして
東大に入るか」に
集中しているのですが、
たんなる受験テクニック本では
終わっていない。
ここがすごいのです。
これは一見パラドックスに
思えるようで、実はそうではない。
つまり、効率よく受験を
クリアすることを
すべてとしていながら、
学校教育でありがちな
非現実的なキレイごとの
理想論を排除し、
現実を見据えた議論で、
人生を生き抜くための
基本姿勢を訴えている。
その姿勢があるからこそ、
結局は効果的で意義深い受
験勉強が可能になるのです。
東大を目的地であると同時に
たんなる通過点として
見るというか‥‥ |
サエキ |
そういうふうに
パースペクティブ(遠近法)で
受験を見たときに、
対処法にバリエーションがあるのですね。
特に古文の現代語訳を読むことに
代表されるように。 |
泉 |
そうですね。それにしても、
現代語訳読むのは10年、
15年前から僕はやってましたから、
「今ならでは」と言えるかどうかは
分かりませんが。 |
サエキ |
泉さんは、受験技術の進歩を
俺の手でなしとげる!
と思われると思うんですが、
今の『歌って覚える英文法』って
枠を変えてる感じじゃないですか。 |
泉 |
『歌って覚える英文法』で
枠を変えてると断言できる部分があって、
それは方法論ではなく、
本の記述内容そのものです。
理解しやすくするために、従来の
「不定詞」「動名詞」「関係詞」
のような横割りな章構成ではなく、
「名詞相当語句」として
不定詞の名詞用法、動名詞、
名詞節をひとくくりにする一方で、
不定詞の名詞用法、不定詞の形容詞用法、
不定詞の副詞用法を
バラバラにするという、
縦割りな章構成にしています。
もうひとつ、あの本で
枠を変えたという自負はあって、
受験の突破を終着点ではなく、
通過点に変えているところ。
そういう意味では、
ただの参考書ではないのです。
そこが『歌って覚える英文法』と
『ドラゴン桜』の最大の共通項であり、
両者が枠組みを変えてる点でしょうね。
キーワードは「疑問を抱き、考える態度」
ということになるでしょうか。 |
サエキ |
「受験勉強を理想論でとらえると、
話がややこしくなる」
という先ほどのお話との関係は? |
泉 |
要は「ただ点が取れるだけで
いいと思うな」というか、
学校で先生が教えることを
きちんと聞いて、習得し、
だからこそ点が取れるというのが
理想とされてますよね。 |
サエキ |
学問としてマジメに勉強し、
受験もしなさいというのが
受験勉強の理想論ですよね。
泉さんは大学講師・研究者を
しておられて、論文もたくさんある。
学問を究めている最中の泉さんから見て、
そうした理想論はどう思いますか? |
泉 |
僕は受験を究めたから、
今の自分があると思ってます。
僕は受験の時にはまずは
「どうすれば、この短期間で
偏差値70まで上げられるか」
という疑問から入っているわけです。
で、絶対にクリアしなくちゃならない
目標でした。そうすると、
どうすればいいのか?
英語だったら、どういう順番で
何をしていけばいいのか?
文献を手にとっては、
これは違うなと捨てる、
という文献探しから入ったんです。
いろいろありますよね。
単語・熟語・文法・構文と。
どれから攻めていくのがいいか、
いちいち立ち止まっては
クエスチョンを投げかけて考えて、
最短ルートを見つけるようにして
受験勉強を進めて
結果を出したわけなんです。
これは学問の追及をする上で、すごく大事。
まずはクエスチョンなんですよね。
しかもひじょうに狭い
クエスチョンなんですよ。
小さいクエスチョンを設定して、
それに対してこのクエスチョンを
解決するにはどういう文献
読まなきゃいけないか考えて、
読んでいくとまた別の
クエスチョンが出てきて、
それとの関連から広がっていって、
最終的には大きなクエスチョンに対する
アンサーを出すわけです。
それが論文ですよね。
例えば、理想を掲げる人にありがちな
クエスチョンは
「愛とは何か?」なわけで、
こんな大きなクエスチョンを立てて
論文なんか書けるはずがない。 |
サエキ |
そうか! おおわくでまず
「受験とどう取り組むか?
どう攻略するか?」という
クエスチョンを
それぞれの受験生が
一人一人持たなきゃいけない!
そのクエスチョンなしには
受験の成功はありえないんですね!
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