サエキ |
僕は教育の中での無駄っていうのが、
我慢できない。自分の子ども世代に、
それを繰り返すのが不憫でならないんですよ。
普通、このくらいはっきり
不憫だとわかっているものは
相手がだれであれ、
故意で石抱き三角板とかの
SMとしてやってるわけじゃないんだったら、
個人レベルだったら、ふつうはやめるよね。
なぜ、この社会はそれをやめないで
続けてるのか、不思議でしょうがない。
それを日本の英語の先生は
知ってるはずなんだけどな。
でもやっぱり英語の先生は
中高の英語の先生であって、
英会話とかビジネス英語の先生じゃないから、
そのままにしてしまうんですかね。
しかし、泉さんや『ドラゴン桜』の
作者みたいな方がでてくるというのは、
駅前留学「NOVA」を始めとして、
外国人が日本に入り込んでいるし、
日本人も外国に出て行ってる影響は
あると思いますよ。 |
泉 |
あるかもしれないですね。 |
サエキ |
「どう考えたって、
ショートカット作んなきゃ、
いられねーよ!」みたいな、
そういう気持ちがドラゴン的対処法を
生んでるんだと思うし、
日本人は面と向かって
批判するのが嫌いだから、
漫画という当たり障りのない形にして
無駄を省こうとしてるんじゃないんですかね。 |
泉 |
そういう憧れというか、
そうしたいという欲求は
日本人にあるのは確かなんですよね。
『GTO』あたりから、
『ドラゴン桜』もそうだし、
今は横浜の教育委員会に行ってる
ヤンキ−先生もそう。
ああいう生き方をある種、
憧れのまなざしで見てる。
理想の教師象として。
ただ、それが実際に自分の周りにいると
煙たいみたいな感じがあるんです。 |
サエキ |
ヤンキ−先生、『ドラゴン桜』に
代表されるものは、
ショートカットに対する期待なんですよ。
やっぱり誰しもがこの時間の動かし方を
どうにかならないのかと思ってる。
そういえばみんな時間に対する
漠然とした不満をもってたり、
これはこうした方がいいんじゃないかと
思ってるわりには対処が消極的ですよね。
大学に入るための
『ドラゴン桜』の対処法で
いいじゃないですか。
とにかく攻略するものなんだと。
そこですよね。 |
泉 |
目の前にあるもの。
下手な大義名分はいいんですよ。 |
サエキ |
今の社会は、アイデアから態度から、
ようは総力戦で攻略を迫られるわけでしょ?
どんなに泣いてすがったって、
リストラされちゃうし、
そのために、みんななけなしの
努力をしている時代でしょ。
だったら、少しはショートカットして、
余裕を青春に持ちたいじゃないですか?
でもみんなめちゃくちゃ優秀になってますよ。
社会にでると。
だから、大学を出てから以降の
モラトリアムはしちゃいけないと思うわけ。
モラトリアムのおかげで、
その辛酸をムダに舐めるのはよくない。
そのためには、適度の余裕と、
適度の社会的緊張を
13才から18才で味わわなければならない。
それが受験のおかげで見事にパーになってる。
もうひとつ言えるのは、
僕は社会人になってから、
もう一度受験したかったと考えたことがある。
そうしたら、もっとより効率的に
受験を攻略ができたと思った。
社会に出てからの緊張経験をもってすれば、
受験は、そこそこいくんじゃないかと
思っている人がけっこう多いんですよ。 |
泉 |
僕の周りでもいますよ。
今受ければ自分は東大は入れるといってる
30歳くらいの人多いんですよ。 |
サエキ |
駿台とかにそういう奴がいるんだよ!
駿台って僕のいた頃には一番長老が13浪。
13浪の男が、9浪の女と付き合ってたという、
そういう時代もあった。
そういう人たちの幻想というのは、
自分は上に行けると信じてる。
9浪、13浪はひょっとしたら、
社会と出入りしてるかもしれないし、
社会の緊張感を一度知ってしまうと、
受験はまだ生ぬるいという気持ちを
どこかでもってしまう。
受験で上に行きたいと。そ
うなると中毒のように
また受験に向かってしまう。
それも限界があるんですけどね。
だから医者しかないんですよね。
それと、受験勉強を長くやると、
たしかにルーティンな試験成績は
良くなるんだけど、運動の反射神経も
一番いいのは20歳くらいじゃないですか。
だから不意打ち問題には弱い。 |
泉 |
なるほどね。反射神経というのか、
社会に出たら鍛えられるものって
あるじゃないですか。
それだから、受験の問題が
変わらないんじゃないかって、
今ふっと思ったんです。
当然ですが、大学の先生が
大学入試の問題を作ってますから、
無理でしょ。
反射神経鍛えられませんよ。
あそこ(大学)では。
とにかく、学問でももちろん
ジャンルにもよりますけど、
英語とか作ってるのは
当然英文科の先生だったりするわけで、
僕もそこの一員だったりするんですけど、
僕は、
「それ、みんなおかしいと思わないの?」
と思ったことがあって。
大学院の1年に入った頃のことかな、
1995年当時ですよ、
1979年とか80年の論文を
新しいんだよとか言ってて、
古いだろって。
ここ20年30年のものは
新しいとみなす傾向にあるんですよね。
それはすごく衝撃的でしたね。
これ最近出た本なんだよって
先輩が薦めてくれたのが
10年くらい前の訳だったり、
新しいものを受け入れるまでに
時間がかかるんですよね。 |