| サエキ |
『ドラゴン桜』に出てくる
異様な先生方がいるじゃないですか。
まるで妖怪みたいにスゴイ。
修験道の修行のように、
受験の攻略法を
究めている面白い人たち。
そういう人たちに試験を受けさせたら、
やっぱり、他の科目も
キチンと点をとってすごいのかしら？
一芸だから、無理じゃないか？
とも思います。
四芸・五芸も試されるのが
受験生ですから、大変ですよね。
一芸の先生だから、
その科目だけ、
よく解くのかなと思うんですけど。
先生ってどのくらい、
受験勉強できるのかなって‥‥。
どう思います？ |
| 泉 |
自分の科目についてだけは、
できるでしょう。 |
| サエキ |
やっぱ一芸ならできるんだよね。 |
| 泉 |
教えてると暗記しますからね、
ほんとに。大学で授業やってても、
科目が同じだったりすると、
下手したら、自分が話してることを
すべて再現できるんじゃないかと
思うくらい覚えてますよ。 |
| サエキ |
なるほどね。 |
| 泉 |
しかもそれが効率を
追求したものなら‥‥。
『ドラゴン桜』の先生たちは
あきらかに予備校の
カリスマ先生たちですよね。 |
| サエキ |
予備校のカリスマ先生たちと
お話する機会ってあるんですか？ |
| 泉 |
そんなにないですね。 |
| サエキ |
そういった方について
どう思われてます？ |
| 泉 |
受験においては必要でしょう。
学校に不満を抱いてるけど、
塾・予備校に何かを
期待している学生というのは
すごく多くて‥‥ |
| サエキ |
僕も駿台予備校において
各教科とも、NO１の先生の
もぐりをしてみたんですよ。
カリスマ先生方に接していて
感じたことなんですが、
１つには芸能人のようだ、
ということ。
もちろん学問的に
素晴らしいんでしょうけど、
それが必ず芸能の域に
高められていて、
見ていて面白い授業。
アクロバットのように。
でもその技というのは
いわゆる学問的な技術なのではなく、
ある種の話術であったり、
態度であったりする場合も
あるということですね。 |
| 泉 |
カリスマになる人たちは
人心掌握術がすごいですね。 |
| サエキ |
受験生はある種の
心酔をしてるわけですよね。 |
| 泉 |
宗教？ |
| サエキ |
宗教に近いというより、
芸能的にそれに酔いしれている感じ。
だから、マニアがいてたくさん
「伊藤和夫（駿台英語カリスマ教師、
逝去されている）が
ああ言った、こう言った」
みたいなことで
盛り上がったりするわけですよ。
それが盛り上がれば盛り上がるほど、
勉強からは離れていく。
やっぱり本当の意味で
役に立つ（学問的に）ことと
横のところで、彼らは
技を競ってるんじゃないかという
疑いが僕にはあったんですよ。 |
| 泉 |
やっぱり受験生にとってみれば、
偏差値が伸びるかどうかが
生命線なので、となると、
ある程度引きつけるだけとか
面白いだけだと限界があると思うんです。
つまり、「実際に伸びる」という
要素がなければ、
「カリスマ先生」には
なれないと思うんですよ。
あと、ある種の
人心掌握術みたいなもので
引きつけてっていう、
あれは彼らにも思惑が
あると思うんですよね。
もちろん学生が集まってくると、
その分自分たちの給料に
反映されるというのは
あるんでしょうけど、
そういうレベルではない思惑です。
つまり、学生を教えてて一番困るのは、
自立心がないことなんですよ。
「あの先生はああ言ってたけど、
この先生はこう言ってた、
でもこっちの先生はこう言ってた」
となり、頭の中が
パニクっちゃって‥‥。
教員なんて、みんなそれぞれ
違うことを言ってたりするんで。
それが誰か１人に心酔してくれれば、
たとえば僕に恋愛感情を
抱いてくれるくらい
好きになってくれたら、
僕の言うことは、
とりあえず他の人のは
シャット・アウトしてでも
聞いてくれるんです。
当然、僕は僕なりのシステムとして、
対象を学生に提示してるんで、
そのシステムに完全に
乗っかってくれると、
伸びやすいのは確かなんですね。 |
| サエキ |
システムに乗っかることが
伸びる原因となるんですか？
となると、やっぱり陶酔的でもいいから、
カリスマ先生の手のひらに
のった方がいいかもしれませんね。 |
| 泉 |
もちろん、自分でシステムを
構築できるのが理想なんですよ。 |
| サエキ |
いろんなものを聞きかじって、
構築できるのが理想だけど、
受験は時間が限られてるから、
時間的に、構築できるという
保証がない。だから誰か、
先生に心酔して、
そのシステムを丸呑みするというのが
原則ですね。
システムのつまみ食いは
ひじょうに良くないんですよね。
でも、今の日本はつまみ食いの
弊害がすごいかも。
いろんなところから、
トクになる技術をつまみ食いして、
それを箇条書きにして
生きてしまうような生活習慣がある。
実はそれはひじょうに効率悪いんですね。 |
| 泉 |
それは教育を批判すると
ものすごくワンパターンな
ものの言い方になるんで‥‥。
さっきの、あれは非常に
わかりやすい結論だったと
思うんですけどね。
「受験を学問として
やろうとすることは
学問に向かない人間を作る」
ということ。すごい結論ですけど。 |
| サエキ |
今の学校の勉強は、
ショーケースになりすぎていて、
はなから成就することを
拒絶した状態に
あるのではないかという疑いがある。
そのショーケースの状態を
丸呑みしようとすると、
分裂した人間に
なってしまうところがあって、
そもそも学校勉強のショーケース
あるいは、今のインターネットとかの
情報を見ると、
とにかくつまみ食いを
奨励しているように見えて仕方ない。
その枠の中では、泉さんのいうところの、
だれかのシステムを
丸呑みするっていう感覚は
生まれにくいような気がする。
たとえば英文の
グラマーの問題にしても、
本によってまとめ方が違ったりする。
だとしたら、どれかの本を
選んで覚えるしかない。
でも現実は、５つも６つも
出ているのを比べて、
自分の結論を導き出そうとあがく。
その間に、受験期間や、
青春そのものも、終わってしまうんです。 |
| 泉 |
自分なりの総論を
導き出してくれればいいんですけど、
導き出せずに混乱してるうちに
終わりますね。 |
| サエキ |
いたるところにその罠があって、
数学・物理‥‥。それに対する
無力感を感じました。
自分なりに総論を簡単に
導き出したいと思って
いろいろ読むんです。
一生懸命がんばって。
高校生は健気にも、授業の間に、
それにあがく子も多い。
自分なりに納得できる項目を整理したり。
でも全然できない間に
中間試験・期末試験とかあって‥‥。
なぜ、じゃあ、大学受験勉強が
僕にとっては面白く思えたかと言うと、
高校の通常の授業の期末試験と比べて、
受験の方がより攻略的なんですよ。
分散されたものが多少整理される。
試験で点を取れば
いいんだということのためだけに
整理されていく。
だから、まだマシ。
高校のバクゼンとした
項目わけでできている、
あの世界の中で、
自分の力でイメージを
まとめることは難しい。
そうではないですか？ |
| 泉 |
できない人が多いから
困ってるんですよね。 |
| サエキ |
高校で、それができる人いるのかな？
小学校までは、自分は、
それができたんですよね。
中学に入ると、３年の数学なんて、
相当難しくなる。
中２くらいまでの内容で
攻略できるくらいの
ボリュームだったらいいんですけれど。
高校になってきますと、
とにかく複雑。さっきの英語の
グラマーの分析で分かったとおり、
科目によっては混乱していて、
無理やり項目別に分けようとしてる。
複数の参考書とかを紐解くことで、
よけいイメージ化することが
すごく難しい。
歴史なんかはっきりしてるから、
まだいい方。物理なんか‥‥。
ほんとに難しいですよ。 |
| 泉 |
あのね、完全主義というか完璧主義、
あれでいこうとすると、
ちょっと高校生には
整理できないと思うんですよね。
完璧主義を捨ててしまえば、つまり、
「システムにはのっとってないけど、
これはまぁ、これで覚える」
というのができれば‥‥ |
| サエキ |
分かりました。
僕の推奨する青春の過ごし方。
高校の試験は、もっと数少なく
選んだ先生の小宇宙の中で泳げと。
何人かの先生を好きになって、
もう涙流してみたりしちゃって、
なつく！
そうして青春を過ごすしかない。
その先生の小宇宙の中での
結論というものに、向かっていって、
余計なことを考えない。
それによって各論は整理していく。
で、まったく別の作業として、
受験のために『ドラゴン桜』の
テクニックで攻略していく。
受験は、高校の授業と、
まったく別のことですね。 |
| 泉 |
絶対別ですよ。
繰り返しますけど、受験は別物。
だから、僕は受験勉強を
やってるときに
中間・期末試験は
まったく別の世界にあるものでした。
これを僕がどこで確信したかというと、
ほんとにその先生のワールドが
できてるんですよね。
高３も後半になって河合塾の模試で
「全国５位」を取ったくらいの段階で、
数学の中間試験を受けて、
100点満点中なんと
「７点」取ったんですね。
「全国５位」の僕がたったの
「７点」しか取れない試験ですよ。
その時点で、僕はこういう問題を
作る先生が悪いんだと
片付けちゃいましたけど、
でも絶対別物なんですよ。
受験勉強と中間・期末って
うまくリンクしてはいないですよね。 |
| サエキ |
学校と受験が別物だなんて、
哀れなマジメな高校生諸君には、
なかなか見切れない考え方ですよ。
空しいなあ（涙）。
とりあえず、高校生にとって急務は、
先生を何人か、無理やりにでも
好きになるしかないですよね。 |
| 泉 |
中間・期末を乗り切るために。 |
| サエキ |
好き嫌いなんて
人間あるに決まってるけど、
それを無理やり好きになるしかない。
会った瞬間にもう、
好きになろうとするしかない。 |
| 泉 |
思い込んで（笑） |
| サエキ |
ハグしてキスしたりして（笑）。 |
