サエキ |
「喪服ちゃん」って凄い名前。
誰がいつ考えたの? |
喪服
ちゃん |
大学に入った頃に喪服をテーマにした作品を
いろいろ作ってたら、
周りから、そう呼ばれて(笑)
ダークな名前がいいなと思ってたんで。 |
|
サエキ |
喪服がテーマの作品って、どんなのよ(笑)。
大学は<あの>東京芸大だよね。 |
喪服
ちゃん |
音楽環境創造科という音楽科の一期生でした。
今のデジタル化社会において、
音楽もどんどん変わってきてるので、
そういうことを文化から音楽の環境にいたるまで、
いろいろ考えて行こうみたいな。 |
サエキ |
なんと50年ぶりにできた
新設学科なんだってね!!
いかに時流に流されなかったか。
さすが芸大。
でもさ、そこで音楽技術的なものは身につけたの? |
喪服
ちゃん |
うーん。そこそこ(笑)。
ピアノは結構有名な先生について、
ちゃんと習ってましたよ。
ちなみに高校は国立音大付属のピアノ科。 |
サエキ |
全くエリートじゃない!
そんな音楽のきちっとした
教育を受けてる人が、
ロックやポップスの分野でも、
アンダーグランドに思われてる
秋葉原の「地下アイドル」に関わるなんて、
いわゆる「芸術的」に気にならないの? |
喪服
ちゃん |
私は絶対音感も持ってますよ(笑)。
大学でも、ピッチ(音程)とか、
音の綺麗さを大事にしてたし、
音響マニアでもある。
サイン波マニアだったり、
いくとここまで行った。
無響室で聴いて
「こうじゃないとダメ」とか。
で、途中で振り切れた。 |
サエキ |
では途中で、自分の中で構築してきた
音楽の美学構造を壊したの? |
喪服
ちゃん |
そう、ぶち壊した。
最初は、電波系といわれる
MOSAIC.WAVさんの音楽に最初に触れて。
音楽的にもレベル高いじゃないですか。 |
サエキ |
MOSAIC.WAVは、君たちも出る、
サエキ主宰の5/18イベント
Togetherにも出演するよ。
これは嬉しい偶然!! |
喪服
ちゃん |
MOSAIC.WAVが、
アキバ系音楽に触れるきっかけでした。
ネットで聴いて頭がつんと殴られたみたいな衝撃。 |
サエキ |
レベル高い、アキバ系音楽だからね。
ニューウェイヴ好きなら驚くと思う。
でも、それに出会う前は、
ジョン・ケージとか現代音楽聴いてたんでしょ。 |
喪服
ちゃん |
ケージも、キセナキスも。
哲学的な感じにまで入り込んでた。
ノイバウンテンも。
自分でテープを切ったりしてた(笑) |
サエキ |
一方で喪服ちゃんは相撲好きのデブ専、
そしてPファンク好きって
「チャームポイント」があるんだけど、
それは現代音楽方向のリセットとからむの? |
喪服
ちゃん |
ずっと小さい頃からクラシック、
親が厳しくて上品なものしか
聴いちゃいけないみたいな家だったんです。
で、こっそり行ったレコード屋で
Pファンクのパーラメントの
「チョコレートシティ」がかかってて。
それでデブの
ジョージ・クリントン大好きになって。
高3の頃だったから、
普通のピアノ科に行くのはダサイ、
これからの音楽やらないと、
みたいになってしまった。 |
サエキ |
よりによって、
最初に聴いたのがパーラメントとは。
さて、喪服ちゃんは、
いろいろサブカル系有名人との繋がりが深くて。
たとえばアラーキーさんとか
中森明夫さんとかとも交流があるんだよね。 |
喪服
ちゃん |
大学で一人暮らしをはじめて、
「モーニング娘。」とかも聴くようになって。
そんな頃、中森さんに会って、
アイドルの洗礼みたいのを受けました。 |
サエキ |
いきなりサブカルの本流だね。 |
喪服
ちゃん |
アラーキーや山形浩生さんとかは
大学時代に知り合って。
ピテカントロプスを最初に立ち上げた
メンバーだった先生っていうの芸大にいて、
その人から「80年代とは」みたいな
洗礼もうけました。 |
サエキ |
芸大に、ピテカントロプス
立ち上げのメンバーが!!
就職はどうしたの? |
喪服
ちゃん |
芸大ってさあ、サエキさん、知ってる?
なんと(一説には)就職率8%なんだってよ!
就職するっていう文化がない!! |
サエキ |
えええ? 8%?
それじゃニート大学じゃない?
親はみんな知ってるのかなあ?
あの芸大だよ!!
結局のところ、さすが芸大だなあとは思う。 |
喪服
ちゃん |
凄いでしょ?
で、私も何も考えずに4年生になっちゃって。
しょうがないから知り合いの
現代美術のギャラリーに就職したんです。
当時はアートバブル真っ盛りで、
村上隆さんとも繋がって。
ヒルズ族の元に通いまくった。
ヒルズクラブでランチとかして。 |
|
サエキ |
村上隆さん! そしてヒルズ族! |
喪服
ちゃん |
私がみすぼらしい格好してったら、
ギャラリーの社長が
「貧乏な格好して俺の横歩くな」って
10万円の服を買ってくれる。
社会勉強になった。
森ビル社長さんの家や
浜崎あゆみのマンションにも行きました。 |
サエキ |
いきなりギラギラじゃないですか?
ニートの世界から。 |
喪服
ちゃん |
スイス、バーゼルでの
世界最大のアートフェアにも行った。
世界中の金持ちが自家用ジェット飛ばして、
何億っていう作品をぽんぽんっと買って帰る。
その時に「あ、なんか、
この世界を動かしてるのは、
数人の『太客』だな」って思った。 |
サエキ |
じゃあ、その世界で、儲ければ良かったじゃん。
『太客』捕まえて! |
喪服
ちゃん |
ところが、
「私のいるべきところはここじゃないな」
と思っちゃったんです。 |
サエキ |
私心ないね〜。 |
喪服
ちゃん |
ニューヨークの一番ホットな
ギャラリーにも行きました。
マドンナがいるパーティにも行った。
でもね、おしゃれなことは、
結局、背伸びしないとできないんだなと思った。
つまんないよね。そんなのって。 |
サエキ |
一般的には、背伸びして、虚勢はって、
世に出ようとするんだけどね。 |
喪服
ちゃん |
アメリカに行ってもスイスに行っても幻滅して、
帰ってくると日本のアートが
西洋のそういうカッコいいものに
いかに憧れて作ってるのかが
見えてきてイヤになった。
それで辞めて、今度は本当にニートになって、
ネットゲームにはまって、
廃人のようになった(笑)。 |
サエキ |
やはりなりましたか(笑)。
今回話し聞き始めて、
そういう時期が来るんじゃないかなって
思ってたよ(笑) |
喪服
ちゃん |
ニートになったらどんどん資金が底をついて。 |
サエキ |
そりゃそうだ(笑) |
喪服
ちゃん |
で、知り合いのつてで
新潮社に雇ってもらって半年くらいいました。
それこそアラーキーさんに
飲みにつれまわされたり
写真撮ってもらったりとか、
横尾忠則さんと取材旅行に
行かせてもらったりとか。 |
サエキ |
凄い浮き沈み。
今度は、サブカルセレブだね!
そんな新潮社をなんで辞めちゃったの? |
喪服
ちゃん |
いよいよアキバにハマるんです。
ディアステージと新潮社ってほぼ同時期で。 |
サエキ |
中学生雑誌の「ニコラ」とか、
写真集の「月刊シリーズ」とか、
しっかりした本作りにかかわってたわけだよね。 |
喪服
ちゃん |
でも、そうした確立されたものって、
すでに一番のブームが
去ったものという意味もある。
なんとなく先が見える。
私は1を10にするのは嫌いで、
0を1にしたいんですよ。 |
サエキ |
ひええ、女子なのに、
凄いパイオニア精神!
坂本竜馬みたいな、
昔だったら男子がいいそうなことを、
サラっていうんだね。今の女子は。 |
喪服
ちゃん |
そこで「何か次の探さないと」って
思ってたところに、MOSIC.WAVに触れた。
そしてアキバに本腰が入る。
メイド喫茶とか、すごく新しいと思った。 |
サエキ |
海外の先端文化を見てきた人が、
メイドカフェをそこまで評価するんだ。 |
喪服
ちゃん |
私はコンセプチュアル・アートが
本当に好きだったから、
見た目というのはあんまり信用しないんですよ。
要は見た目じゃなくて、その文化であったり、
文脈であったり、そこで働いているコたちの
何か芯のところを見たいって思う。 |
サエキ |
ううむ、深い。
そこまで深く秋葉原を見つめてる人は
日本人では少ない。
でも、実は海外からの評価は、
そんな深さを持ってるんだよね。 |
喪服ちゃん |
アキバの音楽の底を掘っていったときに、
これは絶対面白いことができるって感じた。
その頃のアキバの歩行者天国の感じは、
「たぶん世界で一番面白いのはここだ」
と思わせる何かがありましたね。 |
サエキ |
音楽科出身としては、
その荒々しさは気にならないの? |
喪服
ちゃん |
正直、エンターテインメントとしての
表現レベルではまだ稚拙で
研ぎすまされてはいなかった。
でも、アジア的な熱さがあった。
文化レベルが実は非常に高いと思った。
同人、または路上から広まる文化が、
アキハバラでは、強烈に独特だった。
ネットでもニコ動で面白い人が出て、
そうした「下からつきあげの文化」に
ネクスト感があった。 |
サエキ |
ディミトリ・フロム・パリスとか
フランスでも一流音楽人が
マジンガーZオタクだったりするんだよね。
アキバは世界的に注目されてる場所。 |
喪服
ちゃん |
私は絶対音感なんだけど
例えばアキハバラで出会った古川未鈴
(現ディアステージの歌手)の登場で、
頭が打ち砕かれた(笑)。
音感とかを超えた歌(笑)。
「何これ?」って。マネできない独特の
グルーブを感じるんです。 |
サエキ |
新潮社をへて、
ディアステージに関わることになると。 |
喪服
ちゃん |
前から知り合いだった
うさぎの波平ちゃんが常連だったバーで
新しいライブハウス開くって話を聞いて。
楽しそうだから立ち上げに参加したんです。 |
サエキ |
なみ平と一緒に、
アラーキーの「荒木経惟トーキョー・アルキ」
という本にたくさん写ってるね。
服は着てるけど(笑) |
喪服
ちゃん |
その頃、アーティストとの集団生活をしていて、
荒木さんがそれを面白がって、
何回もとってくれた。 |
サエキ |
そんなパワーと混沌が、
ディアの立ち上げに重なるわけだ。 |
喪服
ちゃん |
ディアステージは、
歩行者天国でビラ配りしたりしたら、
連日満員御礼になった。
で、最初はバイトだったんだけど、
社長が辞めちゃって、
一番うるさかった私がなることになって。
好きなことを好きなように
やってたらうまくいった。 |
サエキ |
ディアステージといえば、
オタ芸がポイント。 |
喪服
ちゃん |
オタ芸は女の子が推進するうちに、
濃いスープみたいになっていったんです。
ディアステージ発で、客がみんな路上で
かっこいいヒーローになっていった。
ところが歩行者天国が、
例の事件でなくなってしまった。 |
サエキ |
僕がディアステージに初めて行った日は、
まさに運命的。
その殺傷事件が起きた日だったの。
当時のディアはちょっと離れてたから、
事件のことを知らずにいったんだ。 |
喪服
ちゃん |
路上というオタ芸披露の場がなくなって、
アイドルライブを強化した。
集客も上げたから、
業界が変わったって言われました。 |
サエキ |
もっともっと話しを聴きたいけど、
次はまず、現場で。5月18日渋谷で
僕たちがしかける大イベント
「Togetherプレミアム」にかける思いを
お願いします。
MOSAIC.WAVさんともう1人、
桃井はるこさんも大リスペクトしてたんです。
その方々と同じステージに出るというのに
運命的なものを感じます。
期待しててください! |