MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

 

総武線猿紀行第298回
「ジ・エンドへのカウントダウン
 そのマイナス3番」

超お久しぶりです!
いよいよあと今回ふくめて3回になりました。
今回は、これが載ってすぐ、
2014年7月21日(祝・月)に行われる
ゲンスブールナイト2014で売り出される、
サエキけんぞう&クラブ・ジュテームの新高音質音源ライブ
「Je t'aime! Hi-Reso LIVE
 (ジュテーム!ハイレゾ LIVE)」を録音、
ミックスダウンしていただいた、
高橋健太郎さんをお招きしました。

健太郎さんは、ロックファンなら知らない人はいない
音楽評論家であると共に、
近年は高音質<DSD録音>といわれるものの
第一人者になっています。
CDになってデジタル化された音楽。
そのデータ量は、皆さんもご存じなようにCD-Rのサイズ、
800MBのままでずっととどまっています。
これだけ技術が進歩したのに、それはないんじゃないの?
という声がある。
一方で「デジタルなんか嫌い!
そんなデータ量なんかどうでもいいじゃん!」
という人もいるでしょう。
でも、音が良くなるとするなら、
それにこしたことはないのではないでしょうか?

結論からいうと、DSD録音で、音はとてもよくなるのです!
ぜひ、買って聴いていただきたいです。
DSDや高音質ファイル録音には、
音楽の未来が宿っているといっていい。

しかし、ちょっとわかりづらい面もあるでしょう。

高橋さんに今までの人生の道のりを語っていただくと共に、
高音質ファイルの意外な側面と、
その魅力を語っていただきましょう。

サエキ 高橋健太郎さんは、
昔から自宅録音をやっていたのですか?
高橋 80年代のはじめ頃には、80万円もする
タスカムの4チャンネル[*]録音機を
買っていたんです。
でもその後音楽ライターも始めちゃって、
それが忙しくなって、
その機械を押し入れにしまったまま、
10何年たってしまったんです。

[*]4チャンネルとは別々の音が
   4つ入ってそのレベルを調整できること
サエキ 90年代に録音の仕事を始められますよね。
高橋 そう。最初はいわゆるプロの48チャンネルの
デジタル・テープレコーダーを使った
録音を手がけるんだけど、
VHSヴィデオのテープを使った多重録音機が出たり、
ヤマハからデジタルミキサー
「O2R(オーツーアール)が出て、
自宅で録音ができることになります。
そこでそういった機材で
「自分だけでできるじゃん!」
自宅で仕事をやるようになるんです。
サエキ 90年代はそれらパーソナル機材が
どんどん進化していってしまいますね。
そして究極の自宅録音ソフト、
Pro Tools(プロ・ツールス)が登場することになる。
高橋 200万円でPro Toolsを買いました。
A-DATとかO2Rで、
デジタルに精細に録音はできるようになったんだけど、
そうしたデジタルでは、ロックの重要な要素
「音を歪ませる」ことができなかった。
それがPro Toolsではできるようになったんですよ。
サエキ プラグインとかのソフトでですね。
高橋 アンプファームとかのソフトで、
ギターアンプで出していた歪みが
再現できるようになったし、
テープシミュレイターで
カセットやオープンリールとかのサウンドも
出せるようになった。
また、16ビットが24ビット[*]になることによって
音質が飛躍的に良くなった。

[*]ビット数とは、アナログ信号から
   デジタル信号への変換の際に、
   信号を何段階の数値で表現するかを示す値
サエキ そこで疑問なんですが、ロックはもともと、
アメリカのラジオで音を圧縮することで
カッコ良く聴かせたり、
ヒップホップもわざと低音を劣化させることで
音を太くしたり、と
音をローファイにする技術で流行させてきた面がある。
Pro Toolsのハイファイなサウンドでは
ロックっぽさが失われていくのではないか? と。
高橋 でも、例えばマーシャルアンプの
歪みの音とかを再現するのに、
その音の曲線をアナログに近い曲線レベルで
再現することが可能になったわけですよ。
本物そっくりに歪むわけだし、
ローファイな自由も、
可能性も広まったというわけですね。
サエキ でもそれはあくまで再現ですよね。
高橋 そうそう、再現性がひたすら高くなり、
画期的な新しいサウンドや、
新しい音響の工夫が
生まれているわけじゃないところは問題だけどね。
サエキ そんなPro Toolsがどんどん発展していって
プロの録音が、自宅ベースになっていきました。
そして高音質録音のDSDが出てきます。
DSDは「従来のデジタルフォーマット
(リニアPCM方式)にくらべ
1bitで処理するシンプルな変換構造により、
限りなく原音を忠実に再現する事が可能になった。
方式によっては、従来のCDの128倍細かい
サンプリング周波数で記録される」とのことですね。
ようするに物凄く音が良いと。
高橋 従来のはるかに高い音質で録音できるようになった。
もうひとつは、
コンピュータとコンパクトな機材を運べば、
どこででも録音することが可能になったんですね。
洞窟とか、カマクラとか
いろいろな音響の場で録音することが可能になった。
そうした場の雰囲気がPCM
(それまでのデジタル録音の方式)より
はるかに濃厚に再現できるようになったんです。
サエキ 高音質かつ機動性のある
システムの登場というわけですね。
高橋 ツイッターやフェイスブックの
思いついたらすぐその場で書き込むのに
近い即時性があり、
そうした時代に連動したことが
DSDではできるなあと思ったんです。
そこで音楽配信の会社、
OTOTOYの創設メンバーになりました。
OTOTOYというネーミングも僕の発案です。
インターネット環境が
大容量配信に追いついてきて、
以前は無理だと思っていたことが
できるようになり、
高音質ファイル配信を提案して始めた、
という形ですね。
サエキ しかし、Pro Toolsでの録音と違って、
編集ができるわけでもないですよね
高橋 そうなんです。実はDSD録音って、巨大な容量もあり、
録音した音の編集自体ができないんですね。
録ったままの音をミックスダウンしなければならない。
サエキ 今回僕等のレコーディングも一発真剣勝負でした。
今まではライブ・レコーディングとはいっても、
チャンネル録音してきたから、
失敗の修正ぐらいはしてきたわけです。
ところがDSDは直しが聴かないということで、
とてつもない緊張をしいられたわけです。
高橋 直しはきかないし、チャンネル数も、
DSD初期は4チャンネル、今は8チャンネルとか、
それこそ1960年代、70年代のような
音数の少ない時代に逆戻りした。
でも、1950年代も細かい直しができない
一発録りが基本だったわけで。
サエキ だからその頃はジャズとか、
生演奏の音楽がメインだったわけで。
その後ロックで多重録音始めたから、
ボーカルも今みたいに
メチャクチャエフェクトかけた音楽が
主流になったわけですよね。
高橋 それが、まるで1940〜50年代に戻ったみたいに、
一発勝負のスリリングな録音が、
高音質録音の舞台に躍り出たんです。
サエキ 今回のライブ録音で、どんな心がけで
ライブに臨もうか悩んでいたんですよ。
ほら、神経質に良い演奏を心がけないと
演奏や歌がダメだったりするじゃないですか?
それで健太郎さんに
「いい録音にするためには
 どうしたらいいんでしょうか?」
と質問したのですよ。そしたら
「結局、いい録音のライブとは、
 ライブとして盛り上がったものなんですよ。
 だからお客さんが良く興奮する、
 凄いライブをすればいいんです」
といわれて、たいそう救われて、
ライブに臨むことができた。
高橋 結局ね、良い高音質録音って、
「ウワ〜、盛り上がった」
というようなライブの録音なんですね。
その雰囲気のようなものがダイレクトに伝わってくる。
昔の録音方法との違いは、
場のなんともいえない魔法のようなものが
より伝わりやすいということ。
様々な場所における
微妙な音響を捉えるということができることが、
場の盛り上がりを捉えるとつながるんです。
サエキ なるほどね!
より精細に音をとらえるということが、
地場やノリ、オーラのようなものさえ
捉えることにつながるということなんですね。
実は、僕もこの録音を聴いた時に、胸に来るというか、
ピアノの音が発するグっとくる鍵盤音のようなものが
響いてきて驚かされたんです。
高い音とか、パーカッションとかが良く響くのかな?
と思ったんですが、
ピアノ(特に中音域)だったんですね。
でもクラブ・ジュテームのサウンドは
ピアノが核なので嬉しかったです。
高橋 実は、盛り上がったライブは楽しんだものの、
ミックスの段階で、クラブジュテームの
「グルーヴ」を発見するまで
2日間かかったんですよね。
通常のドラム、ベースの編成じゃないから。
ピアノの低音鍵盤と、
サエキさんの声の中低音域の絡み合いが
グルーヴを生むことが分かったのは、
最初のダメだしをくらって2日目のことだったんです。
サエキ クラブジュテームにはドラムとベースがいません。
ピアノの低音部でベースを表現し、
リズムはピアノとギターで現します。
ゲンスブールはエルヴィスの
「ロックンロールの魂」に対抗しましたが、
音楽自体はロックじゃないダンス音楽。
サエキがロックの「反世界」のような
フレンチに惹かれたのはそういう理由があったから。
そう判断し、今の編成に落ち着きました。
ところで、DSDの可能性として
ロックの新しい魅力を発見するような状況は
生まれるでしょうか?
高橋 例えば1970年代前半のシンガーソングライターの
素晴らしい多重録音の成果のハードルは凄く高くて、
それに変わる録音はそう簡単には作れないと思う。
でもその代わり、ロバート・ジョンソンのような
ブルースの一発録りが
その場では聞こえていたような音、
そうした現場の音のマジックが大きな可能性を
持って表現できるということには、
全く違う音楽の展開がもたらされると思います。
サエキ サエキとしては、現在、
ダウンロードやUSBという形で販売されている
高音質録音が、1日も早く再生ディスクで発売され、
コミケやM3などの領布会や、
一般レコード店で発売できることを望んでます。
そしてCDラジカセならぬ高音質ラジカセが
普及することを願ってます。
高橋 すぐには無理かな〜。

 

サエキけんぞう&クラブ・ジュテーム
高音質音源ライブ
『Je t'aime! Hi-Reso LIVE』

7月21日発売
■DSDファイル:1800円
(ソフトのダウンロード等が必要です)
■24bit96Hzファイル:1500円
(iTunesで聴けます)
以上OTOTOYサイトにて
http://ototoy.jp/top/
■USB(24bit96Hzファイル)1800円
「ゲンスブールナイト2014」会場、
コミケ(8月16日)など、
サエキのイベント会場にて限定販売

ゲンスブールナイト2014

2014年7月21日(月・祝)
15時30分開場 16時開演
場所:六本木スーパーデラックス
後援:フランス大使館

前売り/予約:3000円
当日:3500円
ドリンク別:700円

ライブ:
浜崎容子(fromアーバンギャルド)
松永天馬(fromアーバンギャルド)
玉城ちはる
レ・カプチーノ(from 大阪)
ポイズン・ガール・フレンド
Reina Kitada
日比谷カタン
野田幹子
カンアキトシ
田ノ岡三郎
サエキけんぞう&Club Je t'aime

特別対談:星加ルミ子
(exミュージックライフ、クロード・フランソワと
 会見した想い出について)

ソムリエ:野田幹子:カンアキトシ
(ワイン、シャンペンの特別販売が行われます)
DJ:きうぴい ムスプス
VJ:ALi(anttkc)

 

中パール兄弟セッションズvol.1
featuringバカボン鈴木

2014年8月17日(日)
開場 17時30分開場 18時開演

前売:4000円
当日:4500円
ドリンク別:600円

ローソンチケット&イープラスで
7/21(月)より発売

出演:
パール兄弟
[サエキけんぞう(vo)
 窪田晴男(g)
 バカボン鈴木(b)
 松永俊弥(ds)
 矢代恒彦(key)]

1部 スズキリボリューショングランドオーケストラ
   44マグナム (バカボン鈴木)
2部 パール兄弟

会場・問い合わせ:高円寺ShowBoat
03-3337-5745
info@showboat.co.jp
http://www.showboat.co.jp

サエキさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「サエキさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2014-07-19-SAT
HOME
戻る