MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第42回
「季節の変わり目はメモリーが跳ぶ」その3


ほええ、まず告知させてください。
僕がディレクターを務めた、
(註:ディレクター:映画でいえば監督だが、
音楽業界では制作の事務統括で、内容の方向づけと事務作業。
通常はレコード会社の人がやること。僕のデビューバンド、
「ハルメンズ」(デビュー20周年)のレコードレーベル・
フライングドックではプロデューサーのことを
ディレクターとよんだため、
プロデューサーの鈴木慶一さんは
「ディレクター」とよばれた)
あのYMOの完全コピーバンド、Yセツ王のアルバム
「エロー・マジック・オーケストラ」が
4月25日に発売になります!
Yセツ王はYMOを楽器からプレイまで、
当時のオリジナル楽器を揃え、忠実に再現、
今回のアルバムでは「中国女」を
ウィンターランドのライブバージョンで録音し、
坂本教授のミスタッチまで再現しているほか、
貴重バージョンを揃え、
オリジナルアルバムでも味わえない聞き所があふれてます。

ピンクレディーの「ウォンテッド」未発表にちかい
「2000-20」など、話題曲も満載で、ジャケット共に、
YMOファンは必携。
おそらくそのクオリティの高さには驚愕されると思われます。
メンバーは助教授、エロホミ・ホチョノさん他です。

そのYセツ王のコンサートが来る4月28日(金)に
新宿ロフトで開かれます。
特別ゲストはなんとあの本物のYMOプログラマー、
松武秀樹氏です!

●Yセツ王ライヴ「テクノエロス2000-81」
(ウインターライヴバージョン)
18:30からジェリーフィッシュ(女子)のフロントアクトが、
18:00からと20:00から岡本ひかり、森なつこ等、
アイドルによるステージも行われます。
場所/新宿ロフトBステージ
   新宿区歌舞伎町1-12-9タテハナビルB2F
TEL/03-3365-2664
日時/4月28日(金)開場17:00 開演18:30
料金/(チケットぴあ)前売り¥2500 当日¥3000

●Yセツ王ホームページ
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/1687/



さて、携帯愛器P-207が壊れ、メモリーの危機に瀕し、
ドコモショップ原宿店に持ち込んだ僕でした。
修理が終わるまでに、車のように、
代替器D-206を貸してくれたのでした。
これは、ありがたい。ひとつ前の世代とはいえ、
大体機能は似てる。ただ、使ってみてビックリしたのは、
ボタン操作のしかたが全然違うぞ!
PとDでは大違いなのです!
機械なんて説明書読まないで使って見せる!
と思ってる人多いでしょ?
でもP使ってる人は絶対Dはすぐ使えない。
ためしに受信履歴出して見てください。出ないぞ〜。
同じドコモなんだから統一してほしいなあ。

で、せっかくの代替器だったが、
いそいで必要アドレス5件を打ちこみながら、
あ〜慣れない、めんどうだ、
と新器購入への渇望は増してきたのです。
仮の宿の5件足らずのメモリ〜!
YUMIXのメール機能比較(前回参照)も
iモード購入への弾きがねになってるしなあ。
P-207の不満は、右下のボタンのドライブマナーモードと
左下の伝言メモボタン。これらのボタンは、
ジーンズなどに携帯を入れていると、
勝手にボタンが押されてしまい、
「ただいま車運転中です」
といってくれなくてもいい注釈をつけてくれたり、
留守番電話サービスにつながらずに、
短い留守録しかできない「伝言メモ」機能に
勝手に接続されてしまうという大変に迷惑なボタンなのです。
それらの機能は、死んでも使うつもりがないのですが、
ジーンズポケットでボタンが勝手に、押される。
「サエキさん、お久しぶりです。
 いつから車運転するようになったのですか?」
という伝言がはいっていたり、
「18秒という短い時間では要件がいえません。またの機会に」
という大事な用件のペンディングが入っていたり、
と大変に迷惑しました。
P-208は基本的にP-207の延長器なので、
同じことの繰り返しになるかもしれない、という想いが
iモード器への想いを強くしたのであります。
その点、右下のボイスダイヤルという機能を知ってますか?
これは面倒だが、けっこう面白い。
音声入力で電話番号を呼び出す機能です。
登録作業をすると「サエキけんぞう」と、
電話に話しかけると「****OOOO」と
番号が出てくるのです。
駅などで、「パールネット」と事務所の番号を呼び出し、
かけるのですが、いきなり隣りの人がぼそっと
いきなり電話にむかって、単語をいっているので
フっとみんな振り向きます。ちょっと不気味人間化。

しかし、単語の発音だけで番号を出せるのは、
片手操作で済むので、意外と便利でバカになりません。
お試しになってはいかがでしょうか?
声だけで番号を呼びだすなんて、
ちょっと未来チックではあ〜りませんか?

「なりた」「くろさわ」「けんそう」10個以上、
P-207覚えさせていたそんなボイスダイヤル機能も
跳んでしまったのでしょうか?
使い勝手が慣れないままのD-206でモンモンと過ごすうちに、
10日後、いよいよ「修理終わりました」と
電話がかかってきました。
果たしてメモリーはどうだったでしょうか?
どきどきと原宿に向かいます。
カウンターで番号札をとって係りの人に対面すると、
この間の感じのよいお姉さんではありませんでした。
「こちらです、修理代はけっこうです」
そうか、ぶつけたショックによる破損は、
保証対象ではない壊れ方ということを釘さされていたが、
修理代は免れたようだ。
でもそんなことよりメモリー。
「メモリーは残っていたでしょうか?」
と息せき切って聞く。
「残念ながら…」
ウヒャアア〜やっぱりだめだったか?
か・な・し・い・よよよよよよよよよよよう!
このメモリー死スの通告は、人間でいえば、
病院の手術で機能が失われた通告に似ている。
「残念ですが、**の機能は失われました…」
実際、これだけ人工頭脳に近いツールに
近くなっているのだから、
そのメモリーが跳ぶということは
自分の一部分がなくなるのに近いのだ。
人間の脳ミソが欠けた記憶喪失に匹敵するのだ。
もう連絡のとれないあの人、この人。

メモリーを跳ばしている人は身の回りでもかなり多いが、
自家用車が一般化し始めた昭和30年代の
交通事故の増加にも近いものがあるかもしれない。
新しい機械が流行り始めるころには
荒っぽい出来事が色々起こる。
どうか機械会社も記憶には優しくなってほしい。
記憶は体の一部です。
手元にはメモリーが0になったP-207が戻ってきた。
なんだか懐かしいような、別人のような。
記憶の失われた愛器はなぜか哀しく軽かった。
以前のように愛したかったが
妙によそよそしい軽さを持っていた。
どうしようか?
この機械にまた一から知り合いを打ちこんでいこうか?

2000-04-25-TUE

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