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虚実1:99
総武線猿紀行

第56回
「シックスセンス〜
 ファイトクラブ〜マルコヴィッチの穴」


このエッセイは「シックスセンス」のヴィデオを
これから見ようと思っている人は読まないでください。
「シックスセンス」を心から愛している人も
読まないでください。また、このエッセイを読んでも
その内容を「シックスセンス」のヴィデオを
これから見ようと思っている人には
けっして知らせないでください。
・ ・サエキけんぞう

今週は、コンピュータ、ワープロ関係はひとまずお休みして、
真夏の夜の映画、レンタルヴィデオ作品について
書かせていただきます。
いやあ、久しぶりに映画でストレス感じちゃいましたよ。
夏の夜中の「シックスセンス」。
ホント、疲れたなあ。僕は、映画が好きなので、
映画についての文章書いたりしますけど、
好きなメディアであるので、
けっして悪口書いたりしないんですけど、
今回だけは書きたい! シックスセンス大嫌い!
でも、けっこうこの映画好きな人も多いみたいなので、
これはひとつの見方だと、お許しくださいね!

まず、冒頭の主演ブルースウィリス本人による、
わざとらしい口上が嫌な予感の始まりであった。
そんな事主演の人間がいうか? ヨケイなお世話!

で、導入。平和な夫婦家庭が一転して・・。
ということなんですけど、最初の恐怖、
なぜかこれが腑に落ちなかったんです。
なんかとってつけたようだったんだな。
これはあくまで直感なので、
原因はハッキリわからないんだけど、
そのコワイ人の出で立ちが根源的な感じはなく、
「こうすりゃ、こわいだろう?」と
作り上げられた感じがしたんですね。
心理学とか精神分析をきどっている映画なのに。
むしろ、だからか?
それに比べると、「スクリーム1」や
古くは「エクソシスト」とかって、
流れるように恐怖が導入される。

そして、次の場面で、全体の仕掛けが
速くもわかっちゃったんです。
日本に住んでて、心霊好きな人なら、
すぐに思い当たるだろうという仕掛けなんです。
心霊は好き嫌いがあるから、この仕掛けがわかるかどうかは、
推理力とかは関係ないと思います。

「あ〜これが大筋か。さて、これを軸として、
 あとは何が起こり、どうススむんだろう?」
と思っていると、コワイ人の息子のような子供登場。
その子供が、死んだ人が見える子なんだそうですが、
この子の視点で、後はひたすら映画終わるまで、
死人を見せられる。
なにせ死んでいる人は予告なく現れるものだから、
唐突、唐突。
観客はですよ、猿ぐつわかまされて、椅子に縛り付けられて、
ひたすら弾丸が跳んでくるのを我慢してなきゃならない
人質みたいなもんですよ。
子供じゃなくても、我慢できなくなるよ。そんな生活。
その少年の「死人が見える悩み」は、
凄惨な死人たちに向き合うことにより
解決していくということなのですが、そのお化けたちの、
司法解剖のような恐さオーバーザックリ加減が、
ゲゲゲの鬼太郎で育った僕には違和感あるんだなあ。
心臓の弱い方にはオススメできません。

「シックスセンス」つまり第六感がテーマですが、
死人が見えるのが第六感かなあ。
僕は実際に死んだ人と会うお話とか、
けっこう人から聞かされているから、そんなに
「死人に会う話」に違和感ないですが、
そういう話はいわゆる「第六感」とは違うような気がする。
五感の延長線上に、豊かな感受性がちょっと超自然的に
エグくなったのが第六感なのであって、
お化けが見えるのが第六感ていうのはイヤだなあ。
これは単なる憶測ですけど、この脚本を書いた人は、
日本の心霊本をネタ本にしたのではないか?
これは受けるぞ! と自分流に引用したのではないか?
その結果日本人にとって隣人である死んだ人が、
欧米的観点で、悩みに満ちた、無惨な状態でしか
表現されてないのでは? というか恐怖映画をあてるための
道具でしかなくなっている。
全体にユーモアがない映画なのだが、
お化けをあつかった場合、
楳図かずおでも日野比出志でも
そこはかとないウィットが流れる日本とは大違いだし、
「13日の金曜日」のような
欧米のいわゆるホラーものだって日本には負けるが
ユーモアを持っている事も多い。
このユーモアの無さが気になるのだが、
それが近年の心理ものの流行からの悪影響って
感じがするのです。

「エクソシスト」や「スクリーム」のほうが
死に対するリスペクトを感じるのは僕だけでしょうか?
多くのアメリカ人にとって、心霊現象は心理、
精神分析の対象にすぎないのでしょうか?
(監督はインド人だそうで、インド映画として見れば
 楽しいという大胆な説もあります。
 僕の怒りはあくまで日本とのお化け文化の違いから
 出てきたのかもしれません)

ところでハリウッド映画は、何か流行すると、
どの映画もそのモチーフを流用しあうけど、何本も見てると、
この流用の仕合い合戦のスゴさが妙に気になりませんか?
(最近は「タイタニック」の流用)
「シックスセンス」も「自分がいないところにいる」という
多重人格モノ流れなのでしょう。
その意味では僕が冒頭の仕掛けを即解してしまったのも、
「ファイトクラブ」を先に見ていたせいもある。
似てますね。仕掛け方のテクニックが。
でも、「ファイトクラブ」はかなり好きです。
こっちの仕掛けはけっこう驚いたし、楽しめました。
また、仕掛けがわかったとしても、示唆に富む人間関係や、
けっこう細かい設定調整が、見ている側を飽きさせないと
思う。(ただし前半だけ。後半はまるで製作体制が
別物のように一本調子になる)

男にとって「ファイトクラブ」は血が騒ぐ要素もあり、
とにかくオススメ。で、もしもどうしても
「シックスセンス」も見たいというなら、
「シックスセンス」→→「ファイトクラブ」の順番で
見た方がイイような気が・・。

そして、そして、この心理モノで、
大オススメ映画がやってきました。
それは「マルコヴィッチの穴」という今秋公開の映画です。
「キリングフィールド」「シェルタリングスカイ」などの
名脇役として有名なジョン・マルコヴィッチ。
そのマルコヴィッチに、たったの15分間だけなれる。
だれでも穴をくぐって落ちると、
マルコヴィッチの脳の中にはいるという
奇想天外な映画ですが、
「不思議の国のアリス」のファンなら、好きになるだろう、
ファンタジーとしても大傑作だと思います。

なんだかYMOのパロディみたい!

監督は、ビースティーボーイズのビデオ「サボタージュ」で
名を挙げ、ビョーク、ケミカルブラザースのMTVを
製作したスパイク・ジョーンズ。
しかも、この人、この春のスマッシュヒット
「ヴァージンスーサイズ」(おすすめ)の女性監督
ソフィアコッポラのダンナだったんですね!
だから、「パルプフィクション」のファンにも満足の、
ゴージャスなけだるいムードも流れていて、
とてもカッコイイ。

ああ、結局嫌いな映画について文字数が多くなってしまった。
そんなもんなのですね。こういうの読むとかえって
「シックスセンス」見たくなるかも。
そのときはインド人監督の映画として見ると
イイかもしれない。
(見たら感想送って下さい。
 できれば「ファイトクラブ」の比較とね。)

アタリはずれがあっても、映画って本当にイイもんですね!
 
なお、映画のトークショーに出ます。よかったら来てね!
(下記のコメントは主催者によるもの)

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映画「新しい神様」トークショー

8月26日(土) サエキけんぞうさん (ミュージシャン)
各界騒然!話題の超ドキュメンタリー
渋谷ユーロスペース
★夜9時〜
●住所 渋谷区桜丘町24−4東武富士ビル2F ユーロスペース
●TEL 03(3461)0211
http://www.pia.co.jp/hot_cinema/cnm_theater_info.jsp
(地図など)

硬軟左右世代を越えて大絶賛されるということは、
『新しい神様』が傑作なのか?
あるいはホントに日本がヤバクなっていることの証なのか?
自分の眼で確かめよ!
週末は、超豪華"神様"トークショウ!
今だかつて、これほど豪華な映画の
トークショーがあったでしょうか?
なぜここまで一本のインディペンデント映画が
映画界のみならず、政治、評論、音楽、出版業界etc.で
話題騒然となっているのでしょうか?
超豪華なゲストの方々が、
その秘密を毎週金・土曜日に明かします。

2000-08-25-FRI
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