MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第172回
「スシ頭の男!サエキけんぞう、
 フランスに歌う!」その8
<フランスの平均若者の作法はスゴいよ>の巻


ちょっと間あいてしまいました。ごめんなさい!
で、これまた少し前の話になるので恐縮ですが、
1ヶ月ほど前、土曜の午後、
心臓移植した患者さんの話についての特番TVを
ご覧になった方いますか?
なんでも英国の中年の女性が、
事故でなくなった若者の心臓を移植したところ、
食べ物の嗜好がガラリと変わってしまったり、
行動のパターンが変わってしまったというのです。
あげくに、若者が夢に出てきて
自分の名前の頭文字を告げたというのです。
国際的にドナーの氏名等は絶対に秘密。
しょうがないので女性が
移植前の新聞を調べ上げたところ、
その頭文字の若者の事故記事が見つかった。
そのご両親に会いに行ったところ、
夢にでてきた若者は間違いなくその家の息子で、
変わってしまった食べ物の嗜好や行動のクセは、
まさにその若者のものそのもだったというのです。
御両親と抱き合う女性。
それは息子の胸を抱きしめている
気持ちだったのでしょうか?

にわかには信じがたい話ですが、
心臓移植した患者の会では、
性癖や好みが変化する例が多いとも、話されました。
(あくまで番組の中ですが)医師の説明によれば、
大脳の他に、中枢神経の枝は
全身でネットワークのように関連しあっているわけですが、
その重要な節が心臓にあって、
具体的な記憶さえもそこに偏在しているかも?
というのです。
ハートで恋をしろ!とは昔からいいますが、
本当だったのかもしれません。
驚くべき話が解明されていくものですが、
それは不思議と昔から言い伝えられていたことなのですね。


ドゴール空港駅にて電車を待つリオネル&サエキ

さて、話は空港で出迎えのリオネルと電車にのるところ。
パリの地下鉄は、
チケットをエントランス機械の差込口に入れると、
3本のバーが回転ドアのようにグルグル回り、
入れるというものですが、迎えにきたリオネルは、
一人一人入れて入るためのバーを、ピョンと飛び越して、
インチキ入りするではありませんか?

うわあ!すげえ出迎えだなあ。
このレコード会社、平気かなあ。
と思わず心配になりました。
仮にも一応ビジネスの出迎えですからね〜。
しかし、パリでは金のない若者が
バーを跳び越して電車にのるのは日常茶飯事といいます。
パリに住んでいる、
フランスの美術館公式のガイドさんである立派な女性も
「私も今日は小銭がありませんので」
と目の前で飛び越して見せたし、
見ていると、確かに若者が次々とタダ入りするのです。
(出るときはチェックなし)パリにいると
なんとも思わなくなりますが、ひどい風習ですよね。
考えてみれば。
文明国といえるのかな?というか、
その減収がなければ、
そうとう地下鉄の経営が安定するだろう
と思ってしまうのは貧乏性の日本人だから?

あきれる僕を尻目にリオネルは、ベラベラと話かけます。
「アットラ〜スト、ケンゾーサエキ!」
ついにけんぞうは日本に来たな!
と大盛り上がりで話してくれます。
「うちのレコード会社は今度
 ペトゥラ・クラークを出すんだ。聞くか?
 俺はペトゥラのプロモーションもやってるんだ」
と欧米ではかなりの有名人のペトゥラについて
ペラペラとしゃべりたて、そのCDをくれたかと思うと、
「ジャクノは知ってるか?」と
フレンチテクノファンだけが知っている
スターのCDも出してきます。
「これもやる、あれもやる」と
次々と手品のようにカバンからCDを取り出して
僕にCDをくれます。
あたかもおみやげ屋のようにCDを渡されたところで
電車にのります。

さすが、フランスの駅は落ち着きのあるデザインで
夕方の旅情が出ますね〜。
乗ったところ、あどけない16歳ほどの少女が
隣にチョコリンと座って、ウサギちゃんのようです。
日本の地方にいるような高校生と
全く変わらないスウェットの服とリュック。
ひとめでおのぼりさんとわかります。
リオネルが話しかけると
彼女はスペインから友達を訪ねて来たそうです。
半分くちをひらいた極めて無防備な微笑は、
もういつサラっていってもOKというスキだらけ。

最近の原宿や渋谷は、とてつもなくシツこく、
ズルがしこいキャッチセールスの温床になっています
(TV発情報)。
ちょっと油断をしている地方の少女は
一網打尽にひっかかっていくのをこの眼でも見ています。
こんな東京にきたら、あのスペインの素朴な少女は
間違いなく一ヶ月以内に水商売に沈められる
(ナニワ金融道的言い方)のでしょう?
その素朴さに撃たれました。

日本でもなかなか出会えない
純朴な笑顔の彼女をボーっと見ていたらリオネルに
「まだまだこんなの序の口さ、
 パリには死ぬほどたくさん可愛い女の子がいるさ」
といいます。
別にナンパしにきたわけじゃないし、
ほとんど自由時間もないので
そういう期待は一切してなかったから良かったですが、
リオネルの予言はあまり当たったとはいえません。
僕が行動した範囲では
ライブ、パーティ、路上、電車、カフェ・・と
そんなに綺麗な女性に会えませんでした。
絶対日本のほうが綺麗な人は多いと思った。
おそらく、パリの綺麗な女性は
どっか特定の場所に溜まっているのではないか?
と思われる。
リオネルはその場所を知ってるにきまってるのでしょう。
世界を旅して回っていたというリオネルに
「今まで一番イイ女に出会ったのはどの国?」
と聞いたら、ものすごく長く考えたすえに
(考えるほど数がいたということですが)
「ペルー」と答えました。
治安が悪いアルゼンチンの北に位置するペルーですが、
こちらは平和で、食事も最高だ、とリオネルはいいます。
彼はペルーである女性と1年間暮らしたそうで、
彼女は気だてもよく、料理が上手な超美人。
いうことはなかったそうですが、
やはり異国の恋は続かなかったようです。
屈託のない近い目で、人をおだて続けるリオネルが
この話をしはじめたとたん、
遠い目をしていたことが印象的です。
ペルーモードの瞳なのでしょう。


これが世界、特にペルーのおなごを泣かせた笑顔

とにかく陽気なリオネルですが、
その日の夜も、次の日の夜も、
飲み会には出ずにさっさと帰ってしまいます。
1時間も電車にのる郊外に住んでいるからだそうですが、
3人のかわい〜い子供のために、残業完全拒否だそうで、
その徹底振りはちょっと日本人とは気配が違う。
そしてこの日以後「ゲンスブールの家で写真を撮ろう」
「墓にもいこう」だの
いろいろベラベラまくしたてた約束は全部、
別の人が現れ、フェイドアウトの連続でした。
この調子の良さはやはり日本人離れしていますが、
在仏人によれば「まさに典型的フランス人!よくいる!」
ということです。
う〜ん、リオネル式行動パターンで
社会が成り立つフランスはやっぱりスゴイ!




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2003-07-07-MON

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