総武線猿紀行第196回
「フランス人音楽家が訪ねて来たよ、その1
フランスは国が芸術家を京都に連れて行ってくれる」
フランスからお客さんをお招きしております。
僕のパリ公演を見て、
なんかやらないか?とメールをくれたのです。
名前は Fabrice Ravel-Chapuis さんといい、
フランスではARTANGOというバンドをやっています。
また、「雪が降る~」でおなじみの
アダモのツアー・バンドマスターと
最新アルバムのアレンジもやっており、
本格的なミュージシャンです。

これがfabrisさん
彼のアレンジしたベネバールという歌手が、
この2月フランスのディスク大賞
(レコード大賞にあたるもの)
シャンソン部門を受賞したようですし、
今度はジュリエット・グレコと仕事する予定です。
(註:ジュリエットグレコはシャンソン界の超大御所。
ジャズのマイルス・デイヴィスは
先生チャーリーパーカーが
麻薬でぼろぼろになった1949年パリに渡り、
ジュリエット・グレコに出会い、
一目惚れして、初めて本気で愛したといいます。
彼女は、50年代にすでに
フランスのトップスターで、サルトルらに合流し、
実存主義のアイドルとも言われました。
マイルスは57年、再度パリを訪れ
映画「死刑台のエレベーター」のサントラ版を録音。
アンニュイで哀愁ある旋律には
グレコへの想いを表現した?ともいわれています。)
まあ、そんな人がなんで日本にいるか?というと、
フランスには芸術家を半年ほど京都に遊ばせる
という制度があるのです。
日仏交流会館というのがそれで、
ヴィラ九条山という非常に素敵な建築物です。
http://www.villa-kujoyama.or.jp/
ヴィラ九条山の歴史は、
なんと1926年にさかのぼるようで、
当時のフランス大使
ポール・クローデル氏による発案でした。
それを推進した日仏文化協会について。
〈サエキのまとめ〉
20世紀の初めに作られたフランス語の学校、
東京の日仏会館とアテネ・フランセの
2つを合わせたような施設を、関西に作ろうではないか、
というアイディアが生まれ、
クローデルは、その候補地として京都を選びました。
大使としての任期中に
何度も楽しみのために京都を訪れていたからです。
「容れ物は日本で、中身はフランス」
というクローデル方式に従って、
日本側の資金で建物が出来上がった後、
施設の運営はフランス政府が行うことになりました。
やがて敷地が京都は東山のふもと、
九条山の一角と決まり、日仏文化協会という名のもとに、
1926年12月に発足しました。
ということ。
うわ~、アテネフランセとか日仏会館って、
20世紀初頭からあったのか?
ようするに詩人ベルレーヌやボードレールの時代、
あるいは植民地イケイケ時代のフランスってことですよね。
雰囲気あるわけです。
このクローデルという人は詩人として有名だったそうです。
そういう人だから、フランスの芸術家を
京都に呼ぼうという考え方ができるわけですね~。
彼は関西大学にも貢献しています。
「関西大学文学部の前身である
専門部文学科が開設されました。
文学科の開設にあたっては、
当時の駐日フランス大使
ポール・クローデルの勧めによるところが大きいと
伝えられています。
詩人としても高名であった彼は、
本学の開設した『学の実化』講座に
講師として来学した折り、
大学首脳陣に文学部の設置を熱心に勧め、
これを機に文学科が開設されました」
そうです。
http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_let/outline/history.htm
フランス人は
日本の文学教育にも影響を与えているんですね~。
こうして、壮大な1920年代が展望できてしまうのが、
こういう機関の面白さだし、
維新以来のフランスと日本の関係の奥深さでしょう。
その後、第二次世界大戦をはさみ、
荒廃して一時は存続を危ぶまれたヴィラ九条山が
結局、最新型の建物が生まれることになったのです。
「1986年12月18日
:(財)日仏文化協会60周年を記念して、
フランス大使ベルナール・ドランは招待客を前に
『アジアのヴィラ・メディシス』創設によって
『日仏相互関係の第二のスタート』を切ることを公言
;『両国の文化的な関係を拡げ、強固にしていくために
我々は九条山にアーチスト、作家、知識人を
受け入れる新しいセンターの建設を考えています。」
http://www.villa-kujoyama.or.jp/jp-brief.hist.html
というわけで、音楽家 Fabrice Ravel-Chapuis さんは
日本にやってきたのです。
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