MUSIC
虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第197回
「フランス人音楽家が訪ねて来たよ、その2
 パリを見直してくれよ」

11月のある日、
ファブリスさんからメールが来たわけです。
「パリで見たけど、とても面白かったので会いたい。」
と書いてありました。

ファブリスさんは、アルタンゴという
バンドをやっているのですが、
アルゼンチンタンゴのピアソラに心酔しています。
ブエノスアイレスで本物を見て以来、
タンゴに魅せられたといいます。



フランスはワールドミュージックの国です。
フランス領アフリカの黒人を中心に
たくさんのアフリカ音楽があるからですが、
多国籍国家でありながら
居住区ごとに分かれているかのように
縦割りな印象を与えるアメリカと違い、
本当にいろんな音楽がゴチャゴチャとある。
ラベル、ドビュッシーをはじめとする
フランス近代クラシックをはじめ、
オペラ、ザイール、カメルーンなどの
アフリカ諸国の音楽、
ブラジル、ジプシー音楽、
国境をはさんでベルギー、ドイツ、ロシア、
イタリア、スペインなど。

近年人気のボサノバも、多数のブラジル人との交流で、
フレンチボッサが生まれていて、人気。
そしてそれは日本人好みです。

そしてアルゼンチン・タンゴなのですが、
実はスペインよりもフランスのほうが盛んだそうで、
ブエノスアイレス−パリ−ニューヨークが
三大アルゼンチン・タンゴの都だそうです。

プログレッシヴ・タンゴともいうべきピアソラを含む
アルゼンチン・タンゴも
他のラテン系諸国を抑えて盛んであるとは、
ホントにフランスは、混合文化、エキゾティシズム、
コスモポリタンな魅力を含んだ都といえます。

すごいですね〜。
しかもあんなこと(イラク関連)いってる割には
フランス人はアメリカ大好きですから。実は!
ディズニーランドがあるヨーロッパ国はフランスだけ!!
(戦争同盟国の英国にはないんですよ!
 ユニバーサルスタジオはスペインだけにあります)

ですからヒップホップとかノラ・ジョーンズとか
ジャネット・ジャクソンとか人気ありますよ。

南仏で農民が「不健康な食い物は許せん!」と
マクドナルドを焼き討ちして喝采を受けたかと思えば、
パリのマクドナルドは若者に定着している。
魚料理が断然好きなファブリスさんも、
「MAC、OKよ」という。とにかく色々なんです。

で、問題は、アメリカの旧仏領。
ニューオリンズはジャズが生まれ、
ファッツ・ドミノ、ドクタージョンをはじめとする
黒人音楽R&Bとそれに関連するごった煮音楽、
アラン・トゥーサン、ミーターズ、
ネヴィル・ブラザース、
果てはリトル・フィートへの影響に至るまで、
まさにアメリカ黒人音楽の都。

ニューオリンズ、ルイジアナなどの
フランス植民地都市には
「白人と黒人の混血=クリオール
 (仏発音はクレオール)」
文化を背景に、混血音楽が
異常に発展するという特色があり、
これが黒人差別を背景に
白人音楽、黒人音楽が別々に発達する他の都市とは
違う特徴を持っています。

また前回申しましたように、
パリもビバップやクールといったジャズを
世界的に紹介する役割も果たしてます。

つまり、フランスは、20世紀以来、
有色音楽の中心といえるのです。
コスモポリタンの都、パリの魅力を世界的にもう一度、
再評価してほしいものです。



しかし、そうは簡単にいかない理由もあります。
フランスといえばあの、重くてトゥーマッチな
「おシャンソン」のイメージがあります。

そうです。フランスは過激なまでのコスモポリタニズムで
有色世界をリードしながらも、
国内には、強固なドローっとした
保守的歌謡曲風土の伝統があり、
それは好対照をなすのです。

実際フランスにいると、
シャンソンの伝統をひいたマイナーコード好きな歌手や
シンガーソングライターの曲を聴くことも多い。
日本のスナックにいって、
演歌ばっかり聴かされるのと同じ感覚を感じることも。

日本も演歌は表面的売り上げで劣勢になっていますが、
小泉首相も大好きなビジュアル系ロックの中に
しっかりと演歌的精神が根を下ろしているので、
状況は変わってないのかもしれません。
フランスの演歌感覚も、
実は変わってない部分があるかもしれません。

というわけで、プログレッシヴなタンゴを愛する
ファブリスさんも、
ゴリゴリ保守的シャンソンの代表者の一人、
アダモさんのプロデュースをしたり、
ツアーの音楽監督をしたりして、
音楽生計を建てるということになります。

しかし、別にファブリスさんは
そうしたオールド・シャンソンを嫌いなわけではなく、
体の中に意識して系統だったシャンソンの伝統を流している、
今となっては珍しい若者なのです。
たいがいの若者は、気分で、新しい音楽を聴いており、
その中に古いシャンソンの流れがどう入っているかは、
特に知らない。
ダミアの「暗い日曜日」も知らないそうです。
それは今の日本と同じなのでしょう。

「年寄りのミュージッシャンの
 面倒を見るのは大変なんだよ〜」

総勢10名余りを率いる、高齢者ミュージッシャン中心の
アダモのツアーはフランス国内やドイツ、
その他細かくヨーロッパ、そして南米チリなど
独特の国々を回ります。

「雪が降る〜(のメロディ)」

inドイツは特に人気があるそうです。
そしてなぜかinチリ・・。

営業は、予想を超えて世界を結び、
生活を助けるのであります。(この項続く)


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2004-04-30-FRI

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