虚実1:99 総武線猿紀行 |
総武線猿紀行第210回 「氣志團と千葉の伝統 その2」 氣志團のインディーズにおけるファーストCD 「房総与太郎 路薫狼琉」 (ぼうそうよたろうロクンロールと読む) は今から考えると、 新人バンドとは思えない凄い内容でした。 帯コピーはこんな感じ。 「こんな不良達(ポテト)は見たことねえ! 七夕野郎もシャバ僧どもも、心震わせて泣けばいい、 何度だって言うぜ。これが日本の答えだ!」 (ヤンクロックDJケン坊) 不良をポテトという言い回しは知りませんでした。 七夕野郎やシャバ僧も知りません。一体だれなんだろう? ヤンクロックとは、おそらくヤンキーロックのことで、 彼らの造語。好きな言葉です。 ケン坊が果たしてだれだかも、知りません。 そして、彼らは立派に日本の答えのひとつになりました。 5万人近くを収容した会場には子供連れの、 オヤジというには若いお父さんも目立ちました。 そうです、ヤンキーは早く結婚して、子供を作るのです。 その意味では、 ヤンキーっぽい家族は会場にいたということですが。 しかし、東京ドームにやはり、横浜銀蝿のような 往年の本物のヤンキー姿はいませんでした。 まるでKISSファンのような 氣志團のコスプレの人たちは多数いましたが。 その多数は女性なんですよ。 さて、彼らの新作ベスト「死無愚流 呼麗苦衝音+3」 のジャケットでもおなじみのこの氣志團マークです。 ライブでもテーマ的なビジュアルである、このアイコン、 実は、これはインディーズの このデビュー盤からあったものなのです。 デビューCD盤面からすでに、 この洗練されたマークによって彩られていた。 おそらくプロの手によるものでしょうが。 インディーズのバンドで、自分達の力だけで、 ここまでビジュアルの意識を高くして、 完成しているバンドはかつてありませんでした。 彼らの志は、インディーズのうちから メジャーとその上を見ていたとしか思えません。 僕が初めて彼らを見たのは、 2001年12月のリキッドルーム、 現在の所属事務所に入ってすぐのライブ。 つまりまだほぼ自力のライブでしたが、 新宿六本木のショーパブでもここまでやらないだろう? という踊り、振り付けにはウナらされました。 しかも、ジャンルが良くわからない。 もちろんハウスなど、黒人系じゃないし、 ジャズダンスじゃないし。 いちがいにオカマ系でもないんだよな。 しいていえばチアガールの動きとかを取り入れた、 独自の振り付けに思えるんですが。 こんなに踊るヤンキーはもちろん、 かつて存在しなかったでしょう。 その振り付けの中心は早乙女光という、 ダンス専任のメンバー。 ダンス専任のメンバーがいるロックバンドは、 世界ではマンチェ系のハッピーマンデイズが有名です。 ハッピーマンデイスの専任ダンスメンバーは、 麻薬でヨレヨレの メチャクチャダンスを踊るだけの存在、べス。 彼は他はなにもしないのですが、 ラリパッパのクラブパーティの象徴的存在として、 なくてはならない伝説となりました。 それ以後も、ダンス専任メンバーがいるバンドは なかなか現れませんでした。 彗星のように現れた光の場合は、 MCこそしませんが (しゃべると「オリャフォフェイシューダ」みたいに なにいってるかわからない) キチンと振り付けします。 が、やはりロックバンドで踊りだけの人は、異様な存在感。 氣志團では、現在本当に、一番人気だそうです。 その踊りはあのどおくまん先生の 「嗚呼!! 花の応援団」という漫画のイメージそのままです。 「チョンワチョンワ!」と暴れまわる 青田赤道のあの漫画です。 といっても、80年代以前の方しか知らないでしょうが。 文化とは、本当に面白いものです。 暴走族が発生して約30年です。 カミナリ族ではない、 今風の暴走族の存在が頭角を現したのは、 72、3年からのようです。 「嗚呼!! 花の応援団」もそのころ生まれました。 実は暴走族の登場は、 学生運動の退潮とリンクしているのです。 そして30年、ヤンキー文化を タイムスリップグリコのようにミニチュア化したような 氣志團が現れたのです。 横浜銀蝿のような人たちは 本当にいなくなってしまったんでしょうか? ヤンキーは、氣志團のようにギャグの多いコンサートには アキれて来ないという関係者の説もありました。 矢沢永吉さんのコンサートに コントコーナーはありませんから。 そう。彼らは4時間にわたって 本当にライブを行ったのです。 しかし、そのうち約半分はバラエティでした。 それもかなり面白い。 彼らのマネージャー、 明星(みょうせい)さんという女性が 小林幸子顔負けの衣装で出てきて アンルイスの「WOMAN」を歌う。 このマネージャーもまた、歌と踊りが完璧! 衣装から微熱DANJIという、 氣志團の肝入りでデビューした、 少年隊のような3人組も出てくる。 これとマネージャーでさらにギャグ15分。といった具合。 それもまた完璧なんだな。 このバラエティコーナーでは、 いつもは立ったまま演奏するだけのベースの松ボウが 松ケンサンバの替え歌「松ボウサンバ」を 10数人のダンサーをバックに 歌い踊るというコーナーもありました。 メンバーも踊れるのです。なにせドームですからね? ホテルでの宴会ではありません。 そして、なんといっても驚いたのは、ボーカルの翔やんが、 アンコールでMCを20分ぐらいしたこと。 ドームであそこまで長く、 音楽もなくMCをした人は見たことない! 終わっても、終わっても何回でも出てくるアンコール。 (何度も出てくることはファンの間で常識らしく、 もはや幕を閉じても特にアンコールの拍手はおこらない、 するとほどなく、何かが出てくる。 タマキンの超巨大なバルーンとか。) 演奏も歌もとてもうまく、とにかく楽しめた4時間、 心は、70年代の「ハッチャキ!マチャアキ」など 本当に面白かったころのバラエティ。 衣装や演出にこだわる氣志團の真価は、 ヤンキーのイリュージョンを核に、 消滅と再生をくぐりぬけた、 様々な日本文化を楽しむテーマパーク!である! ということなのであります。 そうした、妙に芯が強く、なにかにこだわる姿勢は、 どうも親近感を感じます。 ソコツなアイデアと持続性の強さは、 千葉県人にわりと見られる特徴なのです。 そんな彼らの強さを生んだ千葉県の風土、 僕も愛しているのであります。 (この項終わり)
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2004-12-08-WED
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