糸井 |
それでは、最後に
この作品大賞自体について、
ひと言ずついただきたいと思います。
大熊さんは、今回の作品大賞について、
どんな印象をお持ちになりましたか?
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大熊 |
そうですね。
審査の前は「作品」という言葉に
引っぱられていたせいか、
もっと素朴で、表だってものをつくっていない、
たとえば、おじいさんやおばあさんが
人知れずつくったものなんかを
誰かが見つけて応募してくれたり
するのかな、なんて思ってたんです。
ところが、いざ審査に参加してみると、
洗練された、商品性の高いものが多くて
その点では意外でした。
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糸井 |
ああ、たしかに。
かれんさんはどうでしたか?
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桐島 |
まず、とても楽しかったですね。
それから、私自身も
「ものづくり欲」みたいものを
すごく刺激されました。
もともと私、ものをつくるのも好きなんです。
だから、今回、入賞はしなかったんですけど、
フェルトのリスちゃんの作品
(「羊毛動物 ブローチ」)のような
いかにもてづくりしたような
作品を見たりすると、
無性に愛しく感じてしまうんです。
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大熊 |
ぼくも、てづくりの痕跡が残ってる作品に
とっても魅力を感じますね。
それも、伝統工芸というよりも、
日曜大工的につくったものの中に、
おもしろい「作品」がきっとあるはずだ、
っていうふうに思うんですよね。
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糸井 |
審査の最中にも思ったんですが、
やっぱり、大熊さんや、桐島さんは、
いつも仕入れをして、
人がつくったものをたくさん見てるから、
やっぱり、普段見ているものじゃ
ないものが見たいんでしょうね。
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大熊 |
ああ、そうですね。
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桐島 |
そうかもしれないですね。
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糸井 |
細井さんも、そういう意味では、
たくさんのものを見ていますよね?
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細井 |
そうですね。
毎日毎日、たくさんのものを見続けていると、
ものをつくっている人の気持ちを
考えてしまうんです。
ものが最初に生まれてくるときって、
きっと、誰のためでもなくて、
たぶん、自分のために
生まれてくるはずなんです。
そこに込められたものの力って、
とても強いと思うんです。
その気持ちが強ければ強いほど、
それは波紋のように、
人の心から心に伝わっていく。
売れる、売れないじゃなくて、
作者が自分で気に入っているか、
気に入っていないか。
その点が、つくられたものが
「作品」であるかどうかを
分けるポイントなのかもしれません。
でも、この「作品大賞」の、
作者の気持ちが伝わってくる世界に触れると、
本当に心が洗われる気がします。
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糸井 |
ひびのさん、いかがでしょう。
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ひびの |
なんというか、この「作品大賞」審査には、
他の審査にはないロマンのようなものを
すごく感じました。
きっと、糸井さんの思いが
ここに乗り移っているんでしょうね(笑)。
夢をみんなと一緒に共有できる感じが、
とても楽しかったです。
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糸井 |
入賞したもののほかに、
なにか、ロマンを感じるような
「作品」はありましたか?
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ひびの |
そうですね、たとえば、
拾った枝をつかってスプーンにしていた作品。
(「小枝のスプーン」)
あれって、売ったり買ったりするよりも、
自分でつくって楽しみたいって
みんな感じるんじゃないでしょうか。
ワークショップ的に
みんなでつくったりしたら、
きっと楽しいですよね。
この「作品大賞」から、
そういう機会が生まれたりすると
いいなぁ、なんて思ったりするんです。
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糸井 |
なるほど。
それはおもしろそうですねぇ。
あと、あの、枝のスプーンは、
ぼくも気になってたんです。
だって、もともとは落ちてる枝で、
つまり、なにかにならなかったものの
象徴のようなものだと思うんですよ。
でも、あのスプーンをお店にずらっと並べて
「ひとつひとつ違うんです」って言ったら
みんな真剣に選んで買っていくと思うなあ。
それは、ロマンチックですよね。
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ひびの |
でしょう(笑)?
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糸井 |
大橋さんは、この「作品大賞」、
いかがでしたか?
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大橋 |
本当におもしろかったです。
何よりも、人のものの見方みたいなところが
すごくおもしろかった。
私、こづえさんが、
このペンギンの作品を選ばれたときは、
すごいショックでしたもの。
「えっ、これ、本当に選ぶの?」って。
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一同 |
(笑)
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桐島 |
あ、私も、
すごくビックリしてしまいました。
「さすが、ひびのこづえさんっ!」って。
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糸井 |
僕も、「おもしろーい」って思いました。
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佐藤 |
みんながハッとさせられましたよ。
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ひびの |
えっ、今のこれは、
私、褒められているんですか?
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糸井 |
褒められてる、褒められてる(笑)。
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大橋 |
私、うらやましかったんですよ。
自由に選んでるこづえさんが。
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ひびの |
そんな(笑)。
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大橋 |
ですから、今回のこの作品大賞で、
みなさんの中に入れていただいて
参加させていただけたということが
とてもうれしいことでした。
みなさんの見方が、本当におもしろかった。
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糸井 |
こんな審査会場は、
僕もはじめてでしたよ。
みんなバラバラのことを口にしているのに、
認め合っているっていう。
それぞれに感じることは違うけど、
議論になるわけでもなく、
対立するわけでもなく。
なんていうか、誰かの意見を聞いてるのが、
とってもたのしいんですよね。
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桐島 |
そうですね。
目利きの目とアーティストの目と、
ふたつあって全然違うからおもしろい。
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大橋 |
でも、共通しているところも
たくさんあるんですよね。
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糸井 |
そう、違う意見なのに、聞いていると
なぜか納得しちゃうんですよね。
卓さんは、この「作品大賞」、
いかがでしたか?
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佐藤 |
最初の書類審査のときに
「こんなに悩んだ審査はない」
っていうくらいに悩みましましたね。
だって、それぞれがそれぞれによくて、
なんでこれを悪いと言えるのだろうか?
本人がいいと思ってやっているんだから、
全部、いいじゃないか? って、
そんなふうに思っちゃった。
だから、まず最初に、なにを基準にするか。
選ぶにあたって、そこにすごく悩みました。
それから、もうひとつは、
モダンデザインが求めてきたものじゃなくて、
ファインアートが求めてきたものでもない、
そのグラデーションの中にあるもので、
一番いいものを探し出す作業が、
非常に新鮮でおもしろいなぁって、感じました。
「これまで一度も
フォーカスを合わせたことのないところに、
フォーカスを合わせてみませんか?」って、
問いかけられているような気分になったんです。
そうすると、全然違ったものが見えてくる。
そういう意味で、すごくよい体験を
させてもらえたと思っています。
ありがとうございました。
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糸井 |
僕は、主催する側の立場にいながら、
最初は、この作品大賞が
どうなるかわからなかったんです。
「作品」っていう言葉と、
「コンテンツ」という考え方の
ふたつだけがあって、
手に負えない自由さを持った
アートというものだけは、
はずそうって考えていた。
審査の前に考えていたことというのは
ほんとうにそれだけだったんです。
正直、どうなるかよくわからない
「作品大賞」でしたが、
かならずうまくいくという
確信のようなものがぼくの中にありました。
その確信が生まれたのは、
いま、こうしてお集まりいただいている
皆さんが、今日お集りの審査員の方が、
審査員を引き受けてくれたときだったんです。
しっかりとした自分の価値
というものを持っていながら、
自由な意見が言えて、聞けて、
答えも出せるっていうことは、
なかなかできることじゃありません。
それができる最良の、理想のメンバーに
声をかけさせていただいたところ、
その全員が引き受けてくださった。
そしてその全員で、
今回はこういう答えを出した。
それができたということが
ぼくは、ほんとうにうれしいです。
また、ぜひ、第2回、第3回と、
続けていきたいと思っていますので
また憶えておいていただければ
ありがたいと思います。
今日は、ほんとうにありがとうございました!
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一同 |
ありがとうございましたー。
(おしまい) |