糸井 |
そもそもは、
それは、本を読んだことなんだね? |
さくら |
本を読んで、行きたいなと思って。
もっと楽しいんだと思ったんですよ。 |
糸井 |
火を熾(おこ)すみたいなことかな。 |
さくら |
火熾しもやったんですけど、
火を熾す機械とか作るのも辛くて。 |
糸井 |
寒いから? |
さくら |
寒いし、火なんてぜんぜん
熾らないんですよ、
ちょっとやそっとじゃ。 |
糸井 |
あの、こすり合わせるやつでしょ? |
さくら |
こすり合わせるやつですよ。
紐みたいなものを使って
ピュッてやるんですけど、
紐からもうワラみたいなので、編んで。
嫌でしょう? そんな(笑)。
しかも、火をつけることができた人はね、
頑丈な、いかにもサバイバルな人。
サバイバルナイフいつも持ってるみたいな、
ほら、そういう感じの人(笑)。
そういう人ですら火がつくと嬉しくて、
「ワォ!」とか言ってるの。
私なんかやったって、
火がつくわけないじゃないですか。 |
糸井 |
っていうことは、昔の人の火は、
すごい貴重だったんだね。
結局そのスクールの生徒って、
自分がサバイバルするっていうこと以上に、
人が喜んでくれるっていうのが
嬉しいんじゃないかね。
つまり、そいつが、
一緒に遭難した仲間にいたら、
すっごい喜ばれるじゃないですか。
そういう実用的な感じじゃあ、ない? |
さくら |
いやぁ‥‥。
なんなんだろう? |
糸井 |
座禅? |
さくら |
たぶんそっちの方向に
近いもんなんだと思うんですよ。
精神的なものだと思いますね。
そのグランドファーザーは、
水とか石とか、
そういうことについての意味を、
自分の命がけで、理解するんですよ。 |
糸井 |
いいじゃなーい! |
さくら |
それ、ちょっと糸井さん、
その本読んでみたらいいよ。
ほんっとすごいよ。
私の、今まで読んだ本の中では、
かなりすごい。 |
糸井 |
魂を揺さぶられる? |
さくら |
うん、揺さぶられちゃったんだよ!
いや、もう、下手に
揺さぶられるもんじゃないですよね、
ほんと。 |
糸井 |
やっぱりさ、人間は、
大したことないもんだっていう
認識を持った上で、
飛びつくべきですよね。
あのね、“それしかない”って場所に
放り込まれるのは、おかしいよね。
だって、簡単に言ってだよ、
なんで刑務所に行くことが
辛いかっていったら、
「それしかない」からだよ。
だって、寒くないでしょ?
メシ、毎日もらえるでしょ。
読めっていったら本もあるでしょ。
仕事もできるでしょ?
なのに刑務所が刑だっていうのは、
「それしかない」っていうことなんだよ。 |
さくら |
選択の余地ない(笑)。 |
糸井 |
人間にとっていちばんいけないのは、
「それしかない」っていうことですよ(笑)。 |
さくら |
そうですね(笑)。だから、
お金って選択権なんですよね。 |
糸井 |
そうそうそう。
だから、お釈迦様はすごいんですよ。
大金持ちの家に生まれながら、
けっきょく木の下で座禅を組むっていう、
そのとんでもない、
誰でもできることをあえてして、
振り幅を表現してるわけですよね。 |
さくら |
選択したんですよね。 |
糸井 |
うん、選択した。
で、選択した場合にはいいんです。
SMクラブに行って、
鞭打たれるのも、
選択したんだからいいんです。 |
さくら |
いいですよね、選択したんだから。 |
糸井 |
止めないでくれ!
‥‥それを味わうために、
いろいろ苦労してるわな。 |
さくら |
苦労してますよね。
それしかないってことに
なっちゃうときあるんですよね、
旅に行くと。 |
糸井 |
いや、日常でもありますよ。
多分にありますよ(笑)。
そんな場所に立たされることがね。
それを一般には「おとな」とか、
言われるんですけどね。
おとなにならずにおとなになる方法を、
ずっと僕、模索しながら
この歳になっちゃったんですけど(笑)。 |
さくら |
はははははははははは。
でも、私もそうなんですよ、
おとなになったとかって
気がないですからね、なんにも。 |
糸井 |
でも、できてるじゃないですか、
一応、なんとか。 |
さくら |
なんとか‥‥。 |
糸井 |
人も喜ばせてるし。 |
さくら |
そんなのって、
おとなのすることですかね?(笑) |
糸井 |
いや、いや、だからさぁ、
苦労を買って出てるとかっていうところに
おとなを置いちゃダメですよ。 |
さくら |
そうなんですよ。 |
糸井 |
おとなはね、こう、なんていうんだろう、
より木の実を採ってきたりね、
より、こう、イノシシをぶったりね。 |
さくら |
イノシシをぶつ(笑)。 |
糸井 |
子どもの中でいちばんそれができる、
っていうのがおとなだと思うんですよ。
ちぎって、分けて、俺は最後でいいから、
みたいな。そういうことは、
俺、やれてるんですよ、けっこう。 |
さくら |
あー、そうかもしれないですね。うん。 |
糸井 |
それは、子どものままでもできますよ。 |
さくら |
ははははははははは、そうですよね。
そうだ、そうだ。
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