糸井 |
雑誌読んでたら、川久保玲さんが、
ロンドンに出した店がすごいんですよ。
海岸に朽ちて立っていた掘っ立て小屋を、
店の中にそのまま入れちゃったり
してるんですよ。
で、自分のライバルにあたるような
デザイナーの連中に、スペースをあげて、
好きに使いなさいっていう店を
作ってるんですよ。 |
さくら |
へぇー、面白いですね。 |
糸井 |
今までは彼女は、
いっちばんいいと思われる建築家と組んで、
お店をデザインしてたんだけど、
今回は、そういうことをやめて、
掘っ立て小屋とか、あとね、そうそう、
店内にね、公衆便所があるんですよ。 |
さくら |
ええ〜?(笑) |
糸井 |
簡易トイレがある。
簡易トイレと、海から持ってきた
掘っ立て小屋があるんですよ、
そのスペースに(笑)。 |
さくら |
はははははははは。 |
糸井 |
それについてのインタビューで、
「自由であろうとすることは、
ビジネスとして成立すると
いうことだと思います」
って言ってるんだよ。 |
さくら |
ふーん、すごいですね。 |
糸井 |
前々から、すごいなと思ったけど、
この人はずっとこういうことやってるんだなと。
で、俺らも、そこまで言い切れないままに
グズグズとだけど、
要するにそういうことをしたいんですよ。 |
さくら |
まぁね。 |
糸井 |
こんなもの(神のちからっ子新聞)を
書いたり出したり(笑)。 |
さくら |
私、なんかとうとう
きてる感じがするんですよね(笑)。 |
糸井 |
する(笑)。俺もそう。
僕ね、おとなになろうとする
努力はしてたんですよ。つまり、
半端に優等生なところが残ってるから、
人がどうやったら
うまくいったみたいな話とか、
一生懸命読むんですよ。
そうするとね、ほぼ全員がね、
ものすごく苦労してるんですよ。 |
さくら |
苦労してるんですよね。ほんとに。 |
糸井 |
で、一方で、
「あの人は苦労したと言ってもね‥‥」
っていう噂が、同時にあるわけだよね。
つまりね、立志伝中の人物には、
だいたい泣いてる愛人がいたりね。
数字こぼしたんだけど、
金渡してごまかしたんだとか、
あの人に会って、
もうひどい目に遭いましたよ、って、
そんな話がいっつもあるわけですよ。
家にいたら針のむしろだとかね、
そんな話ばっかりですよ。
その部下は血の小便を垂れて
早死にしました、
悔いはなかったと思います、とかね(笑)。 |
さくら |
はははははははは。 |
糸井 |
いや、いいですよ、それは。
悔いはなくてもね。
それはSMクラブに行った人がね、
鞭で叩かれすぎて
死んじゃったみたいな話ですから。 |
さくら |
まぁね、そうですね(笑)。 |
糸井 |
でも、みんながみんな、
その競争は、まずいだろうと。 |
さくら |
糸井さんみたいな感じの、
そういうおとなの人って、
あんまりいないですよ。 |
糸井 |
僕ね、さっきの、ももちゃんがまちがって
サバイバル教室に行くみたいな、
そういう経験は、
けっこういっぱいあるんですよ。
できることならば、なるべくみんなに、
いいぞって言いたいじゃないですか。
だから、一応、おとなのすることも、
見るんですよ。 |
さくら |
おとなのすることも見る(笑)。 |
糸井 |
でも、このところね、
やめようかと思い始めた。 |
さくら |
やめてもいいと思うんですよ。 |
糸井 |
ももちゃんでもマンガ描いて
必死になって面白がってる時期って、
それは徹夜しようが何しようが、
へっちゃらなときありますよね。 |
さくら |
ありましたよ。うん。 |
糸井 |
で、それも、それっきゃない、
という状況だったら、ツライと思うんだ。
ももちゃんが徹夜徹夜の毎日を楽しめたのは、
すごい豪華なホテルに閉じ込められて、
「さくらさん、この1週間は、
460ページの描きおろしを、
楽しんでいただきますっ!」
なんつって仕事させられたんじゃ
ないからです。 |
さくら |
でもね、それ、ちょっとちがうんです。
私ね、あのころね、けっこう辛くて。 |
糸井 |
あー。じゃ、マンガに逃げてたか。 |
さくら |
まぁ、そういうとこもあったと思います。
だからあんなに描いてたっていうの、
あるんですよね。
缶詰めにさせられたこともあるんですけど。
そのとき、すごく心地良くって。
ガンガン、仕事してたんですよ。 |
糸井 |
マッチ売りの少女がさ、
マッチを1本燃やしてはね、
夢を見るのよ(笑)。
それが、あなたと
ケント紙の関係だったんですよ。 |
さくら |
はははははははは!! |
糸井 |
クックックッ‥‥。 |
さくら |
そうだよねぇ〜。ほんとに(笑)。 |
糸井 |
こう、マッチの擦り方とか、
どんどん上手になってくんだね、
夢の見方がね。 |
さくら |
うん、だんだんね、派手になって(笑)。 |
糸井 |
永ちゃん(矢沢永吉さん)もやっぱり
子どものときに、
ケーキをぶつけられてもね、
舐めたというんだ(笑)。
そして、路地の裏でね、
火を燃やして、眺めてたって。
やっぱりね、夢の見方は、
苦しいことの中で生まれるんですよ。 |
さくら |
そうかもね。
私、考えてみたら、今も、
描くのがすごく好きなんですよ。
本気で好きなんです。
で、私、あのときはどうだったろうと思うと、
好きだったんですけど、
こんなに楽しくなかったんですよ。
今にして思えば。
だからね、やっぱり、
大変だったんですね。
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