【8】少しだけ、お金のはなし。
前回は土地の話をしましたから、
今度は少しだけおカネの話。
一戸建ての家を建てるには、
おおまかに言って土地代と工事費が必要です。
ここで言う工事費には、
材料費、工事に携わる人の人件費、
それに設計料が含まれています。
土地代の1550万円は手持ちの資金から工面できたので
支払いが済みました。
あとは工事費です。
いったいいくらかかるのでしょう。
実は岡さんにもはっきりとはわかりません。
「まあそんなに巨大な額ではないですよ。
どんなにかかったとしても
2000万円はいかないんじゃないかな」
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■外に支払う工事金額は1000万円未満
この建物にかかるおカネは、
岡さん夫婦が半分ずつ出し合うことになっています。
仮に工事費が2000万円だとすると、
ひとりあたりの負担は1000万円になります。
岡さんの奥さんはずっと会社勤めをしているので、
貯金からなんとかなるのだそうです。
一方、岡さんの方は持ち合わせがないので、
お母さんから借りることにしました。
「そのために今年の初めは実家に帰りましたよ。
田舎の親も一人暮らしなので、
たまに行くと家のここが壊れているだの、
あそこを直せだの、
大工仕事ばかりになってしまうんですけどね」
さて、そうやって集めたおカネですが、
どこにどう使われるかというところが、
蟻鱒鳶ルはセルフビルドなので、
普通の建設工事と違ってきます。
一般に建築工事にかかる費用のうち、
4分の1は材料費、
4分の3は人件費と言われています。
蟻鱒鳶ルでは設計も施工も
基本的に岡さんが担当しています。
その分は自分で人件費を受け取ることになります。
もちろん、全部というわけではありません。
構造設計の専門家もかかわっていますし、
工事の手伝いに来てくれる人たちも
ボランティアではないので、
安い金額ですが時間給を払っています。
とはいえ、そうした協力者に支払う分を合わせても
全体の人件費の半分は超えません。
そうすると、岡さんが
外部のだれかに支払う額を合計すると
1000万円未満となる計算になります。
■家を建てながらおカネが貯まるってホント?
岡さんは今、基本的にこのビル工事の
仕事にかかりきりです。
収入はというと蟻鱒鳶ルの建設資金からの
“月給”制になっていて、
20万円が毎月支払われているそうです。
岡さんによると
「現場で飲み物を買ったり、
学生アルバイトにメシをおごったりはする分は
そこから払うけど、
それにしても一カ月の生活費に
10万円はかかりませんね。
そうすると毎月10万円ずつ貯金できる計算です。
竣工するころには、
500万円ぐらいは貯まっているかも」
おお、なんとすばらしい。
家を建ててなおかつ貯金が貯まるとは。
もちろん貯まったおカネは
お母さんからの借金返済に充てられることになるのですが。
「みんな家を建てるということが、
とてつもない大金がないと
できないことのように思ってるけど、
こんな調子ですから、それほどでもないです。
建ってしまえば家賃も要らないし」
と岡さん。確かにその通りだけど‥‥。
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■「手間と時間はかかっているけどね」
それにしてもこの工事費は安いです。
普通なら、地下1階分の工事だって
1000万円はかかると言われてますから、
地下1階、地上3階建てのビルが
2000万円でできるというのは、
想像を絶する安さです。
セルフビルドで、材料をすべて自分で調達すれば
それだけしかかからないということでしょうか。
「その分、手間と時間は
たっぷりとかかっていますけどね」
と岡さん。ロープライスは、
その苦労に対する対価だというわけです。
確かに、だれにでも真似のできることではありません。
うーむ。
さて次回からは、今後の工事の進め方に話を移します。 |