【14】鉄筋工事が始まる。
地下室の鉄筋を組む工事が始まった、と聞いて
現場を見て来ました。
この日は、岡さんと
手伝いに来ている小池さんのふたりでの作業でした。
壁になる箇所で鉄筋をカゴのように組んでいき、
先端がカギ状に曲がった
小さな工具を使って針金で結びます。
この工具の名前を「ハッカー」といいます。
コンピューターを操って普通の人が
予想もできないスゴイことを成し遂げる
天才少年みたいで、なんだかカッコいいですね。
![](014/061101-02_s.jpg)
これがハッカーです。
(クリックすると拡大します)
岡さんはこのハッカーを使って、
鮮やかな手際でクリクリッっと針金をねじっていきます。
小池さんは岡さんにやり方を教わりながらの作業なので
進み方は遅いですが、次第に慣れていく様子。
小池さんは大学の建築学科の3年生で、
「ほぼ日」の記事を読んで
この工事に参加するようになり、
この日の手伝いが10回目くらいになるとのこと。
こういう仲間が少しずつ増えているようで、
記事を書いているこちらとしてもうれしくなります。
どうして岡さんの工事を手伝いたいと思ったの?
と訪ねると、
「これくらいの太さの鉄筋が
これだけの割合で入っていれば建物は壊れないんだな、
というのが身体でわかる感じがするんです。
それは大学や設計事務所のアルバイトでは
得られない体験です」
との答え。
たしかにそうですね。
こういう人ばかりなら、
耐震強度偽装問題みたいなことも起こらないはず。
小池さんは大学を出たら、
構造デザインの分野に進みたいと希望をもっています。
この若者の将来も楽しみです。
![](014/061101-oka_s.jpg)
左のハデな背中が岡さん、右が小池さんです。
(クリックすると拡大します)
■千本のノックのような作業
現場には短く切った鉄筋をコの字型に曲げたものが、
八百屋の果物のように積んであります。
これは「振れ止め」というもので、
内側と外側の鉄筋をつないで止めるためのものです。
これをつくるのも意外に手間がかかっていて、
この一山をつくるのにまる一日かかってしまったそうです。
「まるで千本ノックのような作業だった」
と岡さん。専用の機械を使えば速いのですが、
買うと30万円はします。
時間はかかるけど、
今回は人力でつくることにしました。
人の手でできることはなるべく人の手で。
それが蟻鱒鳶ルの工事のやり方です。
作業箇所の反対側を見ると、
すでに一部は鉄筋を組み終えて
型枠(*1)もできていました。
壁の全周のうちの4分の1ぐらいは
組み上がっているといっていいでしょうか。
もっとも高さは70センチ程度ですが。
こちらは打設(*2)を待つばかりです。
■原始人の住みかみたいになるかも
ふと目にとまったのは型枠の両側に置かれている石です。
岡さんに聞くと、これは大谷石で、
敷地のなかに埋まっていたものだそうです。
敷地には50個ほどの大谷石が埋まっていて、
相当な苦労をして掘り出しました。
敷地から出てきたものは、
なるべく建物に使ってあげたい、
そんな考えが岡さんにはありますから、
この石もなんとか使おうということで、
コンクリートを打設する時の
境目のところに入れてみることにしたというわけです。
コンクリート打ち放しの一部に大谷石がはまっている、
そんな壁面ができあがると、
完成した地下室はどんな雰囲気になるのでしょうか。
少なくとも、建築家の安藤忠雄さんがつくるような
美しいコンクリートの壁面というわけには
いかないでしょうね。
「ごつごつした岩が剥き出しの、
原始人の住みかみたいな空間になるのかも」
岡さんはそういって笑っています。
![](014/061101-sagyo_s.jpg)
作業する岡さん。
(クリックすると拡大します)
*1 ドロドロのコンクリートが固まるまで
形を保たせる仮設の構造物
*2 練り混ぜたコンクリートを流し込む作業のこと |